表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/8

「雨と彼女が守り抜いた静寂」

窓の外では、雨がしとしとと静かに降り続いている。

目の前で静かに息を引き取った彼女の姿を見つめながら、私はこの静寂の中でふと思う。彼女は、どんな人生を歩んできたのだろう。普段は仕事として淡々と役割を果たす私だが、今日の雨は、そんな立ち入った感傷を私に抱かせた。

彼女は今、まるですべてを許したかのように、安らかな微笑みを浮かべている。

しかし、彼女がこの施設に入る際、職員に固く頼んでいたことがある。「身内や親戚、知人と名乗る者が来ても、絶対に部屋には入れないでほしい」と。

生前、打ち合わせをしたときは、彼女は「身内はいません。最期はすべて弁護士に託してあるから、気が楽ですよ」と、少し笑いながら言っていた。

……一体、彼女の人生に何があったのだろう。

今、微笑みを浮かべて二度と目を開けない彼女からは、想像もつかない過去があったのかもしれない。

廊下の向こうで、何やら話し声が聞こえる。どうやら彼女の死を知った身内らしき人たちが、弁護士と何かを揉めているようだ。彼女が一生をかけて拒絶し、最後まで守り抜こうとした「人生の終わり」。彼女の部屋に足を踏み入れる権利さえ、彼らにはもう残されていない。

彼女は、誰にも汚されることなく、自分だけの静寂を勝ち取ったのだ。

そう思うと、彼女の微笑みがより一層、誇らしく見えてくる。

そんな自分は、少し薄っぺらいだろうか。私は苦笑いしながら、今日も最後のお別れを告げる。

「さようなら、そして、ありがとう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ