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冷遇され続けた聖女は、隣国で王太子付き侍女になって人生謳歌します  作者: 甘寧


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4.意外な犯人

 ディルクが部屋を出て行って数分。大きな足音共に勢いよく扉が開かれた。


「よぉ、マティアス。俺に用だって?」


 軽快な声を掛けながら入ってきたのは、この国の騎士団長アルベルト・トルンクヴィストだ。

 恰幅がよく威圧感を感じるが、実際は人当たりがよく、部下達からも慕われているらしい。私は騎士と名のつく者達にはいい思い出がないので、慕うという感情が分らない。


「早速で悪いが、これを見てもらえるか?」

「あ?これは決算書じゃないか?」

「よく見てください」


 ドカッとソファーに座ったアルベルトの目の前に、数枚の報告書を広げて置いた。最初は何を言っているのか分からなかったアルベルトも、よく目を通すうちに顔付が変って来た。


「……なんだこの数字は」

「それはこちらの台詞です。貴方、しっかり確認してました?」

「うむ~……」


 ディルクの追求に、顎に手を当てながら動揺を見みせている。


「君を疑う訳ではないが、まずは説明をしてもおうか?」

「そうだな」


 マティアスの冷静な一声に、アルベルトは深い息を吐いた。顔を手で覆い、背にもたれるようにして天を仰ぎながら一言


「すまないが、オリヴェルを呼んできてもらえるか?」


 そう頼んできた。


 オリヴェル・エングウェルド。副団長の任を担っている。マティアスに匹敵するほどの美貌を持ち合わせ、剣を振るう姿は舞を踊っているように美しいと噂される人物。


「おや、皆さまお揃いで。どうしました?」


 何も聞かされていないオリヴェルは、いつもの様子で中へ入ってきた。その姿をアルベルトは睨むように見つめている。


「……オリヴェル。お前、俺に隠してることがあるだろ?」


 冷静を装っているつもりなんだろうが、肌がピリつくほどの威圧感を放っている。


「なんです藪から棒に。そんな訳ないじゃないですか」

「なら、この報告書はなんだ!」


 シラを切るオリヴェルに、堪らずテーブルを叩きつけながら報告書を突きつけた。


「あぁ、なんだ。コレのことですか?いつ気付くんでしょうとは思ってましたが、まさか二年も気付かれないとは思いませんでしたよ」


 少しは動揺を見せるかと思いきや、あまりにも呆気なく認めてしまったので、黙って見ていた私達も唖然としてしまった。


「お前、なにを呑気に言ってる!これは立派な横領だぞ!?騎士ともあろう者がふざけるな!」


 オリヴェルの胸ぐらを掴みながら怒鳴りつけるが、当の本人はまるで他人事のように平然としている。


「お言葉ですが、私に一任しといてそれはないでしょう?それに、気付くタイミングはいくらでもあったはずですよ?」


 チラッとマティアスとディルクの見ながら呟いた。暗に、見抜けなかった方にも非があると言っているようだった。


 確かに、それは言えている。今回の件は、しっかり確認していれば防げていた。『コイツなら大丈夫』という、信頼が仇になるいい例。


(しっかし、分かんないなぁ)


 副団長であるオリヴェル(この人)は、お金に困っている様子はない。ギャンブルをするようにも見えないし……女性遊びは派手そうだが、貢ぐというより貢がれる方に見える……


 金の流出先が不明なのだ。


「罰を受ける覚悟はあります。騎士を辞めろと言われれば潔く辞めますよ」

「──なッ!?」


 冗談を言っているように見えないが、簡単に騎士を辞めるなんて口にされ、アルベルトの怒りが沸点に達し。物凄い音でオリヴェルを殴りつけた。


「お前は何のために騎士になった!国を護るためじゃないのか!?騎士を辞めるだと?お前の忠義はその程度だったのか!?」


 部屋が揺れる程の怒号が飛ぶ。オリヴェルは打ち付けられた壁に寄りかかったまま、殴られた頬に手を当て黙り込んでいる。殴られた時に口を切ったのか、口端には血が滲んでいる。


「アルベルト!落ち着け!」


 マティアスが止めに入った事で、なんとか落ち着いたが、あのままだったら間違いなく死者が出ていた。


「今回の件は、我々の落ち度でもある。オリヴェル一人を責めるのは筋違いだ。……とはいえ、不正に金を得ていたのは事実。処罰は免れないだろう」

「クソッ!」


 悔しそうにアルベルトが舌を打った。


 ここで処罰をしなければ、国民はマティアスに不信感を抱く。だが、信頼していた者を裁く方も辛いという事を忘れてはいけない。


「……理由は?」


 突如、ディルクが呟いた。


「何が目的だったんです?正直、貴方が理由もなく罪を犯すとは思えません」

「……」

「そうだな。まずは理由を教えてもらえるか?」


 顔を俯かせたまま黙っているオリヴェルに注目が集まる。しばらく沈黙が続いたが、観念したように小さな溜息が聞こえた。


「……私の故郷を守る為です」


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