第七十三章『独占欲』
髪飾りを持ったノクス。
壁際へ追い込まれているガブリエラ。
その目の前にはレオンハルト。
最悪の構図だった。
空気が痛い。
ノクスは窓枠へ腰掛けたまま、
じっと二人を見る。
赤い瞳が細められる。
「……へぇ」
低い声。
完全に機嫌が悪い。
ガブリエラは慌ててレオンハルトを押した。
「ち、違うの!」
レオンハルトが冷静に返す。
「何がだ」
「そこ冷静にならないで!?」
ノクスが笑った。
でも。
全然楽しそうじゃない。
「俺がいねぇ間に随分いい雰囲気だったな」
「誤解だ!」
「どこが」
反論できない。
ガブリエラは頭を抱えたくなる。
ノクスは窓から降りると、
ゆっくり近づいてくる。
一歩。
また一歩。
空気が圧迫される。
レオンハルトも引かない。
蒼い瞳が真っ直ぐノクスを見る。
「盗み聞きか」
「人聞き悪ぃな。
戻ったら勝手に見えただけだ」
「なら見なかったことにして帰れ」
「嫌だね」
即答。
ガブリエラは胃が痛くなった。
ノクスはそのまま、
ガブリエラの髪飾りを持ち上げる。
「ほら」
差し出された手。
ガブリエラが受け取ろうとすると。
ノクスはわざと、
少し高い位置へ持ち上げた。
「……ノクス」
「ん?」
「子供みたいな意地悪やめて」
ノクスが吹き出す。
その隙に、
ガブリエラは髪飾りを奪い取った。
だが次の瞬間。
ぐいっと腕を引かれる。
「きゃっ」
気づけば、
ガブリエラはノクスの胸へ引き寄せられていた。
「ノクス!?」
腰へ回る腕。
近い。
後ろから抱き込まれる形になってしまう。
レオンハルトの空気が冷えた。
「離せ」
ノクスは挑発的に笑う。
「嫌だっつったろ」
ガブリエラの顔が真っ赤になる。
「ちょ、ちょっと!」
ノクスは耳元へ顔を寄せた。
「さっき、
こいつにキスされそうになってただろ」
「っ!!?」
ガブリエラの思考が爆発した。
レオンハルトが眉をひそめる。
「言い方が悪い」
「事実だろ」
「……否定はしない」
なんで認めるの!?
ガブリエラは羞恥で死にそうだった。
ノクスの腕へ力が入る。
「へぇ」
低い声。
嫉妬。
隠す気もない。
ガブリエラは心臓がうるさすぎて、
まともに呼吸できなかった。
ノクスはガブリエラの肩へ顎を乗せる。
「俺にもしてくれんの?」
「な、何を!?」
「同じこと」
ガブリエラの顔が限界まで赤くなる。
レオンハルトの額へ青筋が浮いた。
「煽るな」
「お前が先だろ」
完全に火花が散っている。
ガブリエラは半泣きだった。
「お願いだから喧嘩しないで……!」
すると。
二人とも同時に黙る。
そして。
同時にガブリエラを見た。
「「お前が可愛い反応するから悪い」」
声まで揃った。
ガブリエラは叫んだ。
「知らない!!」




