↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
状況把握が早すぎる元自衛官令嬢、婚約破棄を片付けたら皇太子殿下に執着されました  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/75

第20話:約束の戦術的睡眠。……だから、なぜ寝ている私の横にパジャマ姿で滑り込んでくるんですか?


「……ふぅ。状況把握、完了。ここは遮音性抜群の壁、最高級の遮光カーテン、そして私のために用意された特注のマシュマロベッド。完璧な『絶対防衛睡眠エリア』ね」


 カイゼル侯爵の不正会計書類を予告通り30分で全スキャンし、すべての膿を暴き立てた私。

 午後からは約束通り、王都郊外にある温泉付き別荘の極上寝室へと戦略的撤退(ガチ引きこもり)を果たしていた。


 文官の仕事を最速で片付けたのは、すべてこの瞬間のため。

 シルクのパジャマに身を包み、ふかふかの羽毛布団に潜り込んだ瞬間、あまりの心地よさに脳がとろけそうになる。前世のコンクリート床での仮眠に比べれば、ここは文字通りの楽園だ。


「よし……今日こそ一日十六時間睡眠を達成する。定時まで、いや明日まで状況終了!」


 私は幸せを噛み締めながら、泥のような深い眠りへと意識を沈めていった。


 ――数時間後。


 心地よい睡眠の海の底から、私のプロ仕様の『危機管理レーダー』が、わずかな不審な熱源を感知して作動した。

 カサリ、と羽毛布団がめくられ、私の背後に滑り込んできた、ずっしりとした強大な『質量』と、男物の熱い体温。


(……はぁ、状況把握開始。現在、夕方の午後五時。ルファード殿下、夕方に寝顔を見に行くと予告していたけれど、見るだけじゃなくて自分もシルクのパジャマ(お揃い)に着替えてベッドに完全侵入してるじゃん。状況、極めてイエローカード(不法侵入)よ)


 私のカンストした状況把握能力が、至近距離から注がれる狂おしいほどの熱視線を秒でスキャンした。

 私は完全に背後からホールドされ、殿下の長い腕が私の腰をがっちりとロックしている。


「起きてしまったかい、アルティナ。起こすつもりはなかったのだけれど……君の寝顔が可愛いすぎて、つい我慢できなくてね」


 耳元で囁かれた、ずるいほどに甘く低い声。

 振り返ると、お風呂上がりなのか、少し濡れた金髪を無造作に下ろしたルファード殿下が、宝石のような紫の瞳を至近距離で細めていた。


「で、殿下……。状況把握を。契約では『寝顔を見に来るだけ』のはずですが。なぜ同じベッドで一緒に添い寝(残業)を執行しているのですか。速やかに戦術的撤退をお願いします」


 私がパジャマの袖で顔を隠しながら抗議すると、殿下は私の手首を優しく掴み、その手の甲にそっと唇を寄せた。


「君が有能すぎて、カイゼルが『明日からも彼女を事務方に貸してくれ』と泣きついてきてね。大事な俺のフィアンセが他の男に酷使されると思うと、嫉妬で夜も眠れそうにない。だから、今のうちにここで君の『糖分(愛)』を補給させてもらおうと思ってね」


(おのれ眼鏡文官、余計な残業の火種を残していきやがって……! そして殿下、嫉妬のエネルギーを私の睡眠時間を削る方向に使わないでください!)


 至近距離で見る殿下の美貌は、どんな暗殺者の刃よりも破壊力が高く、私の心拍数は完全に最大戦速(大バクバク)を記録していた。

 状況把握が早すぎるせいで、殿下が冗談ではなく、本気で私を愛おしそうに見つめていることが分かってしまうのが、本当に心臓に悪い。


「ほら、アルティナ。大人しく俺の胸の中で二度寝をするか、それとも……このまま朝まで、俺に熱烈な求婚(寝かせない攻防戦)をされるか、どちらがいい?」


 意地悪く、けれど底なしの独占欲を孕んで微笑む上司。


「……状況把握、完了。殿下、腕枕の角度をあと5度下げてください。それなら、明日の朝まで抱き枕として機能することを許可(妥協)します」


「フッ、本当に交渉が上手な俺の王妃殿下だ。おやすみ、アルティナ」


 殿下の胸の中に深く抱き込まれ、悔しいけれどその心地よい体温に包まれながら、私は再び深い眠りへと落ちていくのだった。私のものぐさスローライフは、この愛の重すぎる皇太子に甘やかされるという、最も贅沢な形で侵食され続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。