第49話:嫉妬の皇太子は余裕ゼロ。……殿下、側近の方の規律違反を、なぜ私がベッドの上で清算させられているのですか!?
「……っ、状況把握、開始。時刻は午後八時。新婚十三日目の夜。私は今、引き裂かれたドレスの上から殿下の軍服マントを着せられたまま、ベッドのド真ん中で夫に完全ホールドされている。至近距離の紫の瞳は、昼間の嫉妬がまだ冷めやらぬ狂おしい熱量。状況、過去最大の戦闘不能ルートね」
演習場からお持ち帰り拉致されて数時間。ルファード殿下は私をベッドに下ろした瞬間から、文字通り指一本分すら私を自分の腕の中から解放してくれなかった。
いつもなら「俺の可愛い王妃(※皇太子妃)様?」と意地悪く微笑んで15手先から外堀を埋めてくる天才が、今夜はまるで獲物を奪われかけた本物の肉食獣だ。シャツのボタンすら乱暴に外した姿で、私の首筋や鎖骨に、これでもかと深い熱い口づけを刻みつけていく。
「アルティナ……アルティナ……っ。キリアンの奴め、お前をあんな目で見るなんて万死に値する。お前のあの美しくて苛烈な戦術機動(一本背負い)は、俺だけの特権(ご褒美)だったはずなのに……!」
「で、殿下……状況把握を……っ! キリアン団長の誓いは、ただの軍人としてのリスペクト(職務上のバックアップ)です! なぜその清算として、私がこの高負荷な実技演習(激しい夜の部)を無制限に発注されなければならないのですか……っ!」
私が真っ赤な顔で、殿下の逞しい胸板を両手で押し返そうとする。
しかし、ルファード殿下はその両手首を優しく、けれど絶対に解けない力強さでシーツへと縫い付け、私を完全に圧し伏せた。見上げるその顔は、独占欲と飢餓感で宝石のような紫の瞳をらんらんと輝かせている。
「軍人としてのリスペクトだろうと、他の男がお前に魂を奪われるなど、俺の理性が許さない(作戦計画の完全破綻だ)。……アルティナ、お前は俺だけの奥様だ。今夜は、その体に他の男の記憶が残る隙間なんて一ミリも無くなるくらい、俺の愛で徹底的に満たしてあげるからね」
「んむ……っ、ん、ふゃ……っ」
抗議の声を上げる唇は、すぐさま嫉妬に狂った夫の、これまでで最も激しく、深く、そして強引な唇によって完全に塞がれた。
嫉妬モードがカンストした夫の「愛情の倍返し総攻撃」は、まさに容赦のない無制限一本勝負。私がどれだけ元自衛官としての防衛体力を誇ろうとも、至近距離から注がれる本気の男の色気と熱量の前には一瞬で全戦線がとろけ去ってしまう。
(おのれ肉食獣上司ーーー!! 側近が優秀すぎた反動を、全部私のベッド残業(インフレ回収)で処理するのをやめてくださいーーー!?)
頭が良すぎる私は、この愛が重すぎる夫が、今夜だけでなく明日も明後日も、キリアンの謹慎が解けるまで私をベッドに監禁し続ける未来(ハメ手)を秒で看破し、心地よい快感の中で涙目になるのだった。
こうして、新婚十三日目の夜は、嫉妬に狂った皇太子殿下の「野生全開・独占マーキング総攻撃」によって、朝が来るのが絶望的になるまで何度も全面降伏を迎えるのだった。私のものぐさスローライフへの戦線は、夫の底なしの溺愛によって、今夜もベッドの上で跡形もなく溶かされていく。




