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声劇台本置き場  作者: 如月ふたば


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復讐の三つ編み(朗読用)主人公:女性

声劇アプリ、ボイストランド【悪役サバト】企画用に書いたものです。

台本置き場にも掲載しています。主人公は女性ですが男性が読んで頂いても構いません

剛: 豪華なシャンデリア。ホールにある全てのテーブルにはアレンジされた色とりどりの花々。テーブルの間を給仕のために忙しなく動く黒服の人々。そのホールの高砂に座るのは、俺とウエディングドレスに身を包んだ妻。披露宴が、たけなわとなりつつあった。はしゃぐ様な雰囲気がホールの中を飛び回っている。俺の目の端に、下座にある扉が開くのが映った。

剛: 手洗いか何かのためだろう。俺は、友人知人からの献杯への対応に忙しい。だから気にも留めなかった。下座から高砂に歩いてくる白い姿を。その姿はモーセが海をかき分けるかの様に、人波を端に寄せた。それを見た者は、まるでストップモーションをかけられた様に動きが鈍くなっていた。隣に座る妻の小さな叫び声。彼女の視線の先を見ると、まるで井戸の底から這い出てきたかのように色の白い女。真っ白なワンピースの女。その女が纏う気味悪さを、むしろ引き立てたのは艶(あで)やかな三つ編み。黒々とした三つ編みは、右の胸元に垂れ下がっていた。

剛: 高砂の前で止まった女。右腕をゆっくりと上げ、俺に青白い人差し指を向けた。凍り付いている空気。思い出したかのように、黒服の男が女の前に立ちはだかった。黒服と共に扉へと向かう白い女。「何あの女」や「怖い、何あれ」などと囁き声が聞こえる中で俺は思った。「あの女、どこかで見たことがある」。記憶の引き出しを漁っていると、背を向けた女が小さく振り返った。「そうだ。あの視線。そして、あの長い三つ編み、あいつだ井之頭(いのがしら)だ。井之頭恵子(けいこ)」俺があいつを思い出したのを見透かしたように、あの女の口元は静かに歪んだ弧を描いた。

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剛: 小学6年生の時だ。俺は恵子に告白をした。この小学校の中でスターと呼ばれるこの俺が。あの保健室ばかりに行き、ひ弱でいつも顔色が悪かった女。恵子の肩から流れる絹の黒い三つ編みは、あまりにも鮮やかなのだ。その良さを、誰より先に見つけてやったのは俺だ。なのに「ごめんなさい」だと?「好きな人がいる」だって?なんて生意気な女。だから、どんな相手が好きなのか、見極めることにした。白シャツの半袖に、有名私立中学の紋章を胸に付けた男。細長い腕をした、へらへらした野郎。青白い顔のはずの恵子は、その男には頬を赤く染めていた。あの三つ編みの先をもじもじと弄りながら。俺に激しい怒りと辱めが襲いかかった。

剛: ある日の暮れなずむ時間。恵子が保健室から、まだ帰っていないと知った。俺の足は自然に保健室に向かっていた。誰もいない保健室。ベッドのある場所にはカーテンが閉められている。恵子はまだ本当に帰っていないようだ。俺は机の上にある裁ちばさみの入ったペン立てに気付いた。「包帯や大きなガーゼを使うときに使いやすいのよ」保健室の先生が話していた。この「裁ちばさみを使えば良い」とアイデアが浮かんだ。俺は裁ちばさみを手に取り、カーテンを開けた。やはり青白い顔をした恵子は、ベッドの上で寝息を立てている。艶(つや)やかな三つ編みを、掛け布団の上に流す様にして。俺は恵子に気づかれないように三つ編みを手にした。裁ちばさみを持ったまま。ザクっ!!赤い物が俺の視界を遮った。その赤い物は恵子の三つ編みの切り口から「プシュー」と激しい音を立てて吹き出し、俺を襲った。気のせいか鉄の臭いが鼻腔を刺激した。

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剛:「うっ」。酷い夢を見た。朝からあまりにも気味が悪い夢だ。結婚披露宴のとき以来、恵子のことなんて忘れていたというのに。きっと今日誕生日を迎える6年生になる娘が最近、長い髪を三つ編みにするようになったからだ。三つ編みの先は血のように赤い、真っ赤なリボン。サテンの様につるりとした質感のリボン。娘の黒髪を更に綺麗に見せていた。

剛: 昨夜は「今日は理香ちゃん。あなたのお誕生日会を家でするんだから。ちゃんとすぐに帰ってくるのよ」と、妻から強く言われていた娘。快活な理香は下校後、すぐにランドセルを家に置いて友達と遊びに行ってしまう。なかなか帰ってこないせいだ。今日の俺は娘の誕生会のために、いつもより早く帰宅していた。18時を過ぎても、まだ帰ってこない理香。今朝の夢のせいか、いささかの不安がよぎった。しかし「いつもこれくらいの時間まで帰ってこないらしいじゃないか」と、心配を始めた妻に言い聞かせるように俺は言った。チクタクと家の時計の秒針の音だけが響いていく。俺は不安と苛立ちを掻き立てたられた。

剛:「探しに行ってくる」妻が、玄関に向かう。ピンポーン。理香のはずがない。玄関に向かっていた妻が不思議そうに対応した。「あなた」妻が呼ぶ声。彼女に駆け寄ると、小さな段ボールを持っていた。妻に呼びつけられた理由に首を傾げながら、彼女の手から両手に余るほどの小さな箱を、俺は受け取った。「あなた宛てに届いたわ」送り状を見ると、娘の理香から俺宛てだ。早く帰ってこない理香への不安が、何故か爆発した。俺は引きちぎる様に箱を開けた。

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剛: その中に入っていたのは、とぐろを巻いたような三つ編み。三つ編みの先には理香お気に入りの真っ赤なサテンのリボンが付いていた。

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