第九十九章『隣で眠る安心』
静かな夜だった。
暖炉の火が小さく揺れ、
部屋の中を優しく照らしている。
ガブリエラはノクスへ寄りかかったまま、
少しうとうとしていた。
魔力を使った疲れも、
まだ残っている。
ノクスはそんな彼女を見下ろして、
小さく笑った。
「眠いなら寝ろ」
ガブリエラは目を擦る。
「……でも、
ノクス帰らないと」
「帰るつもりだったけど」
ノクスは少し困ったように笑う。
「その状態のお前見たら、
置いてけなくなった」
ガブリエラは少し照れながら、
彼を見る。
赤い瞳は、
本当に優しかった。
ノクスはそっと、
彼女の頬へ触れる。
「安心しろ。
ちゃんと大人しくしてる」
「子供扱いしてる?」
「大事にしてる」
即答だった。
ガブリエラの胸が温かくなる。
ノクスは立ち上がると、
ベッドの毛布を整えた。
「ほら」
「……ありがとう」
ガブリエラはベッドへ入る。
そのあと、
少し迷ってから小さく呟いた。
「ノクスも、
ここ座る?」
ノクスが目を瞬く。
「……いいのか」
「少しだけなら」
その瞬間。
ノクスが嬉しそうに笑った。
彼はベッドの端へ腰掛ける。
近い。
でも、
不思議と落ち着く。
ガブリエラは毛布を少し握りながら、
ノクスを見上げた。
「今日はありがとう」
「何が」
「いっぱい守ってくれた」
ノクスは少し黙る。
やがて。
静かに笑った。
「守りたいから守ってるだけ」
その言葉が、
胸へじんわり広がる。
ガブリエラは眠そうに目を細める。
すると。
ノクスがそっと、
彼女の髪を撫でた。
優しく。
安心させるみたいに。
「……おやすみ、
ガブリエラ」
低い声。
ガブリエラは小さく笑う。
「おやすみ、
ノクス」
その夜。
彼の温もりを近くに感じながら、
ガブリエラは穏やかな眠りへ落ちていった。




