第九十七章『独占したい気持ち』
朝焼けの廊下。
皇宮はまだ静かだった。
ノクスはガブリエラの手を引きながら、
ゆっくり歩いている。
離す気が全くない。
ガブリエラは少し照れながら言った。
「……もう部屋近いよ?」
「知ってる」
「じゃあそろそろ」
「嫌」
即答だった。
ガブリエラは困ったように笑う。
ノクスは本当に、
最近甘やかし方がすごい。
だが。
彼の赤い瞳を見ると、
少しだけ理由が分かる気がした。
失うのが怖いのだ。
だから。
触れて、
確かめていたい。
ガブリエラはそっと、
繋いだ手を握り返した。
その瞬間。
ノクスの目が少し柔らかくなる。
「……そういうの反則」
「え?」
「嬉しくなるから」
ガブリエラの胸がくすぐったくなる。
その時。
部屋の前へ到着した。
ノクスは立ち止まる。
でも。
まだ手を離さない。
ガブリエラは少し笑った。
「本当に離したくないんだね」
すると。
ノクスは少しだけ視線を逸らした。
珍しく、
照れたみたいに。
「……まあ」
その反応が可愛くて、
ガブリエラは思わず笑ってしまう。
ノクスはむっとした顔になる。
「笑うな」
「ごめん」
でも笑ってしまう。
ノクスはため息を吐くと、
ふいにガブリエラの額へ軽く触れるようなキスをした。
優しい。
大切にするみたいに。
ガブリエラの頬が熱くなる。
ノクスは低い声で囁いた。
「今日、
絶対また会いに来る」
「そんな毎日来るの?」
「当たり前」
即答だった。
ガブリエラは照れながらも、
少し嬉しくなる。
すると。
ノクスがじっと彼女を見る。
真っ直ぐな赤い瞳。
「……他の奴に、
そんな顔すんなよ」
「え?」
「俺だけに見せて」
少し独占欲の混じった声。
でも。
怖くはなかった。
むしろ、
大切にされているのが伝わってくる。
ガブリエラは小さく笑う。
「ノクスって、
結構やきもち焼き?」
ノクスは数秒黙ったあと、
観念したように言った。
「かなり」
ガブリエラは吹き出す。
ノクスはそんな彼女を見て、
少し不満そうにしながらも笑った。
朝焼けの光が、
二人を優しく照らしていた。




