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状況把握が早すぎる元自衛官令嬢、婚約破棄を片付けたら皇太子殿下に執着されました  作者: S@Y@


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第70話:新兵、初の匍匐前進。……殿下、我が子のハイハイを「歴史的な進軍」と称して閲兵式を執り行うのは規律違反です!


「状況把握、開始。時刻は午後三時。出産から数ヶ月。私は今、王宮の私室の絨毯の上で、未確認新兵(我が子)が記念すべき人生初の『ハイハイ』に成功した瞬間を目撃している。……のだけれど、私の隣で、国を統べるはずの天才皇太子が『おおお……!』と見たこともないほどの感涙を流し、その場で崩れ落ちているわ。状況、我が子の数センチの前進により、国家最高頭脳が秒で機能停止ね」


生まれてきた我が子は、ルファード殿下にそっくりな美しい紫の瞳を持った、天使のように愛くるしい男の子だ。


日々ミリタリースペック並みの速度で成長する我が新兵だが、今日、ついにその四肢を使って床を蹴り、自力での移動作戦ハイハイを敢行したのだ。

「あうー!」と声を上げながら、数センチだけ前へ進んだ我が子。ただそれだけのことなのに、ルファード殿下の脳内戦術マップは完全に狂喜乱舞のインフレを起こしていた。


「見たかいアルティナ……っ! 今、この子は確かに自らの意志で大地を統治ハイハイした! あの完璧な重心移動、そしてクッションを回避する戦術的判断力……! 間違いなく、歴史に名をもたらす天才将軍の片鱗スペックだ! 今すぐ第一騎士団を総動員し、この偉大なる初進軍を祝う大閲兵式に挙行せねば……っ!」


「で、殿下! 赤ちゃんのハイハイを軍事パレードに格上げするのを即座に停止してください! あと、感動のあまり私の腰を至近距離からホールド(ハグ)してくるのは、恥ずかし死にの規律違反です……っ!」


私が真っ赤な顔で抗議するものの、殿下は我が子を優しく抱き上げると、そのまま私をも逞しい腕の中に閉じ込め、耳元で熱く、愛おしそうに囁いてきた。


「冗談だよ、パレードはパージ(中止)する。だが、お前に似てこんなに勇敢に前へ進むんだ、俺の独占欲の全戦線が、この幸せな光景だけで秒で武装解除されてしまうよ。……ありがとう、アルティナ。俺をこんなに狂わせる可愛い天使たち(妻と子)を、俺は一生をかけて、過保護の塊となって防衛(溺愛)してみせるからね」


「ん、む……殿下、パパになってからデレ度のインフレが天井知らずです……っ」


いつもなら冷徹にハメ手を仕掛けてくる肉食獣上司が、今はただ、溢れんばかりの親バカな愛情で私たちを壊れ物のようにつつみ込んでくれている。


その時、部屋の扉の隙間から「ウオオオ……御子が歩まれた……いや、這われた……っ!」という、押し殺した男泣きの咆哮が響いてきた。

窓の外をレーダー検知(目視)すると、案の定、最高機密ハイハイを聞きつけたキリアン団長率いる第一騎士団の面々が、赤ちゃんの進軍を祝して『完全消音サイレントの高速祝いスクワット』を、血の涙を流しながら大挙して執行していた。


(……うん、状況把握。我が家の超小型新兵は、わずか数センチ動いただけで、この国の最高権力者と最強の騎士団を一瞬で完全掌握する『最強のチート能力』を発動しているわね。状況、私の静かなスローライフ計画は、この子の成長に伴うドタバタ包囲網によって、今後も永久に侵略され続ける確定ルートだわ)


私は、夫の甘すぎる抱擁と、腕の中で無邪気に笑う我が子の紫の瞳に挟まれながら、世界で一番騒がしくて愛おしい「育児戦線しあわせ」に、嬉しさと気恥ずかしさでふにゃふにゃに溶かされていくのだった。


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