悪役令嬢未満は、逃げない、逃がさない
読みに来て下さって、ありがとうございます。
前回に引き続き、今日は戦闘。マルガレーテ、ミンティアを引き連れて踏ん張ります。
出来るなら、逃げたい。
人が血を流しているのが、痛々しくて嫌だ。
弱っている人を見るのは、辛い。
だけれど、人を助けれるのに、助けないのは、もっと嫌だ!
女神様、女神様。魔獣に襲われた村人達に、ご加護を。
村を守って死すべき運命にある神父に力を。
そして、私に彼らを守るべき力を、お与え下さいっ!!
魔猪達が教会に向かって突進しているのが見えた。跳ねられ、食い荒らされた家畜達が至る所に落ちている。
魔兎位なら良かったのに。猪は、大きなモノだと物置小屋程の大きさがある。
奴らは、教会の周囲を囲む光の障壁に阻まれつつも、それを押し切ろうと踏ん張っていた。
女神様、ありがとうございます。
『マルガレーテちゃん。光の弓を作って、構えなさい』
「お馬さん、後は頼むわ。進路は、真っ直ぐお願いね」
この子なら、やってくれるだろう。
「ミンティア、体勢を低くして左に寄って、しっかり私にしがみ付きなさい」
後ろから、『ひいっ』とか何とか聞こえたけれど、知ったこっちゃない。1人で踏ん張れ、ヒロインでしょう?
私が左手の中に弓を思い描くと、それは光の弓になった。使いなれた弓だ。同じく右手に光で出来た矢をつがえ、猪達の上を目掛けて矢を放った。
『光の雨矢』
私の放った光の矢は、1本から無数に分散し、雨のごとく猪達に降り注いだ。
だが、大きな魔猪達は、倒れずに光の矢を身体に刺したまま教会への突進を止めない。教会の扉の前には、両手を前方に出して踏ん張っている神父様が見えた。
彼がおそらく、グレイザー様のプレストーリーで語られた神父様かな。
もうちょっと、頑張って下さいっ!
『ひ、光の網っ』
ミンティアが投げた光の玉は、魔猪の上で網となり、魔猪を地面に縫い付ける。
「えいっ!えいっ!」
魔猪1頭に付き、1つ投げなければならないので、地味に大変そうだ。
「もうっ!ゲームでもそうだったけど、私の光の力って、あんたみたいに大技がないから大変なのよ。あ、1つ外れた」
そう言えば、戦闘も料理もリズムゲームだったもんね。
「後は、我ら聖騎士にお任せ下され。聖女様方」
聖騎士達は、魔猪の側まで寄ると、馬から飛び降りて走り出した。
はい、後はお任せします~。
こっちは、魔猪がいない方から、こっそりと教会に行きますので。
馬から降りた私達は、馬のクツワを持って教会の裏側から障壁に近付こうとした。けれども、馬は私の手から離れ、踵を返して後方に駆け出す。小さいめの魔猪がヨロヨロと立ち上がり、私達目掛けて向かって来たのだ。
「ち、ちょっと。危ないわよっ!」
馬は、クルリと魔猪にお尻を見せると、魔猪に向かって後ろ足を上げて蹴り付けた。
お見事っ!
魔猪が飛んでいった。
お馬さんっ!?あんた、何者っ?とにかく、後は任せたっ!
私とミンティアは、光に身を包んで光の障壁に同調して障壁の中に入ると、神父の元へと急いだ。
血塗れで息も絶え絶えだった神父の代わりにミンティアが障壁を維持し、私はいつもの如く、ピカッ!パッパーンの光とファンファーレと共に一瞬で神父を治し横たえた。
体力温存。急に動くとフラッと来るので、休憩していて下さい。
続いて、教会の中に入ると、同じくピッカーン!パッパッパーン!!
眩しくて目が瞑れそうな光と共に、鼓膜が破れそうなファンファーレが鳴り響き、教会の中にいた村人達の怪我が、キレイに治った。
うーん。修行の成果か、これくらいだったら、もう倒れる事もない。素晴らしい。
最高。私、修行よく頑張った。偉い偉い。褒めてあげよう、私。
「せ、聖女様?」
うーん。誰も死んでない様で、良かった~。流石に、聖女も死者は蘇させれないもの。
呆気に取られている村人達に軽く手を振って扉を閉め、私は教会の外へと戻った。
魔猪達は討伐されたらしく、立ち上がって来そうになった魔猪が、あのお馬さんが振り上げた前足で、ドカッと思いっきり踏まれていた。
素晴らしい。後で、是非ともお名前を聞いておこう。お古の蹄鉄があったらいただいて、飾っておけば、多大なる幸運が舞い降りるに違いない。
それにしても、ああ!皆さん、そこそこ痛そうなんですがっ!?痛い、痛い。
もう、皆まとめて、ピカッとしちゃって、宜しいでしょうかっっ?
はいっ!ドドンと行きます。ピッカーン、パッパッパーン!
「うおうっ!相変わらず眩しいですな」
「お手数かけます。マルガレーテ様」
「ありがとうございます。マルガレーテ様」
いえいえ、オホホホ。もう、皆さんにお怪我があると、私の方が痛い気がしますので。ああ、もう、やだやだ。血塗れ、反対。
「マルガレーテ様とミンティア様の光魔法で、ほぼ魔猪達も壊滅していたので、こちらも大した戦闘もしなくて済みました。ありがとうございました」
聖騎士団長さんが、辺りを見回して、生きている魔猪がいないか、聖騎士達に確認させる。
「ところで、マルガレーテ様。魔猪は血塗れですが、その、マルガレーテ様、大丈夫ですか?」
「猪は、食糧なので」
私は、聖騎士団長さんに答えた。
「何、それ」
「いや、だって、お肉とかお魚の血を気にしてたら、ご飯を作れないでしょう?」
ミンティアが私を見て『はあっ?』という顔をしたけれど、だって、お肉はお肉でしょう?
「そんなモノですか?」
「そんなモノです」
私は、団長さんに答えた。私は、人が血を流して痛そうだったり、苦しんでいたりするのが嫌なのだ。見てて痛そうだし、苦しそうだし、自分もそうなっている気がするのだ。
それだけで、血自体は怖くない。
大体、女には月の触りがあるのだから。一々、血を怖がってはいられない。
「さて、今日の夜食は、ぼたん鍋!どなたか、魔猪の血抜きをお願いしますねっ!」
「マルガレーテ様ーーーっっっ!お待たせしましたっ。おおっ!今夜は、ご馳走ですねっ!こんな事もあろうかと、お野菜の山をお持ちしました」
「クレア、エルダ……あんた達は、王都の騎士団の先頭切ってるんじゃないわよ。荷馬車のクセに」
「おおっ、騎士団か。血抜きと解体、出来るやつは手伝えよ。それ位は手伝わないと、食いっぱぐれるぞ」
修道院で休んでいる少年に『出たのは、魔猪だ』と聞いたクレアとは、急いで修道院のありったけの鍋用野菜を荷馬車に積んで飛び乗りました。
「オホホホ、お嬢様聖女様の事だから、絶対にぼたん鍋よっ!」
「こんな事もあろうかと、包丁は常に研いでいます。バッチリですよ。クレアさん」




