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悪役令嬢予定だったので、修道院に駆け込みました  作者: Hatsuenya


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聖女の予定だった私は、攻略イベントをこなせない-その2

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 前回に続いてミンティア視点で、お送りします。



         ミンティア side



 この場面は、攻略対象者のジョルジオ王子とマーチンの過去の回想シーンで出てくる。


 孤児院に視察に行った2人が、小さな子供達に籠を編むのを教えていたミンティアの優しさに惹かれ、子供達と共に籠を編むのを教えて貰うのだ。


「中々、お上手ですね。初めてとは思えません。流石です」


 私は、ジョルジオ王子の手先の器用さを誉め、籠の出来映えを褒め称えた。

 要は、おべんちゃらである。よいしょである。何なら太鼓持ちも厭わない。


「そうか?そうか、そうか!

 おい、マーチン。お前の籠、ちょっと大きくないか?」


 ジョルジオ王子とマーチンには、ゲームのイベント通り、手の平に乗る程の小さな籠を編んで貰っている。一方、私は彼らより少し大きめの籠を編んでおり、最終的に2人の籠の蓋としてプレゼントして、このシーンは終わるのだ。


 そして、2人の攻略対象者達と私の共同製作である小さな籠は、マルガレーテの我が儘や勉強三昧の辛い日々の中で、ホンワカとした想い出となり、学園の入学式での再会を経て恋へと導かれるのだ。


「時間がないんですよ。おそらく、もうすぐマルガレーテの料理が出来上がります。それまでに、これを作ってしまわないと。

 因みに私が作っているのは、殿下の籠の蓋です。どうせ、殿下はそれをマルガレーテにプレゼントしようと思ってらっしゃるんでしょうから、これは、私の大事な妹の婚約者である殿下への腹いせです。

 殿下からプレゼントされたこの籠を見る度に、マルガレーテは殿下と同時に私を思い出しますからね」


 そう言うと、マーチンは高笑いを始める。


 え……マーチンって、こういうキャラだっけ?もっと、こう、冷静沈着で、冷たいながらも実はツンデレなキャラだったよね?


 突然、ラッパの音が鳴り響き、護衛と共にジョルジオ王子とマーチンが部屋を飛び出す。

 彼らを追って、孤児院での私のお兄ちゃんお姉ちゃんが私と共に部屋を飛び出した。


 調理場では、包丁を持ったメグ修道女と血塗れのハンカチを手に持ったマルガレーテが立っていた。


 一体、何があったの!?


 猟奇殺人?


「おい、どうした。凄いラッパの音が鳴ったが」


 護衛の騎士達に阻まれて見えなかったけど、ジョルジオ殿下の声がした。


「せ、聖女様の奇跡ですっ!!」


「私が、指をザックリ切りましたら、聖女様が一瞬で治してくれました」


 マルガレーテと一緒に来た修道女とメグ修道女の興奮した声が、調理場中に響き渡る。


「そうなのか!凄いな、マルガレーテ。流石、聖女だ」


 同じく興奮しているジョルジオ王子の弾んだ声が聞こえた。


「……血、血とか、痛そうなのとか見てるだけで駄目なので、女神様に、無かった事にして貰いましたっ!」


 ……あー、居るよね。血を見るのが全く駄目な人。血を見ると、パニックに陥ったりして、慌てふためいてワタワタしちゃう人。


 って、マルガレーテって、悪役令嬢でしょう?

 確か、私を引っ叩いて、口の端から血が出た私を見て高らかに笑う。私を突き飛ばして倒れた所で、私の手を足で踏みにじって、悦に浸る。

 そんなキャラじゃなかったっけ?え?それなのに、血や痛そうなのが苦手なの?


「あー、うん。マルガレーテだものね。うんうん」


 騎士達の隙間からマルガレーテ達を覗いていると、マーチンのそんな声が聞こえる。


「血がダメなんですから、サッサと手をお洗い下さい。気絶しちゃっても知りませんよ聖女様」


 更に駄目押しで、マルガレーテの連れてきた修道女が、畳み込む様にマルガレーテに指図をしているし。それに唯々諾々と従っている悪役令嬢って、一体、何なの。


 これは、ちょっと近くに寄って、何がどうなっているのか、しっかり確かめないと。

 ついでに、ここでしっかりヒロインの存在感を示して、舞台を掌握しないとね。

 このままだと、私、ただのモブ扱いだから……それは駄目!そうすると、私の大事な推しに会えなくなる。


 そう、まだ私は推しに出会えてすらいない。あの方にミンティアが出会えるのは、ミンティアが聖女になってからなんだもの。

 

 私は舞台に登場すべく、「失礼します」と言いながら、メグ修道女の元に駆け寄った。

 メグ修道女の怪我も気になるし、目が悪い癖に包丁を握ったままでうろうろしているメグ修道女が危なっかしくて見ていられない。

 また怪我したら、どうするのよ。


「メグ修道女様、ダメですよ。最近は、目がよく見えなくなってきたのに、包丁なんか持つから。私が代わりますね」


 私は、メグ修道女の代わりに包丁を握って玉葱を微塵切りにし始める。ちょっとばかり不揃いで大きめに玉葱を切っちゃったけど、問題ないよね。いつもより、上手に出来てると思うし。


 メグ修道女は、目を凝らして私の手元を見てるけど、心配ないってば。まあ、確かに玉葱は目に沁みて泣けるけれど、任せて、任せて。

 口を開けたり閉じたりして、メグ修道女は私に何か言いたそうだけれど、大丈夫だってば。


「め、メグ修道女。ちょっと、目を瞑って下さい」


「え、は、はい」


 そんなメグ修道女に、マルガレーテが声をかける。


 メグ修道女、大丈夫よ。小さな頃から優しい、今世では私や孤児院の皆のお母さんみたいな人。


「でも、いつか私がメグ修道女の目を治してあげって、え!?何」


 いきなり眩しい光がピカッと光り、凄い音が鳴り響いた。さっきと同じく、うるさいラッパの音だ。ちょっと、耳が痛いんだけど?


「目が、目がハッキリ見えます!」


 いやー、目も潰れるかと思ったわよ。眩し過ぎるってば。ああ、目が痛い。

 激しい光が薄れ、何とか私が目を開けると、メグ修道女が、今までショボショボとしていた目を見開いて、涙を流している。

 え?大丈夫なの?


「ありがとうございます!ありがとうございます聖女様!さあ、ミンティア。退いてちょうだい。玉葱の微塵切りなんて、ドンと来いですよ」


 突如、腕捲りをしたメグ修道女は、いつもに増して、私をグイっと押し退けて包丁を取り上げる。

 そうして、気合いを入れて、私が切った玉葱を更に細かく切り始めた。


「あらやだ。目が良くなっても、やっぱり玉葱は目に沁みるわね~」


 目をかっ広げたまま、玉葱を切るからだと思う。





「メグ修道女の目が、目が!(私の聖女覚醒イベントの前に、よく見えるようになっちゃったー)」


「そうだよ、ミンティア。今まで苦労かけたね。これで私も安心して、自分で包丁を持てるよ。だから、さあ、包丁をこちらにお寄越し」


「で、でも、私も、とにかく見せ場を作らないと。このままでは、ただのモブに」


「いやいや、あんたの殺人的な包丁捌きを見てると、今度は私の心臓に悪いからね」


「ミンティア姉ちゃん。今作ってるの王子様達のご飯だから。不敬罪に問われる前に、お願いだから、メグ修道女様に微塵切りを代わって貰って~( ;∀;)」





 がんばれミンティア。何処かで見せ場を作らないと、出番が終わるぞ。


 ぴろりろりーん。ミンティアの推しは、マルガレーテの噂を聞きつけ、密かに勝手に好感度を上げた。

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