表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/54

第十四章『力の代償』

訓練場は、

森のさらに奥にあった。


巨大な岩壁に囲まれた空間。


地面には無数の魔法陣が刻まれ、

空気そのものが重い。


普通の人間なら、

立っているだけで息苦しくなるだろう。


ガブリエラは周囲を見回した。


「……ここ」


リリスが肩を竦める。


「昔の戦場跡よ」


「戦場……」


「神と魔族が殺し合った場所」


その言葉だけで、

空気がさらに冷たく感じた。


ノクスは中央へ歩いていく。


黒い外套が風で揺れる。


「まずは翼の制御からだ」


ガブリエラは背中を触った。


今は布で隠しているが、

翼の存在ははっきり分かる。


重い。


そして、

感情に反応して脈打っている。


ノクスは振り返った。


「翼を出せ」


「……ここで?」


「今さら何を恥ずかしがる」


「そういう問題じゃ……」


だが、

やらなければ始まらない。


ガブリエラは深呼吸する。


意識を背中へ向けた。


すると。


じわり、と熱が広がる。


次の瞬間。


黒い翼が大きく広がった。


風圧で砂が舞う。


リリスが感心したように口笛を吹く。


「綺麗ねぇ」


ガブリエラは少し戸惑った。


まだ自分では、

この翼を受け入れきれない。


ノクスは彼女の前へ立つ。


「魔力を流せ」


「どうやって……」


「感覚でやれ」


無茶を言う。


ガブリエラは眉を寄せた。


だがノクスは真剣だった。


「考えるな。

感じろ」


低い声。


ガブリエラは目を閉じる。


身体の奥。


熱い力。


黒くて、

巨大で、

底が見えないもの。


怖い。


けれど。


逃げたら、

また暴走する。


ガブリエラはゆっくり魔力を流した。


黒い光が翼を包む。


その瞬間。


轟ッ――!!


凄まじい風圧が爆発した。


「きゃっ……!」


地面が割れる。


岩壁に亀裂が走る。


ガブリエラの魔力が一気に暴走した。


「っ……!」


苦しい。


止まらない。


黒い光が周囲を飲み込んでいく。


リリスが叫ぶ。


「ノクス!!」


だが。


次の瞬間。


ノクスが真正面から彼女を抱き締めた。


「落ち着け」


耳元で低い声が響く。


その瞬間。


暴れていた魔力が、

嘘みたいに静まっていく。


ガブリエラは荒い呼吸を繰り返した。


「……なんで」


「契約してるからだ」


ノクスは淡々と言う。


「お前の魔力は俺に反応する」


心臓がうるさい。


抱き締められている。


密着した身体。


熱。


匂い。


全部近すぎて、

頭がおかしくなりそうだった。


ノクスはまだ彼女を離さない。


むしろ背中を撫でるように、

翼へ触れている。


そのたび、

ぞくりと身体が震えた。


「っ……」


ノクスが目を細める。


「また反応した」


「だから触らないでって……!」


ガブリエラは真っ赤になりながら抗議する。


リリスは遠くで腹を抱えて笑っていた。


「若いわねぇ〜」


「うるさい!!」


ガブリエラは羞恥で死にそうだった。


ノクスはようやく離れる。


だがその赤い瞳は、

どこか楽しそうだった。


絶対わざとだ。


ガブリエラは睨む。


するとノクスが不意に真顔へ戻る。


「……だが、

問題もある」


空気が変わった。


リリスも笑みを消す。


ガブリエラは不安になる。


「問題?」


ノクスは翼を見る。


「お前の力、

成長速度が異常だ」


「え……」


「覚醒したばかりでこの規模はおかしい」


リリスが静かに言う。


「神の力まで目覚め始めてるのかも」


神の力。


その言葉に、

胸がざわつく。


ノクスは眉を寄せた。


「このままじゃ身体が耐えられない」


「耐えられないって……」


リリスは真剣な顔で告げる。


「最悪、

魂が裂ける」


空気が止まった。


ガブリエラは顔を青ざめさせる。


「そんな……」


「だから急いでるのよ」


リリスは続ける。


「ガブリエラの魂と、

カサンドラの魂。

どちらも不完全なまま力だけが成長してる」


つまり。


このままでは、

本当に壊れる。


ガブリエラは拳を握った。


怖い。


また死ぬのか。


せっかく生き延びたのに。


すると。


ノクスが静かに彼女の頬へ触れる。


「死なせない」


赤い瞳が真っ直ぐ向けられる。


「絶対に」


その声音は、

驚くほど強かった。


ガブリエラの胸が締め付けられる。


どうして。


どうしてそこまでしてくれるのか。


その時。


突然、

頭痛が走った。


「っ……!」


視界が歪む。


また記憶。


今度は――。


豪華な部屋。


笑うセレナ。


そして。


レオンハルト。


彼がセレナの腰を抱いている。


『君だけは失いたくない』


優しい声。


かつて自分へ向けていた言葉。


ガブリエラの胸が裂けそうになる。


苦しい。


悔しい。


憎い。


感情が暴れる。


翼が再び震え始めた。


ノクスがすぐ気づく。


「ガブリエラ!!」


だが。


今度の暴走は違った。


黒い魔力だけじゃない。


白銀の光が、

翼の間から溢れ始める。


神聖属性。


リリスの顔色が変わる。


「まずい……!」


次の瞬間。


空から、

巨大な光の柱が降り注いだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ