三話 『氷雪の魔女』と盗賊毒舌少女と『風神の従者』
……すいません、遅れました。
年末はいろんなゲームのイベントが……!
あ、すいません。
では、どうぞ
「——着きました、ここがギルドです!」
新しい服装に身を包んだ俺たちは、ガブリエルに案内されギルドに来ていた。
ギルドというのは冒険者という職業を管理する団体で、冒険者たちに様々なクエストを紹介してくれるらしい。
季節は春なのか、暖かい風に押されながら俺たちはギルドに入った。
ギルドの中は様々な格好をした冒険者らしき人達が何やら話し合っていたり食事をしたりしていた。
ガブリエルが受付らしき場所にいる黒髪のお姉さんに向かうので、俺たちもついていく。
お姉さんはこちらに気がつくと笑顔で、
「あらガブリエルさん、どうされたのですか? その後ろの方は……もしかしてお仲間ですか! ああ、いつもギルドで独りで食事をしているガブリエルさんがついに仲間を!」
……。
「おい。お前やっぱぼっちじゃねえかよ。お姉さん、めちゃくちゃ目が潤んでるけど?」
「……違います! 今2人と一緒にいるからぼっちじゃないです!」
「屁理屈言うんじゃねえよ、やっぱぼっちじゃん! ぼっちエルじゃねえか!」
こんなに人がいるギルドで独りで食事は流石に……悲しい。多分俺も同じ立場だったらそうなるけど。
「あっ! イブキ、言い過ぎましたね! 誰ですかぼっちエルとは?! 表に出てください、今度は手加減しませんよ!!」
そんな俺たちをシルフィは。
「ふふ、喧嘩するほど仲が良いって今のニ人みたいだね」
「「違う!!」」
■■■■■
「冒険者になりたい人たちを連れてきました。冒険者登録をしても良いですか?」
ガブリエルの言葉で周りの冒険者らしき人が何人か振り向いた。
……あの人誰? めっちゃ怖いんだけど……睨まないで?
「もちろんです! それでは登録料を一人五千レア、合わせて一万レア払って頂けますか?」
…………金か。
「「持ってないです」」
「即答ですか! 私が払いますので…………はいどうぞ」
ガブリエルが自分の財布から紙幣を2枚お姉さんに差し出した。
……ん? なんか今、聞きたくない名前が聞こえたような?
「はい、丁度ですね。それではこちらをどうぞ」
そう言ってお姉さんは手帳サイズの本を渡してきた。
「その本はギルドブックと言います。これはは身分証明にもなるので失くさないで下さいね」
ギルドブックと呼ばれた本を開いてみると全てのページが白紙だった。
と、お姉さんが説明を続ける。
「それではギルドブックに手をかざして下さい。自分のステータスが表示されます。ステータスは最初の職業を決める上で大切な数値です。高ければ上位職にもなる事ができますよ」
おお! なんか凄くゲームっぽい。
普通だったらここで俺のチート能力がバレて、ギルド中が大騒ぎになるはずなのだ。
だが、絶対そのイベントは隣にいる銀髪の美少女に起こるだろう。
……しかし、現実はまだ分からない!
「表示されたら一度こちらで確認します。それではお願いします」
俺は淡い期待を込めながらギルドブックに手をかざした。
「はあっ!」
俺は右手に力を込めると……!
「あ、別に声は出さなくてもいいですよ」
……。
「……ぷっ」
よし、ガブリエルは後でしばこう。
手をかざすとギルドブックが一瞬だけ光に包まれた。
そしてもう一度開いてみると最初のページに自分の名前と、何やら単語と数字が書かれていた。
「えーと? 体力、知力、魔法適性、魔力? お、これはレベル? 聞き馴染みはあるんだけど……何が良いのか悪いのか全然わからん」
凄い厨二感満載な単語ばかりだな……。
俺は言われた通り受付のお姉さんにギルドブックを渡す。
「……お名前はフカミイブキさんですね。えーと……何これ、ほとんどのステータスが平均ピッタリですよ?! 凄い、逆に凄いです!」
……おい。
その凄いは求めてない。
「あっ、だけど魔法適正の数値が異常なほど高いですね。これだったら魔法使い職の『ウィザード』になれますよ」
「じゃあその職業にします。……ちなみに魔法適正って?」
俺のその問いにお姉さんではなくガブリエルが答えた。
「魔法適正は、高ければ高いほど魔法を意のままに操れて、威力が上がりますね。イブキの数値だと、例えば爆発させる魔法などを数ミリ単位で調整したりできますよ」
おお、良いじゃないか。
と思っていたら、
「でもイブキは魔力量が普通なので強い魔法はあまり使えませんがね」
うん、知ってた。
しかし、魔法使い職になれたので後で魔法を覚えたりしてみようか。
「そちらのお方はどうですか?」
続いてはシルフィ。
恐らくとんでもないステータスに違いない。
「はい! 多分良いと思うんだけど、どうかな?」
「シルフィさんですね、…………な、何ですかこのステータスは?!! 体力が低い事以外は平均より異常に高いですよ!」
待ってました、そのリアクション。
お姉さんの叫び声を聞いてガブリエルも、シルフィのギルドブックを覗く。
「はあああ?! 何ですかコレ?!! こんなステータス見たことありませんよ!! 王都の高レベル冒険者ですら全然低いです!! あなた一体何者なんですか!」
ガブリエルもその赤い目を見開いて驚いている。
二人の声を聞いてギルド内もザワザワしてきた。
しかし隣の俺の事など眼中にないだろう。
「やっぱり? いやー頑張ったからね!」
褒められたシルフィは満更でもなさそうだ。
「このステータスだったら、ウィザードの上位職である『ハイウィザード』がオススメですよ! 体力をあまり使わずに遠くから魔法で狙うスタイルが良いと思いますが」
「じゃあそれで!」
おっと、まさかの俺の上位互換。
「シルフィさん! これからこのイグニスのギルドの看板を背負う活躍をお願いしますね!」
「はい! こちらこそ!」
お姉さんの声を皮切りに、ギルドが歓声に包まれた。
あ、俺、忘れられてますね。
■■■■■
ギルド内のテーブルにて。
「ありがとうございます! ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」
俺とシルフィとガブリエルでパーティを結成した。
正直言って不満しかない。
しかし……、
「あんだけシルフィに言われたらなあ……。というか嘘泣きなんてどこで覚えた事やら」
だが、その後の悪戯っぽく笑った笑顔を俺は一生忘れない。
「だって、ガブリエルと一緒に冒険したいって思ったんだからしょうがないじゃん。気も合いそうだし」
……分かったよ。分かったからそんないじけた顔しないでくれ。こっちが悪者になってしまう。
「はいはい、じゃあよろしくガブリエル……なあ、長いし言いにくいからガブって呼んでいい?」
「別に良いですよ。減るもんじゃないですし」
「じゃあガブ、盗賊職ってどんな職業なんだ?」
この世界は冒険者になる際に、自分のステータスに合った戦闘スタイル、言わば職業を決めるらしい。
俺の場合は魔法使い職である『ウィザード』、シルフィはその上位職の『ハイウィザード』を選んだ。
魔法使い職はなんとなく分かるのだが、盗賊職とは一体……。
「盗賊は主にパーティのサポート役ですね。『敵感知』や『隠密』などのスキルを使って、ことが出来ます。あと毒魔法も使えます。まあ割とダンジョンには必須の職業ですね」
なるほど、スキルとかを駆使してサポートするって事だな。
その黒い服も盗賊らしく闇に溶け込む効果があるみたいだ。
「オッケー分かった。それじゃ何か魔法覚えたいけど、どうしたら覚えられるんだ?」
「それならさっき貰ったギルドブックを使いますよ。ちょっと出してください」
俺はそう言われてギルドブックを取り出して、パラパラ適当にめくってみる。
「ん? 最後のページに何か書いてるんだけど」
その言葉にガブが驚きの表情を上げる。
「最後のページに表記があったんですか? それはユニークスキルと言って神からの祝福なのです。とんでもない魔力だったり、その人特有の魔法だったりあるんですよ!」
え、マジ? まさかの俺にもチートがあるかもしれないって事?
あの女神、意外と優しいんだな。
ありがたやありがたや。
「それでイブキ、どんなスキルなんですか?」
俺はそのスキルを確認する為もう一度ギルドブックに目を落とした。
「えーと? 風神の従者? 何だ、風神って?」
——その言葉を言わなければ良かった。
いや、言わなくてもいずれは気づくだろうけど。
「え? 風神とは『レア』という女神の事だよ。というかイブキのそのペンダント、レアニスト教のシンボルが付いてるけど? 知らなかったの?」
「…………マジ?」
レアニスト教ってあのサイコパス女神を崇める宗教って事?
そして俺は——
——あの女神の従者。
——あの困ったら手が出ちゃう系女神の従者。
……従者? 従う者?
そんな事って…………!
「あってたまるかよ!!」
一颯。
どんまい!




