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『その日、僕は行方不明になった』4
「それでも駄目だ!」
信一郎は美代の手を無理矢理引き、急いで下山した。麓に近付いた辺りで霧は薄くなり、やがて霧が届かない場所まで来た所で足取りを遅くした。
「ここまで来ればもう大丈夫だろう」
「…………」
二人は無言のままカミヤシロ山の麓まで辿り着いた。
「……どうして止めたの?」
「どうしてって言われてもなぁ……」
「今ならまだ間に合うかもしれない。私だけでも……!」
信一郎はカミヤシロ山の頂上を指差した。そこにはあの電波塔は無かった。
「あぁ……電波塔が……」
「良かった……」
信一郎の言葉に、美代は涙を浮かべて信一郎に詰め寄った。
「何が良かったの!?あそこに行けば紅葉ちゃんに会えたのに!」
「その確証は無い」
「どうして!?」
「現に今、一瞬だけ現れて消えた。あの街に必ず行けるとは限らないだろうし、次にあの電波塔が現れるのが何時かは分からない」
「でも!」
「次に現れるのは何時だ?明日か?明後日か?それとも一か月後か一年後か?」
「…………」
「僕は美代まで居なくなったら嫌だ」
「シン君……」
「もう忘れるんだ、紅葉の事は」
「……そう簡単に忘れられないよ……」
「美代達にとってはととても大切な友人、家族だろうけど、僕だってその一人だ。僕が前にあの電波塔に行って居なくなった時、美代達はとても心配しただろう?」
「……うん」
「僕も同じだ。美代に居なくなってほしくない」
「……シン君……」
「きっとあの時見たのは紅葉じゃなかったんだ。夏の夢だったんだ」
「……そうだね。そう、考えるしかないね」
「そうだよ。もう、あの電波塔には関わらないでおこう」
「……分かった」
その日、信一郎と美代は手を繋いで地蔵前まで行き、別れた。
数年後、信一郎は都内の高校、大学まで行き、村に戻って役場に就職した。その後、美代と結婚し、二人の子供を授かった。
時折、あの電波塔が現れ、それには触れないように過ごした。あの電波塔は一体何なのか。それは今でも分からない。あの日の出来事も、何なのか分からない。でもこの村に訪れる人達には
「あの電波塔に近付いてはならない」
そう言って警告している。
真白は、今でも紅葉が帰ってくるのを待っているらしい。
―――BAD END




