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六話 初クエスト

まだまだ寒いですね……。


皆さん風邪に気をつけて下さいね。


僕は鼻水が止まりません(鼻声)


「お腹空いた〜!!」


「我慢だ! ホラ、あの雲を見ろ! ステーキの形をしてるぞ!」


 ビッグミミュート討伐のため街の外に出た俺たちは、空腹に耐えながらミミュートの群れを探していた。


 普通のイノシシサイズのミミュートは脂が乗っていて美味しいのだが、ビックミミュートになると肉が硬くなりケモノ臭がするのだとか。


 あまり街に入ってくる事は少ないが個体数が多くなると何が起こるか分からない。その為、ギルドは定期的にビックミミュートの討伐依頼を出している。


「それでイブキ? ビッグミミュートをどうやって討伐するのですか?」


 今のガブは動きやすそうな服装に、先ほど問題になったダガーを大事そうに持っている。


 ミミュートは群れで行動して、獲物を見つけるとカゴメカゴメの様に周りを囲む。


 そして獲物がてこずってる間に何処からともなくビッグミミュートが登場! 獲物を喰らい尽くすらしい。


「という訳でおとり作戦だな。おとりを放ってビッグミミュートが現れたら隠れていた奴が仕留めるのが良いと思う」


 するとシルフィが首を傾げる。

「それは分かってるんだけど、おとり役はどうするの?」


 そんなのは決まってる、絶対コイツだ。

 俺は迷う事なくそいつを指さした。


「ガブ、おとり役はお前だな」


「嫌です」


「よし、シルフィ、やれ」

「……『アイス・カーニ……」

「わ、分かりました! 魔法で脅すのはやめて下さい!」


 慌てるガブに俺は。


「まあ当然だけどな。俺の不注意とは言え、大金をはたいてダガーを買ったんだ。…………まあ安心しろ。強いのはビッグミミュートでミミュートはそんなに強くないらしい。というかミミュートはビックが来るまでの防御だけする奴だ。……………死にはしないよ?」


 真実をガブに伝えたのだが、ガブが泣き出しそうな顔だ。


「ヒエエ……鬼畜、ここに魔王軍より外道がいます……」

「!」

 シルフィの正体がバレたのかと一瞬ドキッとしたが俺の事だとすぐに分かり、少しホッとした。


 ……え、そんな鬼畜? ……うう、シルフィの目線が痛い。



 と、視界の端にミミュートの群れが映った。

 

 ミミュートは十匹くらいでブヒブヒと移動している。

 今思ったのだが、日本ではイノシシは山にいるのにこの世界では草原に普通にいるんだな。

 

 田舎に住んでいた身としては、場違い感が半端ない。なんかコレジャナイと思う。


 俺たちは近くの木に隠れると。


「よし、そうと分かったらおとりに行ってこい! ミミュートに美味そうだと思わさせるような感じを醸し出せえええ!!」


「言ってる意味が全然わかりませええええん!!」


 ガブをミミュートの群れに突撃させた——!



■■■■■



「イブキぃぃ! イグニスに帰ったら覚えていてください! ……あああ! 気持ち悪い!!」


「……よし、あとはビックな奴が来るまで待とう。十五分くらいしたらやって来るって、受付のお姉さんが言ってたし」


「あの……少女がケモノに囲まれているのって、結構居た堪れないんだけど」


 そう言われても。一応アイツへの罰みたいなものだし。

「ちょっとだけ待ってよう。ほら気持ちいい風が吹いてるし」

「本当だ、風の神様が喜んでるのかな? ……ガブリエルが叫んでるのを。そんな事ないか」


 いや、アイツの事だから喜んでる。絶対。


 ふと、ガブを見ると先程買ったダガーを振り回しながらミミュートに向かって威嚇している。

 美少女が泣き叫びながら威嚇してるのって、物凄いスカッとするな。

 

 と、隣のシルフィがギルドブックを取り出した。


「……ねえ、イブキ。君にだけ伝えたい事があるんだけど」

「……え? ちょっと待って、あと五日ほど待ってくれ、気持ちを落ち着かせるためにも」

「ち、違う! そんな告白みたいな事じゃなくて、ほらこれ見て!」


 シルフィがギルドブックの最後のページを見せてきた。

 シルフィの表情が真剣なので、俺も気持ちを切り替えよう。


「えと、最後のページって事はユニークスキル……! これは……」


「『氷と雪の想い』。多分あの人から受け継いだ力だと思う」


 俺の言葉を遮るようにシルフィが重ねて言った。


 あの人とは先代『氷雪の魔女』だろう。

 力を受け継いだと言っていたが、ユニークスキルを受け継いだのか?


「これは魔王さんに聞いた話なんだけど……」

「話の入りが不穏すぎる……。けど、何故かワクワクしてしまう……」

「私が『氷雪の魔女』の力を受け継いですぐに先代は死んだって」

「て事はやっぱり……」

「そう、ユニークスキルを先代が私に受け継がせたんだと思う」


 そう言ってる彼女の青い目はどこか寂しそうだ。

 親交もあったのだろう。

 魔王軍とはいえ友情や親愛の類もあるはずだ。仲間が死ねば悲哀や敵への憎しみの感情が湧いてくるはず。


「でも、そもそもユニークスキルって人に受け継がせられるものなのか?」

「分からないけど」

「けど?」

「私も、あの人も氷魔法しか使えなかった。だからそうとしか考えられない。だから、イブキ……」


 シルフィがグッと顔を近づけてくる。

 か、顔が……近い。

 だけど背けたら彼女を不安にしてしまいそうだ。


「分かった、この話は二人だけの秘密って事だな」

「流石イブキ、空気読める男は好きだよ?」


 ……そうかい。


「俺も強くて可愛い銀髪の女の子は好きだな」

「やっぱり? そうでしょそうでしょ!」



 異世界に来てよかった。

 こんな可愛い子と過ごせる事を、俺はレア以外の神に感謝します。


 その後、俺たちは二人だけの時間を——



「イブキぃぃぃ!! イチャついてるとこ悪いですが後ろにビックが!!!」



 過ごす事は……!

 


■■■■■



「——よく泣かなかったね。えらいえらい、ガブリエル」

「やめて下さい! 私は子供じゃ無いんですよ! ……やっぱりまだ続けてください……」


 ガブのおとりで、まんまと引っかかったビッグミミュートをシルフィの魔法で氷漬けにしてから(しば)しの間、

「まあお疲れさん。……おとり役、ありがとな」

 俺たちはガブを労っていた。


「ホントですよ、大分トラウマになりましたからね! 意外とミミュートに囲われるの怖いんですよ!」

 

 ガブにトラウマが出来てしまったが、ビッグミミュートの討伐というクエストは成功した訳だ。


 しかも、空はオレンジ色に染まっている。俺たちは一日ほど何も食べていないのだ。


「じゃあ帰るとするか。皆、腹減っただろ? 今日は沢山食べようぜ。……金額を考えて」


 またこの間のように食べられたら……ヤバイな。


 すると何かを思い出した様子のシルフィが俺に向かって、

「そういえばイブキの魔法の事はどうなったの? あの……よく分からない奴」


 ああ、そうだそうだ。俺特有の魔法があったって話だったな。


「じゃあここでやってみるか。シルフィ、ガブ、ちょっと離れててくれ。もしかしたら秘めた俺の力が暴発するかも知れん」


 何か言いたげな二人をよそに、俺は平野(へいや)に手をかざし魔法を放った!


「『コールド・ウィンド』ッッ!!」

 冷たい風が俺の手から吹いた。


「『ウォーム・ウィンド』ッッ!!」

 温かい風が俺の手から吹いた。


「「「…………」」」


「それだけぇ?!!」


 俺の言葉が平野にこだまする。


 もっと目に見えるとんでもない魔法かと思ったら、温度が違う風が吹いただけだった。


「もっと魔力を込めてみたら? 威力が上がるかも」


 魔力を込める? こんな感じ?

 俺は魔法を強くするイメージでもう一度『ウォーム・ウィンド』を放った。


 今度は強めの温風が流れた。


「——ドライヤーの代わりにしかならねえええ!!」


 叫ばずにはいられない。

 ユニークスキルで他の属性を犠牲(不本意)して得た魔法がこれだ。


「お、落ち着いてください! どらいやーとは何かわかりませんが温度が乗った風を起こす魔法は聞いた事がありません! 一応誇っていいはずです!」


「一応って何だよ! ……ああもう! 俺の少しの期待を返してくれ、レア——!」



■■■■■



「あのー、討伐目的のビッグミミュートの毛皮は……?」

「へ……?」


 ビッグミミュートを氷漬けにし、ユニークスキルの事は一旦忘れようと、パーティで夜ご飯の話に花を咲かせて意気揚々とギルドのお姉さんにクエスト達成の報告をしたのだが。


「そ、それはどういう事ですか? ビッグミミュートはシルフィが倒したのですが……」


 そう。ビッグミミュートはシルフィの氷魔法で息の根を止めたはずだ。

 具体的に言うと、そのまま氷漬けにした。


 それなのに……。


「申し訳ございませんがビッグミミュートの討伐の理由は、生態系の安定の為個体数を減少させるのと、その毛皮が貴族にとても人気だからなんです。需要と供給が間に合っておらず、毛皮が無いとクエスト達成にはならないと用紙に記載していたはずなんですが……」


 その言葉を聞いて俺はその紙をポケットから出し、確認する。


 ……本当だ。下の方にしっかりと書いてある。

 なんてこった。


 シルフィとガブがワナワナと震えだし俺を憎悪の目で見つめてくる。


 ここでお金が入ってこなければ、野宿確定でご飯もない。二人が怒るのも当然だ。


 うう……目線が痛い。

 目線だけで人を攻撃できるだなんて……。


 というか、シルフィに至ってはその身体から冷気を感じる。


 こりゃヤバイな。


 俺は頭に手を添えて、

「いやー、読むの忘れてました!」

「「…………」」

 そしてわざとらしく腕を組んで、

「人は誰でも失敗はするって! ウン!」

「「…………」」

 

 俺が話を遠ざけようとした無駄話は次のシルフィの一声で断ち切られた。



「素直に謝る事、出来ないの?」



「申し訳ございませんでしたああああ!!」


 流れるような土下座を披露した!







 次の日、氷漬けにしたビッグミミュートの元へ向かった三人は、何とかその毛皮を剥ぎとりました。


 しかし状態が悪いと言われ、通常の三分の一の報酬しか貰えなかった三人は、一日でそのお金を食事で使ってしまったとさ。


 続く。

資料はきちんと読みましょう

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