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悪役令嬢予定だったので、修道院に駆け込みました  作者: Hatsuenya


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悪役令嬢未満の逃げる為の嗜み

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 いよいよ、聖騎士団の出陣です。



 聖女の朝は早い。いや、まだ太陽の姿さえ見えてない。


『おはよう、マルガレーテちゃん』


「おはようございます。女神様」


 訂正、朝早いのは女神様だ。


『朝早くにごめんなさい。あのね、修道院の側で、馬と行き倒れてる人がいるから、拾ってやって欲しいのよ~』


「それを早く言って下さいよ!大叔母様~!!えーい。皆の者、出合え、出合えっ!」


 緊急事態を報せるのって、これで良かったかしらね。


 私は慌ててベッドを出てブーツに足を突っ込みながら、毛布を身体に巻いて出陣した。


 まあ、あまり戦力にはならないけどね。




 案の定、私は戦力には、ならなかった。


 とは言え、私が羽織っていた毛布は役に立ってくれた。


 私の「出合え」の声と共に起きてきた聖騎士達と門番達を先導し、毛布をひっ被った私は、修道院の近くまで頑張って人を咥えて引っ張って来たらしい大きな馬を見つけた。

 馬には悪いけど、その人、引き摺られてズタボロじゃない?

 

 私が提供した毛布に包まれた人は未だ少年で、私が治癒魔法を彼に掛けた後、衛兵達に修道院に運び込まれた。馬は賢く、勝手にその後を付いていく。


 くしゅん、と小さくクシャミをした私に、グレイザー様が着ていた騎士服の上着を掛けてくれる。


「春とは言え、明け方は寒いですから。風邪を引かない様に、お気を付け下さい」


 そう言ったグレイザー様は、上半身裸だった。細マッチョから筋肉量が増えつつあるグレイザー様の身体は、見応えがあったけれど。

 どうして、上着以外着ていなかったのか。

 私に上着を着せてくれるのは紳士だが、自分が風邪を引くから止めて欲しい。


「上は裸で寝る主義なんですよ。前は、下着だけで寝てたんですが、今は緊急時に困るので、ズボンだけは履いて寝てます。それに風邪なんて引いたことないですから、俺は平気です」


 要らない情報が手に入った気がする。思わず、想像してしまったじゃない。

 オマケに後半は、何とやらは風邪を引かないと言うあれか?それとも、筋肉は風邪を引かないのか。



「もうすぐ春とは言え、朝はまだ冷えますから、温めたミルクをお召し上がり下さい」


 修道服に着替えた私に、エルダが私にミルクを手渡す。起きてきたミンティアが、同じく自分で入れたホットミルクを手に持って私の隣に座った。


「ズルくない?私も起こしてくれれば良かったのに。ああ、グレイザー様の筋肉。一目拝んで観たかった」


 『見たかった』じゃなくて『観たかった』になっている様に聞こえるのは、気のせいだろうか。ミンティアが起きてこなくて、グレイザー様には正解だったのかも知れない。


「マルガレーテ様、ミンティア様!大変です。すぐにご出立の準備を。あの少年の村で、魔獣が暴れているそうです」


 マーサ修道女が台所に駆け込んで来た。


 魔獣。このゲームにそんなフラグあったっけ?


 私とミンティアは女神様の加護の掛かった白い聖女服に着替え、マントを羽織って厩舎に駆け込んだ。


「マルガレーテ様、ミンティア様。馬車では間に合いません。馬に乗れますか?」


 聖騎士の鎧に身を包んだ副団長が、馬のクツワを取って言った。


「私は、大丈夫よ。ミンティアは……ムリですわよね」


「いや、むしろ、何故あんたが乗れるのか不思議なんだけど。公爵令嬢あるあるなの?」


「とんずらする為に習得したに、決まってますわ」


 まーったく、こんなに努力したのにジョルジオ殿下に捕まるなんて。本当に、努力の無駄。

 でも、違う意味で役には立ったわね。


「では、こちらの馬を。修道院の馬は、大修道女様が、王城への伝令の為に乗って行かれたので」


 流石、大叔母様。やる時は、やる女よね。あの巨体で馬を疾走させる姿は、見てみたかった。


「この馬は、先程の」


 少年を引き摺って来た馬よね。え?この子に乗るの?

 馬は、ヒヒンと頭を上に振り上げて偉そうに鳴いた。


「少年は、初めて馬に乗ったらしく、馬酔いが酷くて、修道院に辿り着く寸前に落ちたそうです。彼は置いていくしかありませんが、先程ご覧になった様にこの馬は賢く、少年曰く、村までの道案内が出来るそうです」


 いやいや、それは、賢すぎでは?


『心配ご無用。その子はちゃんと、道を知っているわよ~信用して乗ってあげてね』


 私が危ぶんでいると、女神様の声が聞こえた。


「女神様のお達しですわ。この馬がちゃんと道案内をしてくれるそうです。聖騎士の方々がいつでも闘える様に、私がミンティアとこの馬に乗ります」


 聖騎士団長の合図で、私は馬に乗り、皆の先頭を走った。

 出来るなら、この私の勇姿を離れて見てみたかった。馬は、今までに見た事がないくらい立派で力強い。そして、高々13歳になったばかりの小娘の私でも扱える程、この馬は賢い。いや、賢すぎる。


「きっと、こ、これ、グ、グレイザー様の、プレストーリーの一部、よ」


 私の背中にしがみつき、舌を噛み噛みミンティアが説明するには、この話はグレイザー様が聖騎士になるのを目指す切っ掛けらしい。


 王都から少し離れた所にある村の近くに魔素溜まりが出来、そこから出没した魔獣が、ある村を襲い、その村は壊滅してしまう。

 父親である近衛騎士団長の友人である、その村の神父も亡くなり、小さい頃に彼に遊んでもらった事のあるグレイザーも悲しみ、その様な悲劇を生まない様に、いつか聖騎士になろうと心に誓ったのだ。


 けれども、今は、ゲームの中とは違う。


 聖女が2人もいるのだ。


 聖騎士団が存在するのだ。


 やれる。私達なら、やれる。


 悲劇から村を救うのだ。





「おい、グレイザー。下着のシャツくらい着て寝ろ。それから、聖女様の前で、やたらと脱ぐな。みっともない」


「えーっ。セックスアピールですよ。いつか、第1王子殿下と別れたら、振り向いて貰えるかもしれませんから。聖女様次第なんですよね?」


「まあ、それはそうだが。お前、筋肉量が少ないからな。ほれ、せめて私位じゃないとな。ホレ、ホレ」


「おう、筋肉自慢か?おらっ、おりゃっ」


「私のも、見てくれ」


「おう、楽しそうだな。おれも混ぜろ」





 何故かいつでも何処でも、筋肉自慢になってしまう聖騎士団。これは、騎士団でも、近衛騎士団でも同じ様です。

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