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第四十四章『血文字』

地下牢は、

血の臭いで満ちていた。


重い鉄扉が開かれる。


その瞬間、

騎士たちが顔をしかめた。


床一面に広がる血。


壁へ飛び散った肉片。


そして。


牢へ閉じ込められていた神殿残党たちは、

全員無残な姿で殺されていた。


ガブリエラは息を呑む。


胃が捻れるような感覚。


ノクスが前へ出る。


赤い瞳が鋭く細められた。


「……一撃だな」


遺体には、

妙な共通点があった。


全員、

胸を貫かれている。


まるで。


何か巨大な“爪”で抉られたように。


レオンハルトも顔を険しくする。


「人間業じゃない」


騎士たちは怯えていた。


神殿残党を憎んでいた者も多い。


だが。


これは異常だ。


処刑ではない。


虐殺だった。


ガブリエラはゆっくり奥へ進む。


そして。


壁を見た瞬間、

足が止まる。


血文字。


赤黒い文字が、

壁いっぱいへ刻まれていた。


――神は再臨する


その下には、

見覚えのある紋章。


白い輪の中心へ、

無数の目が描かれている。


神殿の紋章ではない。


もっと古い。


もっと禍々しい。


ガブリエラの背筋が凍る。


頭の奥で、

何かが反応した。


『あれは……』


聞こえたのは、

カサンドラの声だった。


ガブリエラが目を見開く。


「カサンドラ……?」


微かだ。


消えたはずなのに。


ノクスがすぐ振り返る。


「どうした」


ガブリエラは壁を見つめたまま呟く。


「この紋章……

見たことある」


頭痛が走る。


知らない記憶。


暗い地下。


古い祭壇。


そして。


無数の死体。


『失敗作』


誰かの声。


ガブリエラの身体が震えた。


「っ……!」


ノクスが咄嗟に肩を支える。


「おい」


ガブリエラは呼吸を荒くする。


見えた。


一瞬だけ。


神殿よりさらに古い組織。


“神”を作ろうとしていた者たち。


レオンハルトが低く問う。


「何を見た」


ガブリエラはゆっくり顔を上げた。


青ざめた表情。


「……神殿は、

最初じゃない」


静寂。


騎士たちが息を呑む。


ガブリエラは震える声で続けた。


「もっと前から、

“神を降ろす儀式”は繰り返されてた」


ノクスの顔が険しくなる。


「つまり」


「神殿残党じゃない」


ガブリエラの瞳が揺れる。


「別の誰かが動いてる」


その瞬間。


地下牢の奥から、

ガタン、と音がした。


全員の視線が向く。


暗闇。


そこから、

何かを引きずる音が響いてくる。


ズル……ズル……


騎士たちが剣を抜いた。


空気が張り詰める。


ノクスが前へ出る。


レオンハルトも剣へ手をかけた。


そして。


暗闇から、

“それ”が現れる。


人間だった。


いや。


元は人間だったもの。


全身が裂け、

白い肉が露出している。


目がない。


口だけが裂けるように笑っていた。


騎士の一人が悲鳴を上げる。


「な、なんだあれ……!」


怪物は、

ガブリエラを見る。


そして。


ガタガタと震えながら、

口を開いた。


『み……つけた……』


掠れた声。


その瞬間。


怪物の背中が裂け、

無数の白い腕が飛び出した。


ノクスが即座に叫ぶ。


「下がれ!!」


轟ッ――!!


怪物が、

凄まじい速度でガブリエラへ襲いかかった。

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