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悪役令嬢予定だったので、修道院に駆け込みました  作者: Hatsuenya


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そのシーンのお相手は、こっちの聖女じゃありません

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 流石のマルガレーテも神聖力がすっからかんになりましたが、同じくミンティアも神聖力は余り残っていませんでした。





 目を開けると、ぼやっと光るヒロインがニンマリと笑っていた。気のせいか、効果音の音楽までが、何となくおどろおどろしく聞こえる。


 怖いんですけど。


 これは、ホラーゲーム……だったっけ?


「お目覚めですね、マルガレーテ様」


 ミンティアよ、その笑みは、ヒロインにあるまじき笑みだから止めた方が良いわよ。

 私の片手を両手で握り締めて、ミンティアは私に神聖力を分けてくれていたらしい。


「いやー、もう。魔猪のぼたん鍋、美味しかったですよ。お陰で、私の神聖力も満タンまで回復しました。ふふふふふ」


 舌なめずりをするヒロイン。止めてよ、ヒロインの清純なイメージが壊れるから。

 もう少し、何と言うか、ヒロインには、優しく『もう、大丈夫ですよ。マルガレーテ様』とか言って、にっこりとほんわかとしたオーラを出していただきたい。


「神聖力を使い過ぎて気を失ったヒロインを抱き抱え、優しい瞳で見つめる馬上のグレイザー様。まさにそれは、グレイザー様とヒロインの愛の1シーン。

 しっかりと目に焼き付けました。御馳走様です」


 え!?何それ、そんなシーンがあったの?見損ねちゃったじゃない。


「もちろん、この場合のヒロインは、マルガレーテ様ですけど」


 私で、どうする。ヒロインは、貴女。ミンティアでしょうが。ちゃんと、ヒロインのお仕事をして欲しいわね。


「グレイザーは、貴女の推しでしょうが。私とくっ付けてどうするのよ。自分がグレイザー様とくっ付きなさいよ。そして、私にミンティア&グレイザー様のシーンを堪能させなさいよ。

 じゃないと、私の浮気判定でジョルジオ殿下からの婚約破棄、私の破滅への一直線だわ」


 とんでもない、とんでもない。私はヒロインのミンティアじゃないのだから、逆ハーレムなんか出来ませんからね。

 折角、ミンティアもちゃんと聖女になったのだ。大人しくグレイザー様のルートに進めば良いのよ。ほれ、あっち行けシッシッ。


「え~っ。自分が攻略しちゃったら、ゲーム通りのスチルが見れないじゃない。つまらない」


「貴女と違って、私は一歩間違えたら、即、破滅なのよ。自分でやんなさい。自分で」


「ちぇっ。つまらないー。モブとかに生まれたら、こっそり繁みの陰からヒロインと攻略対象のラブラブシーンを見れたのに」


 どうやら、ミンティアはヒロインをやる気がないらしい。困ったもんだ。


 それにしても、いい匂い。お腹、空いたなぁ。どうやら、聖女の回復魔法や神聖力チャージでは、お腹は満たされないらしい。う、不便。


「おい、聖女ミンティア。マルガレーテは……マルガレーテ!大丈夫か」


 唐突にドアを開けて入って来たジョルジオ殿下は、何故か頭に三角巾を巻いてエプロンを着け、片手に器を持っている。


 美少年のエプロン姿……可愛すぎる。ジョルジオ殿下のこんな姿を拝めるとは、これは、女神様から私へのご褒美か。ゲームの特典映像にも、なかったわよ。


 ジョルジオ殿下の持つ器からの良い匂いは、私の嗅覚を刺激し、ググーッとその香りに私のお腹の虫が答えた。

 うっ、お恥ずかしい。公爵令嬢ともあろう者が、お腹を鳴らす等……いいえ、これは、きっと、幻聴、幻聴よね。


「余程、腹が減っていたのだな。マルガレーテ。ほら、君の分だ。

 残念ながら、旨かったぼたん鍋とやらは残っていないが、〆のうどんとやらを貰って来た所だ。消化にも良いそうだし、食べると良い。うどんとか言う麺は、マルガレーテのお付きの修道女のクレアに習って、私も作ったぞ。自信作だ。

 もっとも、ぼたん鍋の魔猪を捕ったのはマルガレーテなのに、皆でいただいてしまった。申し訳ない」


 ぼたん鍋、食べ損ねたか。残念。

 それでも、〆のジョルジオ殿下の自信作のうどんは、きっちりぼたん鍋の出汁が効いており、五臓六腑に沁みわたり、栄養が身体の中を駆け巡る。

 ああ、幸せ。


「残りの猪肉は、一部を干し肉の材料として村に下げ渡すが、それ以外の素材はギルドが買い取り、村の再建費用に充てられる。

 何しろ、出現したのが魔猪だったからな。この教会以外の家屋は、魔猪の突進に全て壊され、住める状態では、ないからな」


 クレアとエルダ、そして村の女達が、ぼたん鍋を作っている間に、手の空いている騎士達は村の男達と共に、壊れた家の瓦礫撤去をしていたらしい。

 使える家財道具は殆どなく、魔猪達に踏み荒らされていた。


「王城より、緊急の物資として毛布等の当座の必需品食料等は運び込むが、村人達は暫く教会に寝泊まりしながら、仮の小屋を建て、村の再建をする事になる。

 ここは王領だからな。こちらからも大工等の派遣はするが、村人達は畑も作り直して早々に種も蒔かねばならないだろう。大変な事だ。

 ほら、マルガレーテ。慌てるなよ。ゆっくり噛んで食べろ」


 ジョルジオ殿下は、そう言いながら、私の側に座ってフォークでうどんを掬ってフーフーしながら私に食べさせる。

 中々、優秀な王子っぽいけれど、意外と、おかん気質なのかも知れない。


 



「いや、コレはコレで、ご褒美スチルか」


「莫迦な事言ってないで、あんたもクレア達を手伝ってくれば?」


「いやー、実は、色々とやらかしまして。早々に戦力外通知を突き付けられました( ω-、)」


「まあ、経験不足の、王子である私よりも使えないからな。仕方あるまい」





 料理オンチのヒロイン、ミンティア。

 原作ゲームでは、手作りクッキーを攻略対象者に配っていた筈なんですが、中の人が違うだけで、今のところ残念なヒロインになってます。



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