表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/112

第六十二章『帰還』

帝都へ戻った頃には、

雪もすっかり止んでいた。


黒竜の背へ乗り、

帰還した一行を見て、

皇宮の人々は騒然となる。


しかも。


ガブリエラたちの後ろには、

保護された子供たちまでいた。


神殿の闇。


実験体。


偽神。


隠されていた真実が、

少しずつ帝都へ広がっていく。


だが。


今のガブリエラにとって、

そんなことを考える余裕はなかった。


「……っ」


足元がふらつく。


魔力の消耗が激しい。


神性まで酷使した反動で、

身体が鉛みたいに重かった。


すると。


突然、

身体が浮く。


「え」


気づけば、

ノクスに横抱きされていた。


いわゆる、

お姫様抱っこである。


周囲の騎士たちが一斉に固まった。


ガブリエラの顔が真っ赤になる。


「な、ななな何してるの!?」


ノクスは平然としていた。


「歩けねぇだろ」


「歩ける!!」


「三歩で倒れそうだったが?」


図星だった。


言葉に詰まる。


ノクスはそのまま歩き出す。


ガブリエラは慌てて暴れた。


「お、降ろして!!

みんな見てる!!」


「別にいいだろ」


「よくない!!」


騎士たちが気まずそうに視線を逸らす。


侍女たちは顔を赤くしていた。


その時。


レオンハルトが無言で前へ立つ。


空気が止まった。


蒼い瞳が、

ノクスを真っ直ぐ見る。


「降ろせ」


低い声。


ノクスも睨み返す。


「嫌だね」


「本人が嫌がってる」


「でも離れねぇぞ」


ガブリエラは反射的に、

ノクスの服を掴んでいた。


……恥ずかしい。


でも。


本当に力が入らない。


レオンハルトがその手を見て、

僅かに黙る。


ガブリエラは慌てた。


「ち、違っ……これは……!」


レオンハルトは深くため息を吐いた。


「……部屋まで運べ」


「最初からそうしてる」


「あとで話がある」


「怖ぇな」


二人の空気がまた微妙に張り詰める。


ガブリエラは頭を抱えたくなった。


――――――


その夜。


ガブリエラは自室のベッドで横になっていた。


柔らかい布団。


暖炉の火。


久しぶりの静かな空間。


でも。


眠れない。


今日のことを思い出す。


ノクスの腕。


近かった顔。


レオンハルトの視線。


胸が変に騒ぐ。


「……何これ」


自分でも分からない。


その時。


コンコン。


扉が叩かれた。


「入ってるよ」


すると。


レオンハルトが入ってきた。


軍服ではなく、

珍しくラフな服装だった。


ガブリエラは少し目を瞬く。


「どうしたの?」


レオンハルトはベッド脇へ座る。


少し沈黙。


そして。


ぽつりと呟いた。


「……無事で良かった」


ガブリエラの瞳が揺れる。


その声は、

思っていた以上に優しかった。


レオンハルトは視線を伏せる。


「塔で、

落ちた時」


「心臓が止まるかと思った」


ガブリエラの胸が熱くなる。


彼がこんなふうに、

感情を言葉へするなんて。


昔なら考えられなかった。


レオンハルトは苦笑した。


「情けないな」


「そんなことない」


ガブリエラは小さく笑う。


レオンハルトは静かに彼女を見る。


蒼い瞳。


真っ直ぐで、

優しい。


その視線に、

ガブリエラの鼓動が速くなる。


すると。


レオンハルトがそっと、

ガブリエラの髪へ触れた。


優しい手。


ガブリエラの呼吸が止まる。


「……レオン?」


レオンハルトは少し迷うように目を伏せた。


そして。


低い声で呟く。


「……あいつに触れられてるの見て、

正直かなり腹が立った」


ガブリエラの顔が一気に熱くなる。


え。


それって――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ