聖女だなんて、聞いてない
読みに来て下さって、ありがとうございます。
とりあえず、一挙に2話、書いてみました。
王子ジョルジオ side
今日は、私の婚約者となる令嬢を見定める日だ。
「まあ、一種の品評会みたいなモノですね。デビュタントの令嬢が1人ずつ出てきますから、じっくり御覧になって、良さげなのが居ないかどうか、物色して下さい」
同い歳の幼馴染みで側近のマーチンが言い放つ。
相変わらず、口が悪い。こいつに掛かると、着飾った令嬢も牛か馬の様な扱いだ。訂正、乗馬の好きなこいつの事だ、馬についての方が多くを語るに違いない。
「まあ、私にとっては、妹のマルガレーテ以外は、皆、十把一絡げ。髪や瞳の色が違うだけの存在なので。
何れを選ばれても、問題ないと思います。
あ、妹は選ばないで下さいね」
選んでやろうか、お前の妹を。
私にとっても、どの令嬢も十把一絡げだから。賢いと言われている令嬢のリストは頭の中に入っている。その中のどの令嬢でも問題は、ないしな。
「良いですか、例え、何れだけマルガレーテが美しいと言われても、妹だけは、譲れません」
かくして、私の誕生日会が始まった。
国王陛下である父、王妃である母、そして私の目の前に現れ、次々と白いドレスを着た令嬢達が挨拶をし、ドレスの裾を翻して広間の中央に戻って行く。
確かに十把一絡げ。記憶に残るのは、名前と髪の色と瞳の色。美しい令嬢達も私も、この春から学園に通う13歳。学園に通ってからならまだしも、今、ここで選べと言われても、どんな令嬢なのかは、噂でしかわからない。
男爵令嬢から始まって、次が最後の大トリ、我が国唯一の公爵令嬢……マーチンの双子の妹だな。
彼女は、私の記憶に最も残る様に、最後に紹介される事になる。
要は、これを選べと、周囲からの重圧が掛かっていると言う事だ。確かに、マーチンを見るからに、彼に似ていれば、美しく、賢いに違いないだろう。
「マルガレーテ・カンタルナ公爵令嬢」
名が呼ばれると共に開いた広間の中央扉から、光が差し込み、少女が入ってきた。
いくらなんでも、演出し過ぎだろう?
「聖女マルガレーテ様です!」
ちょっと待て!
聖女!?
「聖女マルガレーテは、昨日、女神から加護を戴いた。今日のパーティーは、急遽、その御披露目も兼ねる事となった」
立ち上がった父上の言葉が会場に響き渡る。
これは、もう、私の誕生会も、令嬢達のデビュタントも、全部が全部、霞むだろう!?
美しい蜂蜜色の髪がたなびき、ピンクの瞳がキラキラと輝く聖女マルガレーテ。デビュタントの白いドレスの上に、聖女の印の付いた同じく白のオーバードレスが重ねられている。
そして、聖女の後ろに貫禄たっぷりの大修道女と睨みを効かせた聖騎士団長が続く。
父上と母上が壇上の椅子から降りて聖女の前に行く。私も慌てて下に降りた。
こう言う事は、予め、言っておいて欲しい。本当に、勘弁して欲しい。
何しろ、聖女マルガレーテは、今までに見た中で一番綺麗な女の子なのだから。
そして、その一挙一動が、一々、私の心に刺さった。
カーテシーをするマルガレーテ。優雅だ。
顔を上げるマルガレーテ。美しい。
潤んだ目で私を見つめるマルガレーテ。怯えているのか?全てから守ってみせるとも。
艶々とした薄紅色の唇を少し開けるマルガレーテ。その唇で、私の名を呼んで欲しい。
思わず私は、彼女の手を取り、彼女の前に跪き、指先に口付けを落とした。
「結婚して欲しい」
「はあぁ!?」
シンと静まり返った会場に何故か光の花びらが舞う中、マルガレーテの声が響いた。
え?何か間違ったか?
「殿下!私は、妹を選ばないで下さいって言いましたよね?」
「え?あれは、是非とも選んで欲しいというフラグだろ?」
「心からの拒否ですよ!」
「ほら、『押すなよ、押すなよ、絶対押すなよ』で、本当は押して欲しいヤツ」
「はあぁ!?何、言ってるんですか!?」
「ああ、その『はあぁ!?』ってやつ、マルガレーテとそっくりだなぁ。はあぁ」
「私にハート飛ばして、どうするんですか……」
マルガレーテの双子の兄、マーチン・カンタルナ。マルガレーテに似ていますが、マルガレーテより色素は濃いめ。濃い蜂蜜色の髪に濃いピンクの瞳が売りです。




