付き人稼業は、大変忙しそうです
読みに来て下さって、ありがとうございます。
嬉し恥ずかし入学式です。
講堂の入り口で、アスカニオが悩んでいた。
「何故、私には身体が2つないのでしょうか」
あったら、ビックリよね。
「聖女様は、お二人なのに、付き人は1人とは」
いくら大神殿でも、学園に急遽1人突っ込むのが精一杯だったからなのでは?
大体、学園には既に余分に聖女を1人突っ込んでいるので、これ以上は難しいと思うわ。
この後、私はジョルジオ殿下と共に講堂の控え室へ行き、入学式での新入生の挨拶の準備をする。
けれども、ミンティアは一般新入生と同じ様に、講堂の席に着かなければならない。
「フフン。何を言うのかと思えば。アスカニオ、お前も一般新入生だぞ。ミンティアと共に席に着かねばならないだろう。
ここからは、私がマルガレーテをエスコートする」
複雑そうな顔をしながら、アスカニオはミンティアをエスコートしてお兄様やジョルジオ殿下の側近候補達と共に講堂に入って行った。
アスカニオには、朝から時折ニヤついているミンティアを是非とも見張っていて欲しい。
ゲーム内でも時折、妙な選択肢が現れる事があったけれど、前世日本人な中身のミンティアも、時折、妙な事をするから。お願いね~アスカニオ。
「やっと2人きりだな、マルガレーテ」
とニッコリ笑うジョルジオ殿下には申し訳ないけれど、学園側が殿下を1人にする訳はなく、皆が去ると同時に学園の警備員が2人サッと姿を現した。
同時に、にこやかなジョルジオ殿下の額に、イラっとしたのか青筋が一瞬立つ。
ホホホホホホホ。入学式のセレモニー前に第1王子と聖女に何かあったら、大変だもの。学園側も、警備員の1人や2人、付けておくわよね。
ジョルジオ殿下は小さな声で『ちっ』とか言っていたけれど、むしろ、どうして2人きりになれると思ったのやら。
控え室には、学園長や来賓がしっかり先に来ており、殿下と私は彼らからの挨拶や祝いの言葉で、ゆっくりする間もなく入学式に挑む事になった。
入学式は、滞りなく行われた。
ジョルジオ殿下が挨拶を始めようとした矢先に、突如、立ち上がって倒れた女生徒がいたり、私が挨拶をしようと前に出ると何処に隠し持っていたのか私の名前が書いてある推しうちわを取り出したミンティアを、極上の笑顔で私が押し止めたりは、したけれども。
何故かその時、ミンティアの近くの男子学生達がおののいたのは、私の事が怖かったのではなく、私の美貌におののいた事にしておこう。
後、ここぞとばかり、私の挨拶が終わると共に、女神様のサービスで光の花びらが天から舞い踊って私に降り頻り、講堂で感嘆の声が上がったのも、ご愛嬌よね。
ミンティアのあの団扇は後で没収しておこう。ろくでもない予感がするわ。
入学式が終わると、新入生は各教室へ移動して行った。講堂の壇上にいたジョルジオ殿下と私は、再び警備員達に囲まれて、皆より少し遅れて教室に入る事になった。
教室で、騒ぎが起きている事も知らずに。
「どうして、私が下位貴族や平民の隣に座らねばなりませんの!」
1人のご令嬢が騒いでいる。
その答え、席は成績順で決められているからである。
何事かと思って私が教室に慌てて入ろうとすると、ジョルジオ殿下に止められた。
ジョルジオ殿下は人差し指を自分の口に持っていくと「しっ」と言って私に喋らない様に指示をする。
ニヤリと笑ってそっと覗いている所を見ると、どうやら面白がっているみたいね。
「要注意人物をマークしておく、良い機会だ」
私の耳許で小さな声でジョルジオ殿下が囁く。耳にかかる息が擽ったく、恥ずかしい。
「顔が赤いよ?可愛いな。マルガレーテ」
ジョルジオ殿下が、たちまち上機嫌になった。
それは、ジョルジオ殿下のせいなので、放っておいて欲しい。
さて、廊下から見えるだけでも、ニヤニヤして騒ぐ令嬢と平民とアスカニオを眺める令息が3人、令嬢の側でクスクスと笑いながら扇で口を隠している令嬢が2人。
他に身体を小さくして固まっている何人かは、同じく下位貴族達かな。
「不敬にも程がありますね。ミンティア様は聖女です。貴女とは、別次元のお方です」
「嘘おっしゃい。聖女は、マルガレーテ様ですわ。確かに、もう1人聖女が現れたとお聞きしましたけれど、この女の様な平民である筈がないでしょう」
ミンティアと令嬢の間に立ったアスカニオが、憤慨して令嬢に言うけれど、令嬢は取り合わない。
そもそも、女神様が、平民だの貴族の階級だのを気にしているかどうか。私達は、貴族の代表と平民の代表として選ばれたわけでは、ないと思うし。
「いい加減にしないか。みっともない。ミンティア嬢は、確かに聖女だ」
「大体、学園の席順は、成績順になっているのを知らないのか。しかも、2人目の聖女の話もキチンと把握していない様では、上位貴族として情けない話だぞ」
セシオス様とハインリヒ様がアスカニオの横に立って援護をしだした。
「あら、もしそれが本当なら、平民の聖女様は男性方を侍らすとんでもない聖女様ですのね」
クスクスと笑っていた令嬢の内の1人が、もう1人と笑いながら嫌味ったらしく言い出す。
莫迦莫迦しい。
ここは、もう、私の出番でしょう。悪役令嬢未満だけれども、友人の為には、一肌脱ぐわよ!
私は、ササッとジョルジオ殿下の脇を通り抜けて、教室の中に躍り出た。
デデンっ!
「皆様、これは一体全体、何の騒ぎでしょうか」
皆は、私の声に驚いて、私の方に一斉に振り向いた。
ミンティアは、皆が私に注目しているのを良い事に、例の私の名前入り推しうちわをこっそり自分の前に抱き締めて、私に見せている。
さっさとそれを仕舞わないと、助けてやらないからねっ!
「一体全体、そのうちわをいつの間に作ったのよ」
「いいでしょ、いいでしょ」
「良くないっ!没収っ」
「きゃーっ!ご無体な~。ですが、無駄、無駄。これは、量産体制が組まれている聖女グッズの1つ」
「他に何を企んでるの、白状しなさいっ」
「い~や~ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ」
聖女グッズ販売で、大修道女と共に金儲けに走るミンティア。彼女の前世が気になります。




