二話 疾風の矢を意のままに!
前回から三章に突入いたしましたあ!
こんな雑魚作者でございますが、これからも頑張ります!
色んな魔法が使いたい。しかし、風の女神の従者である以上それが叶うことはない。
胸元のペンダントをなんとなく触ってみる——これのせいで俺は『風神の従者』になってしまった。
しかしこれが無ければ、この世界の言語を話すことが出来ない。
……詐欺だと思うと負けだな。
話は戻り、俺は風魔法しか使えない。
実は風属性の魔法はこの世界で弱い部類に入る。
極端に攻撃魔法が少ないのが理由なのだ。
炎や氷、水魔法はこの世界で『花形』に位置するのだが、風魔法は『問題児』という訳だ。
そうなると冒険者にとって必要な攻撃力は……。
「——武器を使えるようになりたいな……」
俺は朝食の最中にボソッと呟いた。
「え……、『ウィザード』なのに?」
別に誰に言ったわけでもない言葉だったがシルフィが拾う。
しかし、その口がぽっかりと空いていて……。
「……そんな食べてるもの落とすくらい衝撃発言だっけ? 俺の戦闘力知ってるか? ほとんど一般人と変わんないんだぞ」
シルフィの落とした食べ物は、後で処分します。
気を取り直して。
「ひとまず剣以外の武器を扱えるようになりたいんだよな。剣なら振り回せばなんとかなから」
「それならメリケンサックとかどうですか? あれなら扱いやすいし何よりかっこいいですよ」
隣で、シルフィが作った目玉焼きを頬張っているガブリエルがモゴモゴと口にした。
「メリケンサックって拳にはめるやつだろ? 肉弾戦は嫌なんだよ。そもそもモンスターに近づく時点でハードルが高い」
「ムー、そうですか……」
渋い顔をするガブリエルに続いて、すでに朝食を済ましたトレニアが。
「だったら、槍とかどう? 王都のイケメン騎士さんとかよく使ってるけどかっこ良いわよ!」
「槍かあ……。動きづらそうだし却下」
「即答はないでしょ! 冒険者なんだからもっと真剣に考えなさい!」
「ぐ……。なんで今日はそんな正論を言うんですか……。はい、シルフィは何かいい武器の案ある?」
正論爆弾を華麗に躱し、俺はシルフィに振る。
「えーと、弓は? 剣の次にメジャーな武器だとは思うよ? ……でも不器用なイブキに扱いきれるかな?」
「弓ねえ……。使えたらカッコいいんだろうけど、何せ『アーチャー』っていう職業があるからなあ」
冒険者の職業には、職業補正というものが有る。攻撃の威力が上がったり、中には追加効果が発生するものも存在する。
弓を使用する時に『アーチャー』の職業補正がかかると、矢の命中率と威力が上がるのだ。……何故か
しかし、もし俺が弓を使いこなせたとしても『アーチャー』の職業補正はかからない。
まあ、考えたら当然だけど……。俺の職業『ウィザード』だし……。
「悩むなあ……。弓とか自信ないし、これも没かな」
「そうですか。イブキが無理というならそうすれば良いですよ。また他の案を探しましょうか」
ガブリエルもそう言っている。この金髪盗賊、俺が不器用なことを知ってやがるのだ。
そうだな。弓なんて小難しい物じゃなくて……。
「でも一回練習してみたら? 私、弓を使えるカッコいいイブキを見てみたいな?」
「よし。朝飯食べ終わったら武器屋行くぞ」
「……相変わらずシルフィにデレデレですね」
■■■■■
「はいこれレア紙幣! おっちゃん、ありがとう!」
「おうよ! また欲しいもんがあったらこの店を贔屓してくれよ!」
と言う訳で、武器屋に飛び込んだ俺は弓矢を購入した。
俺は教会に戻ると早速試してみようと庭に飛び出す。
そこにはせっせと作業をするガブリエルの姿があった。
「おうガブ。用意はできたか? 悪いな、色々準備させて」
「いえいえ、別にいいですよ。パーティーメンバーの頼みですし、特に問題はありません。もう少しで終わりますのでもうちょっと待っててください」
ガブリエルには的の製作を頼んだ。俺の弓の腕を測るために必要なものだ。
そして彼女は庭に少し高めの台を設置し、その上にフランス人形のようなものを設置した。
……え?
「ガブ、その人形なに?」
「メルです」
「いや名前じゃなくて。なんでそこに置いてんの? そのままだと頭にグサっと言っちゃうけど」
「別に深い意味はないですよ」
そうかなあ……。正気のない目が怖いんだけど。
「いやだけど……変えて欲しい。罪悪感がすごい」
「そうですか……。ちなみにこのお人形ははとある小さな子が居る家のゴミ箱から盗んできた物です。もしこのお人形に危害が加えられたら、その時のゴミ箱に捨てられた怨念が降り注いでしまうかもしれません。……これを聞いてまだ変えて欲しいと言いますか?」
「言うに決まってんだろ馬鹿野郎!! 曰く付きかもしれないっておかしいだろ!!」
すぐに片付けました。
——気を取り直して。
「よし、じゃあやってみようか。まずは他の冒険者みたいに見様見真似で……それっ!」
俺の放った矢は的に届かず弱々しく地面に落ちた。
「まあ……だよね。イブキ、落ち込むのはまだ早いよ」
「そうですよ。伸び代しかないですよ……多分!」
「そうよ、多分!」
「トレニアさん、ガブ。そこは絶対って言うところだろ」
分かってたけどこう現実を目の当たりにすると悲しくなる。
もちろん最初から上手いはずが無いし、ましてや俺の職業は『ウィザード』だ。矢を扱うことはこの世界の創造主も想定してないだろう。
「ていうか、弓矢を扱いたかったら『アーチャー』にジョブチェンジしたら……。いや、レアがそうさせないんだったね」
「そうなんだよなあ……。『風神の従者』のせいで他の職業のスキルが覚えられないから、必然的に『ウィザード』以外の選択肢が消えるんだよ」
俺はあの日のレアの姿を思い浮かべる。あのサイコ女神の姿を。
もし俺の対応をするのが他の神だったら……いや、もしレアと出逢っていなかったら俺はシルフィとも運命の会合を果たさないことになる。
まあそこしか感謝するところは無いけど。
「イブキ、とりあえず反復練習! 何事も繰り返しが大事だよ!」
——三時間後。
一線の矢が、空気を切り裂きながら進む。
俺の手から放たれたそれは数メートル先の的を華麗に——というかそこまで届かなかった。
「「へ、下手くそ!!」」
「ちょっ! ハモリながら侮らないで!」
三時間が経過したが俺の弓矢の腕は全く上がらないばかりか、シルフィとガブリエルにステレオチックに迫られていた。
そもそも矢がうまく飛ばない。それは狙いを定める以前の問題だ。
「なんでこんなに練習しても届きすらしないの? そんなに難しい?」
「おっと、たまに出るシルフィの上から目線発言だな。……それならやってみる? シルフィ」
「やらせてやらせて! 魔王城にいた時から暗黒騎士さんのを見てて憧れてたの!」
「暗黒騎士……! カッコええ!」
「かっこいいですか? そんな年頃でしたっけ?」
「うっせえぞガブ」
「辛辣!」
ガブリエルは置いといて、俺はシルフィに弓矢を手渡した。
弓矢を受け取ったシルフィは銀色の髪を耳にかけて矢を引き、照準を合わせた。
その姿があまりにも……。
「なあガブ、今のシルフィ、めちゃくちゃ絵になると思わないか?」
「思います。銀髪が太陽に照らされていてとても幻想的で、正直羨ましいです」
そのガブリエルの言葉通り、俺は久しぶりに異世界を感じていた。
まあ、こいつも綺麗な金髪で正直眩しいんだよな。
そして、矢を引いたシルフィの腕から何やら蒼白色のオーラのような何かが滲み出てきた。
「……なあガブ。あれってヤバいやつだよな」
「……はい。『アイス・カーニバル』を使う前みたいな魔力がが腕から滲んでますね……」
——ビュンッ!
という擬音が、シルフィが矢を放つと同時に聞こえてきた。放たれた矢は物凄いスピードで的に当たり、そして的が凍りついた。
どうやらシルフィは矢に魔力付与したみたいだ。
……あーなるほど。
『ウィザード』はこうやって弓を使えと。
■■■■■
「いやあ、世界ってスゴいな。……そしてお茶が美味い」
俺は庭が見える縁側で冷たいお茶を啜っていた。
「練習はどうしたんですか。さっきから腑抜けた笑顔が気持ち悪いですよ」
すると、ガブリエルがうちわを片手に横に座った。
「うっせ。あんなの見せられたら俺は無理だってなるじゃん」
先程、とんでもない狙撃術を見せたシルフィはまだまだ元気のようで。
「やっほーい! イブキ! 楽しいから君もやりなよ! えへへへへへ」
ウキウキで遊んでいた。コントロールも最高で百発百中。
「シルフィ楽しそうですね。あの調子だったら、シルフィは魔法を使うほかに弓も使わせた方が良いですね」
「……それ、俺の存在意義無くない?」
「元からありませんよ、そんなの」
……泣いて良いかな。
それにしても、魔力を矢に付与することが出来たとして。
コントロールはどうやって身に付けるのだ。
「やっぱり練習あるのみか。風魔法はエンチャントしてもスピードしか上がらないし……まあ、シルフィはコントロールも天性のものがあるけど」
氷と雪の神様は、どれだけの加護を与えれば気が済むのだろう。
やはり『氷雪の魔女』は恐ろしい……!
「理解してるじゃないですか。ほら、うちわ扇いであげますんで元気だしましょう」
ガブリエルがブンブンと無造作にうちわを扇ぐ。
「おー……涼しーなー」
「ほらほら……って長いですよ。私も腕が疲れて来ましたし、早く行ってください」
はいよ。……あ、鼻がムズムズして……。
「ぶえっくしょんっ!!」
「ちょっ、きったな! 何やってるんですかレディの前に!! ほらティッシュ、鼻水拭いて!」
俺はティッシュを数枚受け取ると、豪快に鼻を噛んだ。
「悪いな。……それでゴミ箱はどこだ?」
俺はティッシュを丸めながら尋ねる。
な
「知りませんよ! 自分で探しなさい!」
そんなに怒鳴らないでも……。
俺は辺りをキョロキョロする。……すると、トレニアが横たわってるソファの近くにゴミ箱があった。
トレニアはいつの間にか眠っており、だらしない顔をこちらに向けているが別にいつものことだ。
「あーゴミ箱そこかあ。まあいいや……『リード・ウィンド』」
丸めたティッシュは、空中へ放り出されると風に乗り数メートル離れたゴミ箱に入った。
「……相変わらずですね。それを続けてるともっとだらしなくなりますよ」
『リード・ウィンド』は風を生成し、そのまま操る魔法。使用魔力量も大分少ない為、使い勝手の良い魔法なのだが、
「だけど、割と使えるのに攻撃になるとさっぱりで…………………いや、待ってくれ」
「は? 誰も待ってませんよ」
「そうだけど! ……いま頭の上らへんで、電球がこう……光った気がした!」
俺はふと閃いた。
——これを弓矢に使えると!
……というかなぜ思いつかなかったのだろう!
「シルフィ! 俺は、今度こそ! 良いところを——!」
■■■■■
「——それで、どうするの? 風魔法ってエンチャントしても特に追加効果無いよ?」
庭に出た俺はシルフィから弓矢を返してもらった。
シルフィはハテナマークを浮かべているが、俺は詳しく説明を始めた。
「わかってる。だからエンチャントをするんじゃなくて、矢を放った瞬間に『リード・ウィンド』を使うんだ。……要するに矢は俺の思い通りに動くってこと」
「……なんか、ずるい」
「器用だと言ってくれ」
やっぱり弓矢は当たらなくては意味がない。
シルフィの氷魔法のエンチャントも羨ましいが、俺は俺のやり方を貫こう。
「よし、やってみるか。見とけよシルフィ。俺が弓矢を使ってカッコいいとか見せてやる!」
俺はそう言うと、十メートルほど離れた的に向かって矢を放った。
……そして!
「『リード・ウィンド』!」
「ズルい!」
外野でヤジが飛んでいるのは置いといて、俺が放った矢は俺が生成した風に乗り、的を射抜いた。
「スゴい! イブキ、カッコいいよ!」
「だろ! これで俺の攻撃できる冒険者生活が始まるぜ!」
「……なんか悲しいですね」
憐れむな憐れむな。
……何はともあれ、『リードウィンド』の有効的な使い方が見つかった。
これに乗じて、『コールド・ウィンド』と『ウォーム・ウィンド』の良い使い方も——いや、あれはお仕置きやイタズラにしか使えないな。
俺は楽しくなりその後何回も矢を放ちまくった。
通常ならあり得ない軌道もリード・ウィンドがあれば何でも可能だ。
一回転や空中で停止させたりと俺は思いつくアイディアを弓矢で表現した。
——時刻は夕方。
「ふう、楽しかった。まさか今日が俺の輝かしい冒険譚の始まりになるとは思いもしなかったぜ」
「そうですか? あれってただの小細工じゃないですか」
「いやいや、それもこれも俺が『風神の従者』だから成せた技であって……あっ」
思いもしないことを調子に乗って行ってしまった。
……おい、そんなニヤニヤすんな二人とも!
俺はプイッと顔を背けると。
「へいへい。とにかく矢を集めるぞ。俺が下手だった時に、そこかしこに飛ばしてるからな」
「「はーい」」
割と広いレアニスト教会の庭を隈なく探し、十分後に集合した。
「……18、19……あれ、一本足りないな」
武器屋から購入したのは20本。
しかし、三人でしらみつぶしに探したのだ。今更何処に……。
「まあ良いや。またいつか出てくるだろ。……なあシルフィ、今日はみんなでメシでも食いに行こうぜ……って、ガブは?」
「ああ、メルを取りに行ったよ」
「メルってあの的にしようとした人形か。アイツ、アレを盗んだって言ってたけど、本当だったら説教して……」
「きゃあああああああ!!!!」
俺たちの話を遮るかのように、ガブリエルの叫び声が響き渡った。
「な、なんだ?! シルフィ、ガブは何処に!」
「あ、あっち!」
俺とシルフィは庭の茂みの奥に行く。
すると、そこには……!
「メ、メルが串刺しに……!」
「「……え」」
流れ弾の被害に遭ったメルをガブリエルが絶望の眼差しで抱いていた。
「……ガブリエル、もしかしてイブキに呪いとかかかってしまうの?」
「……多分」
「え、マジで?」
——今日新たに分かった事は一つ。
意外とトレニアさんが有能だった。
なんか最近、一颯くんをいじめるのが楽しくなってしまいます……。
ま、新しい攻撃方法覚えたし、まだまだいけるっしょ! ……多分。
と言う訳で——
読んでいただきありがとうございます!
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