四話 何事も個性的にと女神は望む
あけましておめでとうございました!
あ、もう大分過ぎてますね……。
つ、次も頑張ります!
——異世界に転生した少年がいる。
彼には、好きでもない……いや、むしろ嫌いな女神がいる。
彼女の名前は——
——名前はレア。
私は少年少女、いわゆる若くして死んだ魂を導く女神。この静かで白い神殿は私の仕事場所。
いつもの職務を終え帰路につこうとした時、彼——深巳一颯が死んで、転送されてきた。
「帰りたい……というか帰る時間なんだけどなあ」
流石にここに放って置くのも……いやそれもありかな? 面白そう。
しかし……
「天界の規則を破ったら面倒だし、しょうがないや」
よし起こそう。
まずはキツイの一発……!
■■■■■
……的な事だったんだろうな。
そんな奴の従者なんて意味が分からない。
ギルド内のテーブルにて。
どうやら俺はあのテキトーでサイコパスな女神の従者になったらしい。
銀髪のハイウィザードと、金髪赤眼の盗賊少女とパーティを組んだ矢先の出来事だ。
「イブキ、大丈夫? 急に覇気のない顔になっちゃったけど、どうしたの?」
「大丈夫だうん大丈夫だああ大丈夫だいや大丈夫だまあ大丈夫だ」
「絶対大丈夫じゃ無いでしょ!?」
もう関わる事は無いと思っていたのに……。
何だよアイツ俺のこと好きなのか?! そんなんなら、こんなユニークスキルで俺を縛りつける歪んだ愛じゃなくて正々堂々真正面から向かってこいよ。
しかし俺はそんなお前でも振るけどな!
「……何でもない。ユニークスキルがあったって事に驚いただけだ。それでレアはどんな女神なんだ? ちなみに俺はレアニスト教とかじゃねえぞ」
「レアは風を司る女神です。この世界の風は全てレアが起こしていると言われていて、普通の時はそよ風、怒っている時は強風など彼女の感情と繋がっているとされています」
「ちなみに無風は?」
「……仕事サボってるんじゃないかな?」
意外とズバズバ言いますね。シルフィさん。
にしてもあいつ風の女神なのか。
日本は風神と言えばイカツイ奴だけど、こちらは美少女で麗しい女神。中身以外は完璧だと思う。
そう言えば、お金の単位にもなってたな。
この世界だと結構なメジャーな神になのかもしれない。
というかなぜレアは俺にユニークスキルを?
あいつから俺に貰った物なんて……これしか無いな。
この首に掛かっているペンダント、絶対これだろ。実験してみよう。
ギルドブックの最後のページを開き、そしてペンダントを外してみる。すると表示が消えた。
やっぱりそうなのかよ。本当に余計なことしてくれやがる。
しかし、
『神器のペンダントを差し上げます! それを付けてたらドラ○もんの翻訳こんにゃくみたいに、異世界の言葉を喋れるように、あと読むことも出来るようになりますよ!』
そのレアの言葉が脳裏をよぎる。
だから今から俺が言う言葉はこの場の人間は聞き取れないと言う事。
俺はペンダントをつけ直し、シルフィの方を向いた。
「なあシルフィ」
「ん? どうしたの?」
俺はペンダントを外し、
「何となくだけど、俺はお前の隣に一生居続けると思うんだよな。寂しかったって言ってたな。俺がその寂しさを埋めてやる。……俺が、お前の生きる意味になってやるよ」
そんな告白を……、
…………恥ずかしいっ!
しかしシルフィとガブはポカンとした顔をしている。
やはりこのペンダントを外すと、色々あの女神の支配下から外れるらしい。
だが、これが無いと言葉が通じない為、生活ができない。
本当に余計な事を……!
ペンダントを付け直すと、
「急にどうしたの? 変な声出して」
「何ですか、死にそうな犬の真似ですか?」
一世一代の俺の告白は届いてないようだ。
というか伝わらないの分かってて言ったのだけど。
……え、日本語ってここでは犬の言葉なの?
と、ギルドの窓から太陽の光が差し込んできた。
外を見ると夕方のようで空がオレンジ色に染まっていた。
「もう夕方だね。早いうちに今日泊まる所決めちゃおっか。どうする?」
そうだなあ。魔法を覚える事はまた今度にしよう。
「でもさあ俺らお金ないし……あ、そういえばシルフィお前アレあったよな」
俺のその言葉にシルフィはハッとした。
「忘れてた! アレがあったね!」
「シルフィ、アレってなんですか?」
ガブがそう尋ねてくる。
よし、俺の……いやシルフィの功績を皆に自慢だ!
俺は立ち上がると、
「じゃあガブ、ついてきてくれ。シルフィも」
受付のお姉さんの所に向かった。
「どうされました? クエストを受注するなら私か、そこの掲示板を確認して貰えますか?」
受付のお姉さんが笑顔で対応してくれた。スマイルありがとうございます。
「えーと、キマイラの討伐とかありますか?」
その言葉にお姉さんは驚きの声を上げて聞き返してくる。
「キ、キマイラですか? あるにはありますが、そんな高難易度クエストは貴方たち新米冒険者にはお勧めしませんよ。というか今日冒険者登録をしたばかりですよね、言い方は良くないですが自殺しにいくようなものですよ?」
……そりゃそうだよな。まあでもうちのシルフィはそんなのお構い無しだ。
「大丈夫ですって……。というかもう終わった話なんですよね。……何故かって? それは……!」
俺はシルフィにアイコンタクトでキマイラの牙を出すように指示する。
「最強のハイウィザード、シルフィの手にかか「私こそ最高の魔法使いだから!!」被せないでえ!」
全然息は合わなくて、グダグダだった。
「はい、これがキマイラの牙だよ」
シルフィがそう言って牙を受付のお姉さんに渡す。
「これは……本物ですね! 一体貴方たちは何なんですか? 冒険者登録をする前ににキマイラを倒すって聞いたことありませんよ?!」
お姉さんがそう叫ぶと周りにいた冒険者たちが次々と言葉を発した。
「え、あのキマイラを倒したっていうの?」
「あの二人一体何者?」
「というかあのガブに仲間が……、マジ?」
「いや倒したのはあの白髪のハイウィザードで、隣の奴は何もしてないんじゃないのか? 雰囲気的に」
いやまあそうなんですけど…………。
てか雰囲気的にとか言うな。
と、受付の奥から大きい袋を持ってきたお姉さんが。
「ではキマイラの討伐報酬の一千万レアです!」
「「「「一千万?!」」」」
俺以外の人たちが声を上げる。
見ると袋の中身は金貨がめちゃくちゃ入っていた。
この世界の貨幣価値が分からない俺でも大金だと分かるほどに。
「一千万ってそんな高額なんですか?」
「はい! キマイラが縄張りにしていたスノーレの洞窟は元々希少な鉱石が採掘される場所だったのです。ですが、三年ほど前にキマイラが住み着いて以降そこにいけなくなってしまってたのです。だからシルフィさん達にはギルド一同感謝しております!」
なるほど。
納得していると、外野が何やら騒がしくなってきた。
「おいおい! 一千万も貰ってんだ、少しくらいは奢ってくれよ!」
「そうだそうだ! お前たちの歓迎パーティだ! もちろん料金はお前らだけどな!」
既に顔が赤くなっている冒険者もいる。
初めて会った奴らに奢れとか、凄いな冒険者……。
そう考えてるとガブが俺に詰め寄り紅潮した顔で言ってきた。
「良いじゃないですか、皆さんと親交を深める良い機会ですし貴方たちの歓迎パーティですよ? 断る理由がありません!」
隣に目を向けるとシルフィもワクワクした顔だ。
……はいはい。
俺はシルフィとガブに笑いながら頷いた。
「よーし! それじゃ私たちの歓迎パーティを始めよう!!」
ギルド内は歓声に包まれた。
「——シルフィさん! 俺のジョッキも冷やしてくれ!」
「いいよ!『フリーズ』ッ!」
「うひょー! サンキュー!!」
「ああ俺も俺も!!」
ギルド内はお祭り騒ぎだ。各自好きなものは好きなだけ頼んでいる。
……あ、あの人、手まで凍ってる。
俺もこの騒ぎに乗じてお酒を飲んでみた。この国では十五歳から酒は飲めるとのこと。しかし苦かった。あんなの大人はよく飲めるなあ。
なので俺はギルドの端でワインをちびちび飲んでいる。これは美味しい。
すると、
「イブキもあの中に入らないのですか?」
ガブが俺の横に座ってきた。
この娘、何で今日初めて会った奴の隣に座れるの?
陽キャすげえ………じゃねえわ、こいつもぼっちだったわ。
「俺はワイワイするのは慣れてないんだ。隅っこでひっそりとしてるのが逆に楽しいんだよ」
そう言うとガブが呆れたような表情をして持っていたカップを置いた。
「人生楽しくないんですか? 友達いない人の発想ですよそれ」
…………。
「友達なんていなかったよ」
「あれっ?」
ガブがすっとんきょうな声を上げる。
「何に驚いてんだよ、別に俺変なこと言ってないぜ?というか、お前もぼっちだっただろうが」
「いや、そこはもっとこう否定して……なんか認められるとバツが悪いというか……」
……ふーん。
「な、何ですか、その痛い子ちゃんを見る目はやめてください!」
白い肌を赤くするガブは、まるで年下の可愛い後輩みたいだ。
「というかさっきから思ってたんだけど盗賊職ってさ結構重要らしいじゃん。何でガブは誰ともパーティを……」
「まだそれを言いますか? 答えてあげても良いですがそれは今じゃありません。またいつか話します」
なんだよ。答えが自分で分かってるのか? 口が悪いという事を。
俺はグラスのワインを飲み干すと、
「ま、同じパーティなんだしこれから頑張ろうぜ。改めてよろしく、ガブ」
しかしガブは俺の差し出した右手と俺の顔を交互に見ながら、なんだか複雑な表情をしている。
「何だか釈然としませんね……。イブキは何歳なんですか? あまり年上に思えないのですが……」
「十八だけど」
「私の二つも上ですか。それなら年上の雰囲気醸し出しても良いですけど。……では改めて、よろしくお願いします、イブキ」
ガブが小さな手で俺の手を掴んでくれた。
「なんだよ、素直な時もあるじゃないか」
「…………ッ?!」
「悪かった! 何が琴線に触れたか分からないけど殺気だった顔でその剣に手をつけないでえ!」
ちょっと褒めただけでこれだよ!
——辺りを見渡すと、まだまだこの宴会は終わらなさそうな雰囲気だ。
シルフィや他の冒険者の笑顔を見ると、ワイワイするのが苦手な俺でも今日ぐらいは楽しもうかと、そう思える。
慣れないことも、この異世界ではやってみるか。
俺は立ち上がり、駆け出すと——!
「よっしゃあ!! 皆、夜はこれからだ! 最高のパーティにしようぜ!!」
輪の中心へと飛び込んだ!
■■■■■
——彼には、好きでもない……いや、むしろ嫌いな女神がいる。
彼と彼女の出会いは——死後の世界。
彼女の良心の欠如したような言動に呆れながら、彼は自身が望む異世界へと飛んだ。
——風神の従者というユニークスキル
と共に。
彼はこの不本意な役柄をどうするのか。
風神の従者(不本意)は異世界で——何をする?
いやあ……僕もお金が欲しいなあ。
羨ましいぞ、イブキ。




