表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/54

第三十六章『感情という罪』

銀色の光が、

夜空を裂いた。


一直線に。


迷いなく。


神の核へ向かって伸びていく。


巨大な神の肉塊が蠢く。


無数の目が見開かれ、

無数の腕がガブリエラを掴もうとする。


『排除』


『排除』


『排除』


機械のような声。


感情のない叫び。


だが。


ガブリエラは止まらない。


銀色の翼が羽ばたくたび、

神聖力と魔力が空間を切り裂いていく。


ノクスが血を吐きながら笑った。


「……行け」


彼はまだ、

神の巨大な腕を押さえている。


全身が傷だらけだった。


黒い魔力が暴走し、

身体のあちこちが裂けている。


それでも退かない。


レオンハルトもまた、

神殿騎士たちを斬り伏せながら叫ぶ。


「終わらせろ!!」


蒼い瞳は、

真っ直ぐガブリエラだけを見ていた。


彼女は唇を噛む。


みんなが戦っている。


自分のために。


未来のために。


だから。


もう迷わない。


ガブリエラは神の核を見る。


白い少女。


閉じた瞳。


眠るような姿。


苦しそうだった。


ずっと。


永遠に。


壊れながら生き続けていたのだ。


ガブリエラの胸が痛む。


「……あなたも苦しかったんだね」


その瞬間。


神の動きが止まる。


無数の目が、

一斉にガブリエラを見た。


『理解不能』


初めて揺らぎが生まれる。


ガブリエラは涙を浮かべながら微笑んだ。


「感情を消したら、

苦しくなくなると思った?」


銀色の光が優しく揺れる。


「でも違う」


カサンドラが静かに頷く。


『痛いのも、生きてる証』


ガブリエラは神へ手を伸ばす。


「悲しいのも、

愛しいのも、

失うのが怖いのも」


声が震える。


「全部、人だからなんだよ」


神の核の少女が、

僅かに目を開いた。


金色の瞳。


その中には、

深い孤独があった。


『……苦しい』


小さな声。


初めての“感情”。


ガブリエラの涙が零れる。


「うん」


彼女は頷いた。


「私も苦しかった」


ガブリエラはゆっくり近づく。


神の肉塊が崩れ始める。


無数の目が消えていく。


『怖い』


少女の声が震える。


「怖くていい」


『寂しい』


「寂しくていい」


銀色の翼が、

優しく少女を包み込む。


ガブリエラはそっと彼女を抱き締めた。


「一人で頑張らなくていい」


その瞬間。


世界が静止した。


白い光が止まる。


黒い魔力も静まる。


帝都を覆っていた圧力が、

ゆっくり消えていく。


ノクスが目を見開く。


レオンハルトも剣を止めた。


神殿騎士たちが呆然と空を見上げる。


神の少女は、

ガブリエラの胸へ顔を埋めた。


『……あたたかい』


その言葉と同時に。


巨大な神の肉塊が、

光の粒となって崩れ始めた。


アステリオが絶叫する。


「やめろ!!」


彼は狂ったように手を伸ばす。


「神は!! 神は完璧でなければならない!!」


だが。


誰ももう彼を見ていなかった。


神の少女は、

静かに微笑んでいた。


『ありがとう』


その瞬間。


白い門が完全に砕け散る。


轟音。


世界中へ、

暖かな光が広がった。


神聖力でも、

魔力でもない。


ただ優しい光。


帝都の人々が涙を流す。


長い悪夢が、

ようやく終わろうとしていた。


だが。


その時だった。


ガブリエラの身体が、

ゆっくり崩れ落ちる。


銀色の翼が砕ける。


ノクスの顔色が変わった。


「ガブリエラ!!」


レオンハルトも駆け出す。


だが。


ガブリエラは力なく笑った。


「……あれ」


視界がぼやける。


身体の感覚が消えていく。


カサンドラが悲しそうに呟く。


『力を使いすぎた』


ガブリエラの身体から、

白と黒の光が零れ落ちていく。


存在そのものが、

薄れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ