行け行け、お菓子の聖女の行進曲
読みに来て下さって、ありがとうございます。
あー、まあ。何なんですかね?この話……。レシピ付きです。
修道院に帰った私を待っていたのは、恨みがましい目をして風呂敷包みを背負ったメイドのエルダだった。
「お嬢様、私を置いて行かれましたよね」
「ふん!聖女様の一番の侍女は、このクレアだからね。メイドのあんたなんてお呼びじゃないのよ。オーッホッホ」
「そんな事を言って、いいんですか?」
エルダは、風呂敷包みの中身をテーブルの上に広げた。
「こ、これは!」
「お嬢様のお作りになった蒸し器に、泡立て器。他にも色々。そして、氷魔術の使い手の私がいなければ、氷菓も作れないのでは?」
私が居なくともお菓子のレシピは公爵家に残して来たので大丈夫な筈だけど?
「奥様が、こちらでも新しいレシピを考案されれば、菓子の材料調達も、修道院への寄付も弾もうと仰ってました」
菓子の材料……エルダの言う通り、確かにそれは、修道院では手に入りにくいか。
いやいや、しかし、そんな事をすれば、『お菓子の聖女』と二つ名が付きそうで怖い。
本家本元のヒロインのミンティアは、『光の聖女』。方や私は『お菓子の聖女』。ギャグにしかならない。
「聖女印のお菓子……売れるね。良いじゃないか!
いや、ちゃんとした聖女の活動もやって貰うよ。でも、趣味は趣味として活動しても良いんじゃないかい?」
大修道女様は、舌なめずりをして喜んだ。大修道女と言うより、金の亡者っぽくなってますよ?大叔母様。
「女神様は、聖女と共にお茶会をするのがお好きですから、大変お喜びになります」
神聖国アルテアの聖女カーマイア様までが、大ノリ気になっている。
まあ、ヒロインのミンティアも手作りクッキーを攻略対象に作って配ってたしね。作るか、クッキー。
翌朝、朝のお勤めを終えた後に、私達は修道院の台所に潜り込んだ。
「急に言われましてもね。修道院ですから、特別な材料は、ございません。ですが、まあ……お茶用にクッキーを焼く位なら……大丈夫じゃないですかね」
最初は、渋っていた料理担当の修道女達も、大叔母様とカーマイア様、クレア、エルダのギンっと大きく見開いた目に恐れをなして、一歩下がって譲ってくれた。
朝ごはんの残りのピーナッツバターを見つけた。
「まあ、それ位なら使っても問題ありません」
蜂蜜を見つけた。
「今日、寄進で戴きました」
煎ったピーナッツも一袋。
「それは、私の晩酌用!」
大叔母様から、ピーナッツ一掴み、ご寄付戴いた。
「まあ、それ位なら問題ないか」
大叔母様は、鼻の頭をポリポリ搔きながら、溜め息を吐いた。
このゲームの世界、ヒロインの聖女がクッキーを作るからか、砂糖やバターは普通に流通してるので、ありがたい。
バターを柔らかくして(前世はレンチン500wで40秒~50秒)、泡立て器で混ぜる。
砂糖を3度に分けて加えては混ぜ、加えては混ぜる。白っぽくなるまで混ぜる。
卵黄4個を、1個ずつ入れては混ぜ、入れては混ぜて。
ハチミツ大さじ3杯、ピーナッツバター大さじ4杯、エルダが包丁で粗めに砕いたピーナッツを入れて、ふるった小麦粉半分入れて、泡立て器で混ぜる。
「はい、クレア味見」
「美味しいです」
残りの半分の小麦粉をふるって入れて、木べらで切るように混ぜる。
出来たクッキー種を、ティースプーンで1匙分すくって、もう1つのティースプーンで押し出す様にして種を天板に置く。
後は(前世なら180℃で余熱したオーブンで)15分焼く。
「エルダ、焼いてね」
お嬢様なので、こう言う時はエルダに任せる。残った卵の白身は……。
「いつものメレンゲを、夜に作っておきますね」
メレンゲは、寝る前に焼いて、朝まで窯の中の温度が下がるまで放置しておくのだ。エルダ、よろしく。丸投げされてくれて、ありがとう!
「このクッキーは、コーヒーに結構合うのよ」
前世、母の日にお金がなくて、コーヒーを飲みながらピーナッツを食べるのが好きな母の為に、その辺の物で作ったクッキー。
簡単な割に、美味しいのだ。
「へえ、コーヒー好きの私の為に作ってくれたのかい?感激だなあ」
振り向くと、ジョルジオ殿下とお兄様が、立っていた。
「毎日、修道院に公務で視察に行くって、言ったよね?」
台所に視察に来る王子は、居ないと思う……。
「そう言えば、今、思い出したけど。ゲームの設定資料に、ジョルジオ王子の好物は、コーヒーとピーナッツて書いてあった!」
「まあ、何の設定資料かは知らないが、確かに私は、コーヒーとピーナッツが好きだよ。私の為に作ってくれたんだね。ありがとう」
ジョルジオ王子の好感度が上がった!ぴろりろりーん!
クッキーの材料(約50枚分)
バター180g(普通の。塩分が入ってた方が美味しいので)
砂糖130g
薄力粉220g
卵黄4個
ピーナッツ一掴み(普通のおつまみ用の安いやつ)
ピーナッツバター大さじ4(擦り切れじゃなくて大丈夫)
ハチミツ大さじ3杯
ボール1つにどんどん入れて混ぜるので、夏休みに子供達と作るのにオススメです。実際に作る時は、天板にクッキングシートを敷いて下さい。




