表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/112

第六十章『選択』

塔が悲鳴のような音を立てる。


天井が崩れ、

巨大な瓦礫が次々落下していた。


子供たちは怯えて泣き叫ぶ。


「こわい……!」


「たすけて……!」


レオンハルトが即座に指示を飛ばす。


「先に子供たちを連れて上へ!!

急げ!!」


騎士たちが子供たちを抱えて走り出す。


ノクスも瓦礫を黒炎で吹き飛ばしながら怒鳴った。


「ガブリエラ!!

早くしろ!!」


だが。


ガブリエラは動けなかった。


目の前の少女。


まだ幼い。


七歳くらいだろうか。


痩せた足へ、

黒い鎖が食い込んでいる。


少女は涙を浮かべながら、

必死に笑おうとしていた。


「だいじょうぶ……」


震える声。


「わたし、

ここでいいから……」


その言葉が、

胸を裂く。


ガブリエラは首を横に振った。


「駄目」


少女の前へ膝をつく。


黒い紋章。


呪いの鎖。


神性と魔力を利用した拘束具だ。


雑に壊せば、

少女ごと吹き飛ぶ。


ノクスも気づき、

顔を険しくした。


「……厄介だな」


レオンハルトが周囲を見回す。


崩壊が近い。


時間がない。


ガブリエラは鎖へ触れる。


その瞬間。


大量の苦痛が流れ込んできた。


「っ……!」


少女の悲鳴。


実験。


拘束。


孤独。


ガブリエラの瞳が揺れる。


少女は泣きながら呟いた。


「いたかった……」


ガブリエラの胸が潰れそうになる。


ノクスが低く言う。


「切るなら今しかねぇ」


だが。


失敗すれば。


少女は死ぬ。


レオンハルトがガブリエラを見る。


「お前にしかできない」


静かな声。


信頼。


ガブリエラは息を呑む。


怖い。


もし間違えたら。


でも。


少女の小さな手が、

そっとガブリエラの服を掴んだ。


「……おねえちゃん」


涙で濡れた瞳。


「しにたくない……」


その瞬間。


ガブリエラの迷いが消えた。


「大丈夫」


銀黒の瞳が真っ直ぐ向く。


「絶対助ける」


ガブリエラは両手を鎖へ重ねた。


神性と魔力。


二つの力を、

極限まで細く制御する。


繊細に。


壊さないように。


優しく。


塔がまた大きく揺れた。


轟音。


天井が崩れ落ちる。


ノクスとレオンハルトが同時に防御する。


「急げ!!」


ガブリエラの額から汗が落ちる。


黒い鎖が抵抗する。


呪いが牙を剥く。


頭痛。


吐き気。


それでも。


少女の手は、

ずっとガブリエラを握っていた。


「……っ」


そして。


パキン――。


小さな音。


鎖へ亀裂が入る。


ガブリエラはさらに力を込めた。


「……壊れて!!」


銀黒の光が爆発する。


次の瞬間。


鎖が完全に砕け散った。


少女の瞳が大きく見開かれる。


「……ぁ」


ガブリエラはすぐ少女を抱き上げた。


「行こう!」


だが。


その瞬間。


塔全体が激しく崩れ始めた。


レオンハルトの顔色が変わる。


「まずい!!」


巨大な亀裂。


床が沈む。


逃げ道が崩れていく。


ノクスが舌打ちした。


「間に合わねぇ!!」


その時。


リュシエが突然、

震える声で叫んだ。


『上!!』


全員が顔を上げる。


崩れる天井の向こう。


吹雪の空から、

巨大な“影”が降りてきていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ