流石に醤油は、ありません
読みに来て下さって、ありがとうございます。
いよいよ、肉まんが出来上がります!
肉まんと言えば、中に入れる調味料に醤油やゴマ油、中華スープの素が欲しい。
酒を少し入れようと思ったけれど、残念ながら、当然の如くここは西洋文化の国なので!メグ修道女が出してきたのは、ワインだった……使えない。肉まんが、何やら違う物体になりそうで、使えない。
ワインは、修道女達が風邪を引いた時に、温めて飲むらしい。
「調味料がない」
「聖女様。これでしたら、ございますよ」
エルダがカバンから出してきたのは、何やら黒っぽい液体が入った瓶だった。
蓋を開けて、匂いを嗅ぐと、ん?これは!?
「ナンプラー?」
行ける!
と言うか、何でナンプラーを持ち歩いてるの?
「お忘れかも知れませんが、私は公爵家のご領地の港町出身ですよ」
思い出した……小さい頃、お父様に連れて行ってもらった港町でナンプラーを見つけて、はしゃいで色んな料理の名前を言ってたら、もれなくエルダが付いてきたんだったわ。押し掛け女房ならぬ、押し掛けメイド。その名はエルダ。
私、その頃には、もう前世の記憶の片鱗があったのね。料理だけみたいだけど。
しかし、ナンプラー持ち歩く修道女って……転けて瓶が割れたら悲惨な事になるわね。ちょっと離れて歩こうかしら。
「メグ修道女。ひょっとして、蜂蜜が少しないですか?」
「少々なら……子供達が風邪を引いた時に使う分が」
今日使用した材料は、後で数倍にして寄付するという約束で、メグ修道女に蜂蜜を分けて貰った。
よし!行けるっっっ!
細かくした屑肉、玉葱みじん切り、ナンプラーと蜂蜜入れて、片栗粉の代わりに小麦粉足して。練った肉種をパンの生地に包んで、蒸籠に入れて、蒸しあげる。
肉まんのあの何とも言われぬ匂いが、鼻をくすぐり、本能を刺激する。
「「嗚呼!5○1の豚まん」」
大阪人なら、1度は嗅いだ事があるであろう。大きな駅の土産物店の並び、会社帰りに思わずフラフラと足を運びそうになるあの……殺人的な匂い。
「豚まんのある時~」
そうそう、このフレーズ。って、ん?
先程、ジョルジオ殿下やお兄様達と共に追い払った筈の、ピンクのツインテールの美少女が目をキラッキラとこれでもかと輝かせて、両手を合わせて私を拝んでいる。
み、ミンティア~!?
「聖女様!一生、ついてってもいいですか!?」
って、本来は、貴女が聖女なんでしょう!?
悪役令嬢の私についてって、どうするの。
と言うか、貴女、転生者なのね。しかも、私と同じく大阪人。転生の世界って、狭いわ~。
私は、肉まんを半分に割り、ふーふーしてから1口噛りついた。
そして、もう半分をふーふーしてからジョルジオ王子に渡す。
まあ、お毒味よね。ふーふーは、余分だけれど。
ミンティアと同じく、目をキラッキラさせて大きく見開いて、仔犬の様に尻尾をパタパタと振り回しているかの様に見えるジョルジオ殿下は、私に手を差し出して半分の肉まんを受け取った。
「熱いですからね、火傷しない様に気を付けて、最初は少しずつ召し上がって下さいね。ジョルジオ殿下」
顔を真っ赤にして、『ああ』とか『そうか』とか言いながら、ジョルジオ殿下は私の顔を見つつ、私がやった様にふーふーと肉まんに息を吹き掛ける。
「サンドイッチの様に手で持って食べるのか。
それにしてもこの肉まんとやらは、ふわっふわのふっかふかだな。この真ん中の肉から出る肉汁が周りのパンに染みて、それがまた旨い」
まあ、本家本元の豚まんには劣りますけどね。思い付いていきなり作ったので、材料も無い物だらけでしたが、何とかなりました。
本来使う醤油もない、酒もない、砂糖もないし、ゴマ油も……これは、作れるわね。身体強化を使ってギューっとがんばれば、行ける行ける。
「マルガレーテ、お兄様にも、ふーふーは?」
そんな、可愛らしい顔で、『ふーふーは?』とか言われちゃうと、してあげなくては、女がすたる。
はい、ふーふーふー。
って、よく考えたら、私と同じ顔だったわ。
「ああ、もう、一生、肉まんは食べれないかと思って諦めてました。
この肉まん、美味しいんですけど、ちょっと何となく普通の肉まんと少し違いますね」
ミンティアが、チビチビと大事に味わいながら、1口1口を噛み締める様に肉まんを食べつつ、私に話しかけた。
「醤油とかがなかったから、ナンプラーと蜂蜜が入っているのよ」
この世界、無いものだらけで、とにかく代用品を何とか探すか、自分で作るしかない。
因みにピーナッツバターは、私が作った記憶があった。正しくは、案だけ出して、大きな穀倉地帯を持つお母様の実家で作って貰いました。今では、特産品の1つとなり、売れに売れてるそうです。
「ところで聖女様。たこ焼きは?お好み焼きは?カレーパンは?ふわっふわのパンケーキや、ふわっふわのり○ろーおじさんのチーズケーキは?食べれませんかね?」
ヒロイン、どれだけ食い意地張ってるんだか。まあ、わからなくもないけどね。
「お嬢聖女様、マッコイ親方を連れて来ました!ついでに、学校帰りの見習い聖騎士も拾って来ました。こんなに良い子の私の分の新作料理、残ってますよねっ」
「お嬢様、聖女になったんだってな。祝いの新作料理を食べに来たぞ」
「食べに来たって……マッコイさん。仕事の依頼をしたいのですけど?」
「聖女様っ!先程、出迎えてくれたこちらの孤児院の修道女から、聖女様が奇跡を起こされたとお聞きしました。しかも、続けて2度も。素晴らしいですね!俺も見たかったなー」
「えっ!?聖騎士グレイザー様!?うそっ!マジで?実物も格好いい」
「確かに俺はグレイザーだけど、残念ながら、まだ見習いだ。学生だしな」
「……マルガレーテ聖女様!私、修道女になるから、連れて帰ってちょうだい。嫌って言っても無駄よ。ヒロインチートで修道院に居座ってやる~」
ミンティアの推しは、聖騎士見習いのグレイザーでした。
ヒロインのミンティアは、孤児から押し掛け修道女に進化した。ぴろりろりーん。
肉まんレシピは、ありません。悪しからず。
夜中に書くと、お腹が減る作品です。( ;∀;)




