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断罪夜会、家庭裁判所になる。王子、和解しないと破滅しますよ?  作者: ニャルC


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第3話:【防諜】左利きの指示書と隣国の影

第3話:【防諜】左利きの指示書と隣国の影


「……証拠だと? ふん、リチャード。貴様がそう言うことは分かっていた。これを見ろ!」  

王子は勝ち誇った顔で、懐から一通の書状を取り出した。

「これこそが、カトリーヌが裏で男爵令嬢を陥れようと画策した、卑劣な指示書だ。

筆跡も彼女のものに違いない。これを読んでもまだ、正当な理由がないと言い張るつもりか!」


会場に緊張が走る。偽造であれ何であれ、物理的な物証が出された以上、状況は一変するからだ。

無言で王子に歩み寄り、手袋を嵌めた手でその書状を受け取った。

そして、冷徹な観察眼で紙面を検分する。


「……なるほど。筆跡は見事です。

カトリーヌ様が過去に書いた文書から、一字ずつ癖を盗んで繋ぎ合わせたのでしょう。

ですが、殿下。この書状には致命的な欠陥があります」


「なに……?」

 私は書状を高く掲げ、シャンデリアの光に透かした。

「この文字、左利きの手で書かれていますね?」

「な、何を言っている。筆跡はカトリーヌのものだと言っただろう!」


「筆跡は真似できても、身体的な癖までは隠せなかったようです。

この文字のハネ、インクの掠れ方、

そして左から右へペンを押す際に生じる特有のインク溜まり……。

殿下、我が国の貴族社会において、右利きへの矯正は必須のマナーです。

当然、カトリーヌ様は完璧な右利き。左手でペンを握ることすらありません」


 私は会場の隅で、依然として右腰に鞘を提げている隣国の使節団を指差した。

「思い出してください。この国で右腰に鞘を提げ、平然と鞘当てを行うような無作法者は誰か。

……そう、右利き矯正の文化を持たない隣国の人間です。

この指示書は、カトリーヌ様の筆跡をなぞっただけの、隣国工作員による偽造品ですよ」


「そ、そんなはずはない!

これは彼女(男爵令嬢)が、信頼できる筋から入手したと言っていたんだ!」

王子の言葉に、私は冷たい笑みを浮かべた。


「では、その『信頼できる筋』とやらが、

我が国の司法と経済を混乱させるために送り込まれたスパイだったということですね。

殿下、貴方は今、隣国の工作に乗って自国の経済の柱(公爵家)を破壊しようとした。

これはもはや恋の諍いなどではない。新法における『外患誘致罪』、あるいは国家に対する背信行為です」


 王子の顔から、一気に血の気が引いた。

自分が正義のヒーローだと思っていた場所が、いつの間にか「売国奴の被告席」に変わっていたのだから。


「殿下、貴方がその紙切れを振りかざせば振りかざすほど、

貴方が隣国の傀儡かいらいである証拠が積み上がっていきます。

……さて、まだその証拠を維持されますか?」


 王子の指先から、偽造された指示書が力なく床に落ちた。 

それを拾い上げると、事務的にバインダーに綴じた。


「証拠物件として収受いたします。……さあ、いよいよ判決の時間ですね」


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