表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/112

第七十五章『守りたいもの』

「……あれ、

五百年前の怪物だ」


ガブリエラの声は震えていた。


記憶が流れ込んでくる。


焼け落ちる街。


泣き叫ぶ人々。


黒い怪物。


そして。


その前へ立つ、

銀黒の髪の巫女。


――封じなければ。


その想いだけが、

強く胸へ残っている。


外では再び轟音が響いた。


異形の怪物が、

皇宮の結界を叩き壊している。


騎士たちの悲鳴。


炎。


混乱。


レオンハルトが即座に剣を抜いた。


「ノクス、

ガブリエラを頼む」


ノクスが眉をひそめる。


「お前は」


「指揮を取る」


短いやり取り。


だが、

互いに信頼しているのが分かった。


レオンハルトはガブリエラを見る。


「無理はするな」


優しい声。


そのまま彼は部屋を飛び出した。


残されたのは、

ノクスとガブリエラだけ。


ガブリエラはまだ息が荒い。


頭痛も酷い。


ノクスはそんな彼女を見下ろし、

小さく舌打ちした。


「顔色悪ぃ」


ガブリエラは苦笑する。


「ちょっと記憶が一気に来て……」


言い終わる前に、

ふわりと身体が浮いた。


「えっ」


気づけば、

また横抱きにされていた。


ノクスは当然のように窓へ向かう。


「ちょ、待って!」


「ここ危ねぇだろ」


「でも自分で歩け……」


「無理」


即答だった。


ガブリエラは抗議しようとした。


だが。


ノクスの横顔を見て、

言葉が止まる。


真剣な顔。


赤い瞳が、

ずっと外を警戒している。


その表情を見ていると、

胸がきゅっと痛くなった。


ノクスは窓から夜空へ飛び出す。


黒い翼。


冷たい風。


ガブリエラは反射的に、

ノクスの服を掴んだ。


すると。


ノクスが少し笑う。


「ちゃんと掴まってろ」


「……うん」


近い。


彼の鼓動が伝わる。


不思議と安心した。


怖いはずなのに。


ノクスの腕の中だと、

少しだけ平気になれる。


地上へ降り立つ。


そこは皇宮中庭だった。


騎士たちが怪物と戦っている。


だが。


全く歯が立っていない。


剣が通らない。


怪物の黒い泥が、

人を飲み込んでいく。


「くそっ!!」


騎士の一人が吹き飛ばされる。


ガブリエラは反射的に動いた。


銀黒の光が溢れる。


結界。


騎士を守るように光が広がった。


怪物が咆哮する。


その瞬間。


ノクスの魔力が爆発した。


黒炎。


圧倒的な熱量が、

怪物を吹き飛ばす。


騎士たちが息を呑んだ。


「ノクス様……!」


だが。


ガブリエラは気づいてしまう。


ノクスの魔力が、

いつもより荒れている。


黒い炎が、

制御しきれていない。


セレフィナの言葉が頭を過る。


“暴走”。


ガブリエラの胸がざわつく。


ノクスは怪物を睨んだまま呟く。


「ガブリエラ」


「……なに」


赤い瞳が、

真っ直ぐ向く。


「お前は下がってろ」


「嫌」


即答だった。


ノクスが眉をひそめる。


「危険だ」


「ノクス一人の方が危険」


ガブリエラは彼の手を掴む。


熱い。


魔力が不安定だ。


ガブリエラは真っ直ぐ彼を見る。


「一人で戦わないで」


ノクスの瞳が揺れた。


周囲では戦闘が続いている。


それでも。


二人の間だけ、

妙に静かだった。


ノクスは苦笑する。


「……そういうこと平気で言うよな」


「え?」


「離れられなくなる」


低い声。


ガブリエラの胸が熱くなる。


次の瞬間。


怪物が咆哮し、

巨大な腕を振り下ろした。


だが。


ノクスはガブリエラを抱き寄せると、

片手で黒炎を放つ。


轟音。


爆炎。


怪物の腕が吹き飛んだ。


熱風の中。


ノクスはガブリエラを庇うように抱き締めたまま、

低く笑う。


「……絶対、

守ってやる」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ