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悪役令嬢予定だったので、修道院に駆け込みました  作者: Hatsuenya


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悪役令嬢未満、修道院に駆け込む

 転生したものの、悪役令嬢になりたくない主人公の逃げの一手のお話です。


 もちろん、違う意味で逃げれません!


 不定期更新のコメディですので、心を空っぽにして、軽い気持ちでお読み下さい。


 

 神様、仏様……違った、女神様!


 悪役令嬢は、嫌です。


 処刑は、嫌です。


 極寒の地の修道院も、嫌です。


 どうか、ここに置いて下さい!


「おおっ!」


 人々のどよめきが、修道院の祈りの場に木霊する。


「聖女様!……聖女様が現れなさいましたっ!」


 おおっ!聖女様!!


 何処?何処?


「光に包まれる御姿の、何と神々しい事か」


 慌てて私が目を開けると、眩しくて、もう一度目を閉じるしかなかった。ゲームの中で見ただけの聖女顕現の姿を、一目見たかったのに。


「大修道女様!カンタルナ公爵令嬢が、女神様に聖女様として選ばれました!」


 カンタルナ公爵令嬢……それは、私。


 いや、私が聖女で、どうする。


 眩しい光が薄れた後に私が最初に見たのは、『何でやねん』と言う顔をした大修道女である私の大叔母様だった。


 知らんがな。

 


----------



 目が覚めたら、空前絶後の美少女になっていた。大きな鏡に映る私の姿は、髪の色は柔らかな蜂蜜色のフワフワの髪。瞳はピンクで、まるでお人形の様に可憐な姿。


「お嬢様!どうなされたのですか!?」


 メイド服の女の子が、悲鳴と共に駆け寄って来る。


「頬が赤くなってます!お医者さんをすぐに呼びますから!」


 私の顔を見るや、メイドさんは慌てて部屋の外へ出て行った。慌ただしい夢よね。


 最近は仕事に忙しくて、夢を見ないくらい疲れていたので、今までの分、豪勢な夢を見るな~と思っていた。

 駅の階段で誰かにぶつかられて、階段から落ちたのは覚えてるんだけど、後は、どうなった事やら。


 目覚めた所はフカフカの大きなベッド、部屋は豪勢で、まるでテレビで見た何とか宮殿の部屋の様。

 ドッキリ番組の撮影か?いやいや、撮影で美少女になれるわけがない。

 頬っぺたをピーっと引っ張ってみると、伸びる伸びる。そして、痛い。頬が赤くなってしまった。

 そして、入ってきたメイドさんにビックリされた訳だ。


 ああ、頬っぺた痛い。


 暫くして、入ってきたお医者さんに診察されたけれど、私は至って健康らしい。


「さて、少々、心が沈んでいなさる様ですが、御病気では、ありませんな。頬の腫れは、どうなされました?」


「……すいません。寝惚けてて、自分で頬を思いっきり引っ張ってしまいました」


 眼鏡を掛けた優しげなお医者さんのおじさんは、ブフッと思わず吹き出したけれど、慌てて真顔に戻った。

 いや、お恥ずかしいお話です。お騒がせして、すいません。


 さて、冷却魔法が得意だと言う(ジュースを冷やすのに便利らしい)メイドのエルダの手で頬を冷やされながら、私は頭の中の整理をした。


 私の名前は、マルガレーテ。カンタルナ公爵の長女で12歳。父母健在。兄が1人。

 はい、ここまでは、宜しい。


 問題は、この名前は私が毎日ちょこちょこしていた乙女ゲームの悪役令嬢だと言う事。


 兄の名前はマーチン・カンタルナで攻略対象者の1人と同姓同名だし、兄の幼馴染みの第一王子もマルガレーテの記憶からいくとジョルジオ王子だし、多分、間違いない。


 そして、マルガレーテはジョルジオ王子の婚約者になり、ジョルジオ王子の想い人の聖女ミンティアに嫉妬し虐め倒して、聖女殺人未遂で処刑されるのだ。

 ジョルジオ王子のルートでは。


 因みにミンティアが兄のマーチンや他の攻略者を選んだ場合は、ちょっとした嫌がらせ程度しかしないので、極寒の地の修道院行きである。

 え、私、寒いの嫌いだし。冬は出来るなら仕事に行かないで冬眠したい派だし。


 処刑は嫌だし、前世庶民でスローライフしたい派の私としては、修道院行きは苦にならないけど、どうせ修道院に行くなら、寒くなくって、もうちょっと楽な所で暮らしたい。


 4つしかない公爵家で、唯一の令嬢の私。ゲーム通りなら明日の王子の誕生日パーティーで私はデビュタントし、婚約者に選ばれる筈。

 パーティーに不参加は許されないらしいけど、今なら、運命を選べるんじゃない?


「よひ!ひめちゃわ!」


 よし!決めたわ!


「お嬢様、もうちょっとですから、大人しくしていて下さいまし」


 考えに考えた末、腫れた頬のまま私は大叔母のいる修道院に駆け込む事にしたのだった。


 善は急げ、時は金なり、思い立ったが吉日よ!


 そうして私は、聖女になった。


 何でやねん。






「いきなりやって来たと思ったら、何をしでかすやら」


「大叔母様。私のせいでは、ありません」


「どの口が、そう言うの」


「大叔母様、頬っぺた引っ張らないで。痛い、痛い」


『え~、でも、せっかく聖女になってくれたんだし。お仕事、頑張ってね~』


「そうですね。女神様。せっかくだから、こき使いましょう」


「聖女になりたいにゃんて、言ってないれふ~

( ;∀;)」





 逃げ切れるなら、逃げたい聖女のお話です。

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