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状況把握が早すぎる元自衛官令嬢、婚約破棄を片付けたら皇太子殿下に執着されました  作者: S@Y@


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第53話:いざ単独出張へ出発!……殿下、馬車の車輪にしがみついて涙目を浮かべるのは皇太子の規律違反ですよ!?


「……はぁ。状況把握、開始。時刻は午前八時。新婚十五日目の朝。私は今、出張用の豪華な馬車に乗り込み、いざ出発の時を迎えている。……のだけれど、私のドレスの裾をガッチリと掴んだまま、地面に膝をついて離れようとしない夫が一名。状況、国家の威信を揺るがすレベルの駄々(引き止め)ね」


昨夜のルファード殿下の総攻撃は、まさに文字通りの焦土作戦(搾り取り)だった。

「一ヶ月も会えない」という焦燥感に駆られた肉食獣上司は、私の防衛体力を何度も限界突破させ、お陰で私の下半身は現在、前世の過酷な山岳行軍の翌朝ばりにガタガタ(大破状態)である。


それなのに、いざ出発の門前に来れば、シルクの公務服を美しく纏った天才皇太子が、宝石のような紫の瞳をうるうるさせながら私のドレスを掴んで離さないのだ。


「アルティナ……本当に本当に行ってしまうのかい? 今ならまだ遅くない、国王陛下に『皇太子妃、急な体調不良(重度の夜の疲労)』と報告して、このまま寝室へ戦略的後退(監禁ルート)を――」


「殿下、状況把握を……っ! 王宮の門前で近衛兵たちが全員見ています! これ以上の職権乱用は、我が国の軍事規律メンツに関わりますので、今すぐその手を離脱パージしてください!」


私が真っ赤な顔で、馬車の窓から身を乗り出して夫の手をパシパシと叩く。

そこへ、愛馬の手綱を握り締めたキリアン団長が、これ以上ないほどビシッと凛々しい敬礼を捧げながら割り込んできた。灰色の瞳には、私への「狂信的なリスペクト(ガチ惚れ)」がギラギラと輝いている。


「ルファード殿下、見苦しい引き止めはそこまでです! アルティナ様の御身は、このキリアンが命に代えてもお護りいたします。一ヶ月後、髪の毛一本の乱れもなくお返ししますので、殿下は大人しく居残り公務(お留守番)に励んでください!」


「キリアン……。お前がアルティナの半径一メートル以内に近付いた瞬間、お前の背後の影に潜む我が直属の暗部スパイ百名が、一斉にお前の頭上に物理的制裁を支給する契約になっているからな」


「望むところです! 私はどんな包囲網(暗部)に囲まれようとも、アルティナ様の『一番槍(盾)』としての任務を全うするのみ!」


バチバチと朝の眩しい太陽の下で視線を激突させる二人の男。


(……うん、状況把握開始。キリアンの馬の周囲、および私の馬車の屋根の上。明らかに鳥のフリをしてカモフラージュしているけれど、殺気ミリタリースペックを隠しきれていない黒尽くめの暗部たちが、本当にワラワラとスタンバイしているわね。状況、やっぱりお出かけ先でも24時間体制のインフレ監視ルートが確定だわ)


頭が良すぎる私は、この一ヶ月の出張が「殿下の溺愛から逃れるサボり旅」ではなく、「嫉妬の暗部と狂信的騎士に挟まれた超過酷な強行軍」になることを秒で看破し、盛大にため息をついた。


「状況把握、完了しました! 御者、最大戦速で馬車を発車させてください! ――殿下、一ヶ月後に異常なしで帰還しますので、大人しく待っていてくださいね……っ!」


私が涙目で叫びながら、殿下の手を力技でパージ(解除)すると、馬車はガタゴトと音を立てて王宮の門を飛び出した。

バックミラー(窓の外)を見れば、全力で馬車を追いかけようとして近衛文官たちに必死に組み伏せられているルファード殿下と、その横を「ハハハ!」と高笑いしながら並走するキリアンの姿。


(とにかく、まずは最初の目的地(宿泊地)まで、このガタガタの身体(筋肉痛)を馬車のシートでサボりチャージするわよーーー!!)


こうして、新婚二週間目の締めくくりは、愛が重すぎる夫の涙目のお見送りと、忠誠心がバグった側近の同行による、波乱万丈の「一ヶ月単独出張(サボり旅)」の幕を開けるのだった。元自衛官令嬢アルティナの、ものぐさスローライフへの戦線は、王宮を飛び出し、新たな地方の戦場へと移動していく。


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