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『その日、僕は行方不明になった』2
「言わない方が良いと思う」
「どうして?」
「だって気の毒じゃない。やっと見付けたって言っても、もういつ会えるか分からないだなんて……」
「そう、だよな……」
話が終わり、美代はおもむろに立ち上がった。
「ところで、何で紅葉ちゃんの事『紅葉』って呼ぶの?」
「え?」
「だって年上だし、敬語も使ってたじゃない」
「そういう美代だって紅葉『ちゃん』じゃないか」
「私は紅葉ちゃんとは長いから『ちゃん』で良いの」
「そうですか……まぁ、僕は紅葉から『さん』付けは止めろって言われたから。それと敬語も禁止ってな」
「そうなんだ」
二人はアイスを食べ終え、いつもの地蔵の前まで行った。
「本当に真白には何も言わない方が良いんだな?」
「えぇ。そうした方が彼の為だと思う」
「でも僕達は紅葉に会った。その事実だけでも伝えるべきじゃないか?」
「きっと夢だったのよ。私達は紅葉ちゃんに会ってない」
「二人同時に見た夢か?現実的じゃないな」
「それで良いじゃない。真夏の夜の夢。シェイクスピアよ」
「夜じゃなかったけどな」
「細かい事は良いの。とにかく、この事は他言無用で」
「……分かった」
二人は別れ、自宅に戻った。信一郎は自室に戻り、そのまま眠った。あれは本当に夢だったのだろうか、などとくだらない事を考えながら。
翌朝、信一郎は起き上がり、リビングに行って朝食を摂った。明日、真白にどんな顔で会ったら良いだろうか。気付けばカミヤシロ山に登っていた。そこにはあの電波塔は無く、建っていた形跡も見当たらなかった。暫く辺りを探索していると、後ろから美代の声が聞こえてきた。
「シン君」
美代は花束を持っていた。
「美代。どうしたんだ?」
「あれからずっと気になってて……気付いたらここに来ていたの」
「そうか。僕もそうだ」
「うん。電波塔があったのは、ここ?」
「あぁ。それ、どうしたんだ?」
「紅葉ちゃんに。もう会えないから……」
美代は電波塔があった場所に華束を添え、拝んだ。
「おいおい、紅葉は死んだ訳じゃないぞ?」
「えっ、でももう二度と会えないって……」
「時間の流れが違う場所にいるんだ。むしろ僕らより長く生きる事になっているだろう」
「そうなんだ。でも、それでも、ね」
「……あぁ」
信一郎も手を合わせた。そして二人は一緒に辺りを探索し、何も無いと確認すると、下山する事にした。
「もう下りよう。そろそろ日も暮れてくる」
「うん」
下山しようとすると、あの霧が突如現れた。そしてあの電波塔もいつの間にか出現していた。
「あっ!あの電波塔!」
「まずい!」
信一郎は美代の手を引いて一気に駆け下りた。
「シン君!?どうしたの!?」
「あの時と同じだ!あの電波塔の近くに居ると、霧が発生するんだ!それに飲み込まれると、向こうに行ってしまう!」
「ちょっ!ちょっと待って!」
美代は信一郎の腕を引っ張り、引き止めた。
「何だよ!?」
「この霧の先に、紅葉ちゃんがいるんでしょ!?」
「あぁ!」
「だったら連れて帰らないと!」
「無理だ!」
「何で!?」
「何でかは僕にも分からん!でも紅葉はもう固い意志で戻らないと言ってたんだ!」
「それはシン君だったからでしょ!?」
美代は信一郎の手を振り払い、その場で足を止めた。
「美代!」
「私が掛け合ってみる!私なら、きっと説得出来る!」
「その根拠は!?」
「私と紅葉ちゃんの仲だから!」
「…………!」
美代と一緒に向こうの世界に行く→5
美代と一緒に下山する→4




