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声劇台本置き場  作者: 如月ふたば


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20/23

別れる二人/二人用(男女比/1:1)ヒューマンドラマ風

芽生:女性 心太:男性

難病を患った妻から離婚しようと切り出された夫。

台本置き場、ボイストランドにも掲載しています。


戦争でも成立する話なのだと思います。

しかし「未来が変わることを変わってしまう本人が、最後まで認識している」という部分を描きたかったため、ALSという題材を選びました。

不勉強なところもあるかと思います。

あくまで私が表現したかったのは病気そのものではなく、当事者たちが予測できる範囲で未来が変わってしまった二人の関係、考えの相違が出てくることです。結果、リアリティに欠ける部分もあります。

その点をご理解いただけましたら幸いです。

芽生:(N)私と夫の心太(しんた)は大恋愛の末、結婚した。でも今日で、その結婚生活は私が終わらせる。何故なら私がALSを発症していると分かったからだ

:

心太:ただいま。やっぱりさ病院って疲れるよね。しかも大きな病院だと

芽生:うん。疲れた。……

心太:……

心太:あ、そうだ。俺が芽生(めい)ちゃんのためにお茶入れちゃおっかな。だから、座っていていいよ。行きも帰りも運転してきたのも俺なのに優しいよね。片道一時間以上かかるのに

芽生:ありがと、お茶いらないかな。心太は座ってて。あと、決めたんだけどさ。別れよ

心太:……は?何言ってんの

芽生:そのままだよ、別れるの。離婚するの

心太:……なんでだよ。っていうか、何してるんだよ

芽生:最低限の荷物纏めようかなって。あ、別に心太が仕事に行っている間に取りに来ても良いのか

心太:だから、なんでそんな事してるんだよ

芽生:別れるからだけど?

心太:何、勝手に決めてんだよ。とにかく荷物寄越せ

芽生:やめて、放してよ

心太:ダメだ。とりあえず座れ。まずは座れ。せめて座ってオレの顔見て話せ

芽生:……分かった

:

芽生:心太はさ、離婚したくないって言うの

心太:当たり前だろ。まだそんなこと言ってるのかよ

芽生:なんで?

心太:なんであんな病気ごときで別れなきゃいけないんだよ

芽生:先生の話、ちゃんと聞いていたの

心太:当たり前だろ

芽生:じゃあ、分かるよね

心太:なんでだよ。分かる訳ないだろ。今はこれから俺たちがどうしていくか決めていく時だろ

芽生:「奥さん、今日も優しい旦那様と車いすでお出かけですか~」

心太:何、言ってんだよ

芽生:「良いですね、お病気になっても奥様は愛されていて、お優しい旦那様ですね~」

心太:ふざけるなよ

芽生:ふざけているのは、どっち?

心太:あぁ?芽生に決まってんだろ

芽生:でもさ、優しい旦那様をやりたいから離婚したくないんでしょ

心太:そんな訳ないだろ!!

芽生:でもそうじゃん。私にはそう思えるよ

:

心太:ふぅ……。芽生、今はさ混乱してるだけなんだよ。あんな大きな病気にかかってるって分かって。だから

芽生:その混乱は、心太のほうでしょ

心太:だから今はその話はやめて、今日はのんびりして。またこのことは、ちゃんと話し合って決めようよ

芽生:私、言わなかったっけ?あなたのそういう所が嫌いだって

心太:は。今は、そんな話するタイミングじゃないだろ

芽生:すぐそうやって、大事なこと引き伸ばすじゃない

心太:今はそんなこと関係ないだろ

芽生:あるよ。今決めなきゃダメなんだよ

心太:先生だって言ってただろ。すぐ動けなくなるわけじゃないし、病気の進み方も治療だって今ならまださ

芽生:だから何だって言うの?私、もう決めたの

心太:なんでだよ、何、勝手に決めてるんだよ。俺は?俺の意見は?

芽生:ないよ

心太:お前だってそいう自分勝手なところ、あるだろ

芽生:うん。自分勝手だよ

:

心太:……。ほら、今はさお互いちょっと熱くなってるだけだから

芽生:私の意見は変わらないよ

心太:だから

芽生:当たり前でしょ

心太:俺が支えるって、ずっと支えるって約束しただろう。だから、病気なんて関係ないんだよ

芽生:あるよ。どうしてそんなことが分かんないの

心太:分かる訳ないだろ。俺たちの問題だろ

芽生:うん、そうだよ私たちの問題だよ。……今はね

心太:今は。って、そうやってお前は、また勝手に決めつけるのか

芽生:うん。決めつけるよ

心太:そういう風に言えば、そうやって拗ねたような態度を取れば俺が「じゃあ別れる」とか「また後日話そう」って誤魔化すと思っているんだろう

芽生:ちょっとは、あるかも

心太:……ふざけるな

芽生:ちゃんと真面目だよ。私は、ALSじゃないかなって思ってた時から考えてたんだ、離婚すること。それに今日っていうか病院から連絡あって「やっぱりな」って

心太:そうじゃないかと思っていたのなら、何でその時に言わなかったんだよ

芽生:だって心太、心配するじゃん

心太:当たり前だろ

芽生:その当たり前が嫌なの

心太:なんでだよ。何で心配されるのが嫌なんだよ

芽生:……本当に聞きたいの

心太:何を

芽生:私の本音、本当に聞きたいの。辛くなるのは私じゃない。心太、あなたの方だよ

心太:当たり前だろう。聞きたいに決まっている

芽生:心太、私が死ぬことを前提に考えてる

心太:っ!?そんなはず無いだろう

芽生:本当にそう言い切れる?

心太:言い切れるよ

芽生:じゃあ、言い方変えるね

心太:お前、そんなに俺に不満があったのかよ

芽生:あったよ

心太:……そうかよ

芽生:私のことプライド高いだの、頑固だの、自分勝手だの言うし。それなのに鈍感だし

心太:鈍感なのは関係ないだろ

芽生:その割に私のこと、ちゃんと理解してる。とか言っちゃうし

心太:事実、理解してるだろ。……違うのか?

芽生:理解してくれてるよ。それでいてくれて、いつも心太は優しいよ。でも今の心太は、今の私を見ていない

心太:見てるから。今のお前を見ているから俺がキレるんだろ

芽生:なんで?それは、私を支えられると思っているから。でしょ

心太:そうだよ

芽生:それは私の未来で、今のわたしじゃない!!

心太:え?

芽生:私がプライドが高いと思うならさ、私が動けなくなる自分を許せると思うの?

心太:それは病気だから仕方ないだろ

芽生:仕方なくなんかないよ。私が誰かに、心太に頼りっぱなしになる人生を、私が許せると思っているの?

心太:芽生なら、許せないだろうね。でも、俺が支えたいと思ってるんだよ

芽生:ほら、やっぱり

心太:やっぱりって何がだよ

芽生:支える?それは今の私に必要じゃない。その支えが必要なのは未来の私だよ。支えれられないと生活出来ない自分が分かっている。そんなの私が耐えられると思っているの。それに対して今の私が傷つかないと思っているの!?

心太:そいうつもりじゃないんだ。でも、ごめん。俺だってショックなんだよ

芽生:うん

心太:なのに離婚するなんて勝手に決められて。今すぐ決めなきゃいけないこと、ないだろう。一緒に過ごしながら変化していけばいいだろう

芽生:私にはそれが耐えられないの

心太:芽生はそうかもな。でも、俺も耐えられない

芽生:何が耐えられないの

心太:芽生との人生をそんなに軽々しく考えていない。何があっても俺が守るし、俺が支える。俺がお前の側にいるんだよ

芽生:私が死ぬまで側にいたいの?

心太:そうだよ。芽生、言ったじゃん。「私は心太の死ぬ前日に死ぬんだ」って。俺に見送られて、その後すぐに付いてきてって

芽生:言ったよ

心太:じゃあ、そうさせろよ。芽生が……車いすになろうと一緒に居させろよ

芽生:私が望んだことは、そういうことじゃないよ

心太:そんなこと俺だって分かっているよ。でも、病気になっちゃったのは芽生のせいじゃないだろう

芽生:うん。私のせいじゃないよ

心太:じゃあ、いいだろう。とにかく離婚はしない

芽生:結局、心太は自分を守りたいんだ

心太:どういう意味だよ

芽生:今、心太自身が傷つきたくないっていうこと

心太:当然だろ。俺はちゃんと話し合いたいのに離婚だの別れたいだの。の、一点張り。俺が別れたくないって言ってるのに

芽生:そこじゃないかな

心太:じゃあ、どこだよ

芽生:私を失う未来を、あまりにも怖がってるんだよ

心太:失いたくないと思うことが、そんなにいけないことなのか?芽生は俺がいなくなっても良いのか

芽生:それも、私に言わせるの?

心太:言わせる?一緒に居たい。それだけ言えば良いだろう

芽生:だから分かっていないんだって

心太:分かっていないと思うなら、きちんと説明しろよ

芽生:さっきも言ったじゃん私。今の傷つく私を見ようとしていないって

心太:それは悪かった。それも含めて、これから始めようよ

芽生:そういう所が嫌いなの!!いっつも優しくて、これかもどうせずっと優しくて

心太:優しくして悪いかよ

芽生:悪いわよ。今傷つくからって言えば、今の私を見ようとする。私が少しずつ動けなくなってたら、笑顔で介護だってきっとしてくれる

心太:良いだろう。俺がそうしたんだから

芽生:それが嫌だと言っているの

心太:芽生が嫌だと言ったことに、俺一度でも歯向かったことあるか?嫌だと思わせていることをずっと辞めてきたつもりだぞ

芽生:そうだね。そうしてきてくれたね

心太:じゃあ、今回くらい俺の言うこと聞けよ。俺はお前と離婚しない。絶対に別れない。ずっと何があっても離れるつもりはない

芽生:そう思ってくれるのは嬉しいよ

心太:なら、今日はこれで、もうこのお話はおしまい。そうしよう。な?

芽生:……

心太:芽生

芽生:……出て行く(玄関へ向かおうとする)

心太:聞いてなかったのか。(腕を掴む)行かせるわけないだろ

芽生:放してよ

心太:ダメだ(手に力を入れて掴んだ腕を放さないようにする)

芽生:だって、だって。そうやってずっと私に優しくするんでしょう?ずっとずっと優しくして、私に何が起こっても、優しいままなんでしょう(腕を掴んでいた心太の手を芽生が優しく外す)

心太:するよ。するよ、優しく

芽生:だったら。今のわたしに優しくして。今すぐ私のことを放して。あなたから解放してよ

心太:解放って何だよ

芽生:未来のせいで今の私が傷つくこと。未来で動けなくなっちゃって、心太の優しさや怒りや辛さや、何もかもに寄り添って手伝えないこと

心太:俺は芽生がそばに居てくれれば良いんだよ

芽生:それはきっと今だけだよ

心太:俺の気持ちを勝手に決めるな

芽生:決めるよ。だって、私だって本当は別れたくなんかないもん

心太:なら、このままで良いだろう。ほら、もう一度座ろうよ

芽生:だからダメなんだって

心太:その台詞はもう何度も聞いた

芽生:結局私は、徐々に動けなくなって何もかも、いろんな人のお世話になっていることだけを頭で理解しながら生かされ続けるの

心太:それこそ、そうなっちゃうんだから仕方ないだろう

芽生:そんな風になると思うだけで、やっぱり私のプライドがズタズタになる

心太:芽生なら、そうだね。そんな自分許せないだろうね

芽生:今ならね、今、別れればお互い傷つけ合って別れるんだから。おあいこに、なるんだよ

心太:おあいこ?

芽生:うん。心太ならまだ次もあるよ

心太:次?俺が芽生と別れてすぐ、誰かと付き合うとか思ってるんじゃないだろうな

芽生:そうじゃない

心太:なら次ってなんだ

芽生:私の死を抱えて生きていかなくていいってこと

心太:だから、

芽生:黙ってよ

心太:俺は何にも分かってないんだろ。なら……言えよ

芽生:私が死んだあとも、もっと何かできたんじゃないかっていう後悔。心太が私と変わってやれたいいなと思っちゃう気持ち。私を失いたくないっていう思い。全部、ひっくるめて今ならちゃんと、お互いを傷つけ合って離れられるんだよ。私が病気だからなんて、別れた理由を心太だけが抱え込まずに。私の言ってること分かる?

心太:分かんないよ。全然何言っているのか分からないよ。全く意味が分からないよ

芽生:今すぐに分からなくても、きっとあなたの未来ではちゃんと理解できるよ

心太:俺はそんなにバカじゃない。それに、明日俺が交通事故に合たりしてどうにかなっちゃうかもしれないんだよ。それも分かってるのかよ

芽生:バカだよ。だってこれだけ言ってるのに、何にも伝わらないんだもん。私と離れようとしないんだもん。私の前から消えようとしないんだもん

心太:失うこと前提で決められている。今の俺が傷つかなきゃならないのは「おあいこ」なんかじゃない

芽生:そうかもね。でも、私の前から消えてくれないなら、私が消えるから(走って家を出る)

心太:(追いかけそうになるも足を止める)何もわかってないのは芽生だろう

:

心太:(N)どうすれば良かったのかと項垂れているだけの俺。まずは連絡をした。スマートフォンは解約され、通院していた病院も、芽生の実家へも連絡は出来なかった。その時に抜け殻のようになってしまった俺が分かっていたのは、二度と芽生が連絡を寄越す気はないということ。もう二度と俺の所に戻ってこないということ


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