悪役令嬢未満よ、思春期を侮ることなかれ
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回は、閑話みたいなモノです。
ジョルジオ殿下に抱き締められ、私は困っていた。
「ヤバい、鼻血出そう」
いやいや、止めて下さい~殿下!離れて、離れて。鼻血が出る前に離れないと、大惨事ですから。
綺麗な美少年が鼻血って……あ、ちょっと良いかも?
事の起こりは、婚約者同士のお茶会。午前中は、聖女のお勉強。軽くお昼ごはんを食べたなら、午後からは王城へ登城して王子妃教育を2時間、その後がお茶会となる。
「マルガレーテ!」
薔薇の咲き誇る庭園の東屋で待つ私に、いち早く駆け寄ったのは、お兄様だった。
色取り取りの薔薇の花をバックに駆けてくる濃い蜂蜜色の髪の美少年。ああ、何と言う定番の破壊力あるビジュアル。
「会いたかったよ。私のベターハーフ」
ええっと、ちょっと言い方に語弊が……いや、確かに双子なので、間違いじゃないんですが、ちょっとばかし意味が違うかと。
美少年に抱き着かれたら、ここはもう、抱き返すしかないでしょう。例えそれが、自分と同じ顔の美少年だとしても。
ちょっとばかし、ナルシスト気分。
うん、安心のお兄様の香り。
「狡いぞ。マーチン」
お兄様は、ベリっと私から剥がされ、私は腕を掴まれて遠心力でクルリと誰かの胸の中へと落ちていく。
おっとっと。
勢いで少し躓いてしまい、私はその人に倒れ込む羽目になってしまった。
むにゅっ
目の前に澄んだ空の様な青い瞳がある。
これは、紛れもなく事故チュー……。
私は、慌てて身体を離そうとしたが、ムリだった。
「え!?ちょっと待って。ちょっと待って。今のはノーカウント?いやいや、マルガレーテが私にキスを?
え?え?」
耳許で、声がした。息が私の首にかかって少し擽ったくて、身体が熱くなって妙な気分。
って、この声は、ジョルジオ殿下?
ジョルジオ殿下は、片方の手で私を抱いたまま、私から顔を背けて、もう片方で自分の口に手をやる。
珍しく、殿下の顔が赤い。
いや、多分、私の顔も赤いと思う。
やってしまった。やってしまったわ……。
「も、申し訳ありません」
だがしかし、悪いのは私じゃなくて、ジョルジオ殿下では?
とりあえず、お兄様に私から引っぺがされたジョルジオ殿下は、私の差し出したハンカチで鼻を押さえ、東屋の椅子に座った。
「すいません。殿下の鼻血は興奮状態による鼻血で、怪我と見なされない様なので治療出来ません」
「ジョルジオ殿下の場合は、自業自得だよね」
お兄様が、不機嫌なのを隠しもせずにジョルジオ殿下を睨む。
ジョルジオ殿下は、私の方をチラリと見ては、すぐに私から目を反らす。
「いや、何て言うか、確かにそうなんだけど。ああ、格好悪いよなぁ。
あそこで鼻血さえ出なければ……もう1回ちゃんとやり直せたかも?」
「何か言われましたかぁ?ジョルジオ殿下ぁ?」
ジロリと睨んだままで、お兄様はジョルジオ殿下を覗き込む。
小声で言っても、ちゃんと聞こえてますからね?殿下。
ああ、私のファーストキスが、ファーストキスが事故チューだなんて。
いや、でも、相手が婚約者のジョルジオ殿下だから、良かったと言えば良かったのかも。
「でもまぁ、ラッキーと言えばラッキーか?」
何だか、ジョルジオ殿下はハンカチの下でにや付いている様なので、放っておこう。
「まあ、腹の立つ事は、置いといて。
ジョルジオ殿下、マルガレーテに話があったんでしょう?」
「そうだった。あー、良し!多分、もう大丈夫だ。マルガレーテの顔が、直視出来る。
あ、いや、ちょっと待て。まだまだ無理かも。我ながら、情けない」
こちらを一瞬見た後に、またジョルジオ殿下は横を見てしまった。
やがて、意を決した様に佇まいを正し、視線をやや下に向けたまま、ジョルジオ殿下は私の方を向いた。
「先程、学園からAクラスの名簿が届いた。まあ、私の場合はクラスメイトを把握しておかないと、要注意人物もいて色々厄介だからな。
とにかく、マルガレーテも修道院に帰ればクラス分けの手紙が届いているだろうが、当然ながら私はAクラス。マルガレーテとマーチンも同じくAクラスだ」
「あの、ミンティアは、どうなりました?」
「あの忙しい短期間で良く頑張ったものだ。Aクラスに入れた。
その代わりに他の者をBクラスに1人落とすのは可哀想なので、席を余分に作ってくれるそうだ」
良かった~っ。
流石、ミンティア。
ミンティアは、チートで言語学は何とかなった。歴史も、生物学も、魔術も、このゲームの設定資料集を丸覚えしてたらしく楽勝。
「でも、流石に中学高校の数学なんて、丸っきり忘れちゃったわよっ!!」
と入学試験前に、喚きながら、ミンティアは必死で数学の公式を覚えていた。
「むしろ、孤児なのに他の科目がこんなに出来ているのにビックリしたね。女神様のご加護かね」
数学を教えながら、大叔母様は「これも奇跡かねぇ」と溢していた。
「奇跡だったら、数学の公式を1つでも思い出したいわよっ!」
涙目になりながら、ミンティアは、「前世の歴史年表は、ムダにしっかり覚えてるのに~」と小声で嘆きながら、次々と公式を解いていた。
まあ、私もミンティアをちょっとは見直したわ。あそこまでゲームにのめり込んでたのには、畏れ入った。役に立って、良かったわね~。本当に。
そして、いよいよ、学園生活が始まる。
「ジョルジオ殿下、その、今日はもうお茶会は止めておかれます?」
「嫌だ。格好悪くても、何でも、マルガレーテとの一時を逃したくない。
そうそう、入学式では、私も新入生代表として挨拶があるが、マルガレーテも聖女としての挨拶が、あるそうだよ」
「え!?……ゲームにはなかった」
「ん?2人で頑張ろうね」
いよいよ次回から学園生活篇です。ですが、他の攻略者は、どうなった?学園生活開始で、勿論、勢揃いですよ~( ≧∀≦)ノ




