第59話:最前線の絶対防衛圏。……殿下、「生存確認」を名目にしたこの濃厚すぎる実技演習は、私のHPを確実に削りにきています!
「……っ、状況把握、開始。時刻は午後三時。単独出張、四日目の午後。私は今、宿の最上階の特室で、衣服をすべてパージ(解除)された状態で夫に組み敷かれている。至近距離の紫の瞳は、これまでにないほど余裕ゼロの独占欲(カンスト状態)。状況、国境の宿の一室が、瞬時にして最も過酷で激しい戦場(ベッドの上)へと変貌したわね」
キリアンを「お前は外の警備を百倍にして突っ立っていろ!」と職権乱用で部屋から叩き出したルファード殿下は、ドアに厳重な魔導結界をかけた瞬間、私をベッドへと押し倒した。
いつもなら15手先を読んで妖艶に微笑む天才皇太子が、今はただ、失う恐怖に怯える一人の男として、荒い呼吸のまま私の身体を貪るように抱きしめている。
「アルティナ……アルティナ……っ! お前の白い肌に、あの男の刃が触れたかもしれないと思っただけで、俺の胸が引き裂かれて狂ってしまいそうだった……! 頼むから、俺の目の届かないところで勝手に死線(危険)に立たないでくれ……っ!」
「で、殿下……状況把握を……っ! 私は元自……いえ、ただの頑丈な令嬢ですから、かすり傷一つありません! ですから、そんなに焦燥感全開で、私の鎖骨や首筋に深いマーキング(噛み痕)を刻みつけるのはやめてください……っ!」
私が真っ赤な顔で抗議しようとするが、殿下はそれを強引な口づけによって完全にシャットダウン(制圧)した。
「んむ……っ!? ん、んぅ……ふぁ……」
いつもより強引で、熱く、そしてどこまでも濃厚な舌の侵略。
一瞬で頭の芯がとろかされ、私の高性能レーダー(心臓)は最大戦速(大バクバク)のメーターを秒で焼き切る。
衣服のなくなった肌と肌がぴったりと密着し、殿下のバクバクと激しく波打つ心音が、私の背中に直接伝わってくる。本当に、私を失うのが怖くて堪らなかったのだという本気の愛の重さが、快感と共に身体の奥深くまで染み渡っていく。
「アルティナ……、俺の愛をその身体の隅々まで注ぎ込んで、恐怖を上書きさせてくれ。……今夜は朝が来るまで、絶対に離さないからね」
「あ、ふゃ……っ、で、殿下、待って……っ、ん、あああ……っ!!」
そこからは、文字通り手加減なしのフルインフレ総攻撃(無制限一本勝負)だった。
物理的な距離を爆走して縮めてきた夫の執着は凄まじく、何度も何度もシーツの海へと溺れさせられ、私の防衛体力(HP)は一瞬でマイナス域へと叩き落とされる。けれど、その激しい抱擁の中に宿る底なしの優しさと溺愛に、私はただ声をあげて降伏するしかなかった。
(おのれ肉食獣上司ーーー!! 生存確認だからって、私を完全に溶かし尽くしてベッドから一歩も動けなくするハメ手(監禁)を使うのをやめてくださいーーー!?)
結局、殿下の「一ヶ月分の待て」を強いられた反動による超高負荷な夜間残業は、本当に次の日の朝まで一切の休憩なしで支給され続けるのだった。
――しかし。
このまま「お持ち帰りルート(王宮への強制送還)」に甘んじるほどサボり魔のプライド(自衛官の意地)を捨ててはいない。
「……ふぅ。状況把握、完了。時刻は翌朝の午前九時。殿下、極上の実技演習(夜の部)は満期終了です。……これより、私は皇太子妃としての『任務(公務)』を最大戦速で再開・遂行します……っ!」
私はガタガタと震える腰に鞭を打ち、寝ている夫の顔面に枕を叩きつけると、次の目的地である「国境の交易都市」への出撃(公務再開)を涙目で宣言するのだった。




