椿説 牡丹灯籠(3人用/男女比1:1 不問1)ホラー風
萩原新:男性
飯島つゆり:女性
BP(ブライダルプランナーの米田さん):不問
落語、怪談牡丹灯籠を下敷きに書きました
新:飯島。この庭園ってさ牡丹良いけど、見下ろす景色マジ綺麗だよな
つゆり:だな。それにあの教会なんてちょっと田舎には合わないけど、あそこも良いよな
新:あぁ、あの教会って人気あるんだっけ
つゆり:そ。すっごく結婚式に人気あるらしい
新:そうなんだ
つゆり:でもあそこちゃんとしたクリスチャンじゃないと式挙げられないから何か月か二人でミサっていうの?に、通わないとダメっぽいんだよね
新:ほー、飯島のクセに詳しいじゃん
つゆり:俺みたいなモテ男子の常識だよ。お前みたいにどうしても一緒に見たいって言うからついてきたら牡丹。なのに、庭園って言うか墓地にある牡丹とか。ありえねぇよ
新:ふん、飯島がモテ男子。言うだけはタダだしな
つゆり:しかしさ、この前の芍薬の次にみたいのは牡丹って。園芸男子かよ
新:っるせーな。さて、問題です。次に見たいと俺が言い出すのはなんでしょう?
つゆり:まさか、百合?
新:ご名答!
つゆり:下らねぇ。立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の様って。
新:飯島なら俺と見たいだろうなって
つゆり:なんでだよ。あ、百合も5月か6月ってなってるぞ。今日ならまだ時間あるから見に行けそうだぞ
新:いや、次の春でいいよ
つゆり:高校卒業したらこんなに簡単に一緒に出掛けられないだろ
新:そうだな。飯島、宿舎の部屋俺と一緒で感謝してるだろ
つゆり:は!?バカいうなよ、3年になる前の転校で良かったよ。お前となんて3年間も一緒に過ごすなんてどう考えたって罰ゲームだよ。
新:飯島のクセに生意気だな
つゆり:はいはい
新:怖がりの飯島君は、この墓地の場所から帰りたそうだもんね?雷の日なんて「きゃっ」とかビビっちゃって
つゆり:それ、関係ねぇだろ
新:そういうことにしてやるよ。とにかく百合は次……いやそうだ、こうしよう!
新:大学卒業して俺が良いところに就職して金持ちになったときだ
つゆり:つまんねぇ人生設計だな
新:金持ちになったらさ、飯島、こんな事もう言わない。だからちゃんと聞いてくれ
つゆり:なんだよ、改まって
新:金持ちになったって飯島の実家よりは全然かもしれない。でも
つゆり:実家とか今関係ねぇだろ
新:つゆり
つゆり:え、お前急にどうしたの?
新:百合の花の咲く時期に、飯島……お前を、いやお前の妹を迎えに行く
つゆり:俺1人っ子だってお前知ってるだろ。それに迎えに行くってさ
新:お前の妹を迎えに行ったときに、百合の花を一緒に見よう
つゆり:はー、意味わかんね。勝手にしてくれ。
新:百合は6月にも咲くんだろ。なら丁度、女性を迎えに行くのにいい時期じゃないか
つゆり:まさかジューンブライドのつもり?存在もいない俺の妹を、どうぞどうぞ好きな所に連れて行ってくれ
新:俺は真面目に言っている
つゆり:だろうね
新:つゆり。必ずお前を、お前の妹を迎えに行く。梅雨が開ける前までに
つゆり:……どうしたんだよ
新:ふぅ。飯島、お前が墓地だからこわーいって泣き出す前に帰りますか。牡丹の写真だけ撮るからもう少し待っていてくれ。つーか、お前も撮んねぇの?
つゆり:あぁ、撮るよ
新:(N)こんな風にして高校の3年目を俺も飯島つゆりも終えた。卒業後はお互い親友として連絡を取り合うも、日々の生活に忙しく連絡も曖昧になっていく。そしてある日を境に俺から連絡することが出来なくなった。
BP:つゆり様、今日のウエディングドレス姿はやはり一番お綺麗です
つゆり:ありがとう
BP:新郎様でらっしゃる志丈様がまた惚れ直しちゃいそうですね
つゆり:そうだといいわね
BP:間違いありません。今日は、待ちに待ったつゆり様がやっと新婦としてお披露目の結婚式ですから惚れ直しちゃってもいいと思います
:ぽちゃん(電子音)
BP:つゆり様の着信音って何度聞いても面白いです
つゆり:ふふ、そうでしょう。ちょっとスマホ見ちゃうね
BP:もちろんどうぞ。
つゆり:きゃっ
BP:あら、可愛らしい。雷が苦手でいらっしゃるなんて。でも、外は快晴ですのに不思議なことがありますね
:ぽちゃん(電子音)
BP:つゆり様のスマホが光るたびにホーム画面の牡丹が綺麗に見えますね。あ、のぞき見してるわけじゃないですよ
つゆり:のぞき見じゃないのは知ってますってば。あ、そうだこの牡丹あの庭園。あそこに咲いていた物なの。丁度、今の時期にね、親友と見に行ったの
BP:あらでは今日のお式にもいらっしゃってるんでしょうね。私もご挨拶させていただく無くちゃ
つゆり:ううん、やっと理由が分かった
BP:つゆり様どうなさったのですか。
つゆり:どうして、あいつが来ないどころか出欠の返信すら送ってこないのか
BP:つゆり様、落ち着いて下さい
つゆり:連絡だって急に途絶えたのおかしいと思っていたの!!それに私が結婚するっていうのによ!?あの時、私を迎えに来るって言ったくせに、あんな真面目なやつがあんな顔して
BP:つゆり様。ご両親様をお呼びしますから少々お待ちくださいませ
:ゴロゴロ(雷音)
つゆり:みんな知ってたんだ!!私を利用するためにパパもママもこんな結婚させるために!!みんな知ってたくせに、ずっと私にだけ隠してたんだ!!
:ぽちゃん(電子音)
つゆり:行かなくちゃ。あいつが待ってる。あの牡丹のある場所で。あいつが迎えに来れないなら私が行かなくちゃ。私が今すぐ迎えに行かなくちゃ
BP:とにかく、とにかく落ち着きましょう。つゆり様
つゆり:私の邪魔しないで!!なんとかしてよ新!!
:バリバリバリ(雷鳴)
BP:ドウゾコチラへ。新婦サマ専用ノ通路デ出入口マデ、オ見送リ致シマス
つゆり:ありがとう
つゆり:すぐに戻るから。ヒールとかなんなの走れないし!!
つゆり:はあはあはあ、長ったらしいスカートとか!!
新:(N)つゆりはマーメードドレスの裾を持って裸足で俺のいる墓地まで走った。その間も晴天の中、雷は更に大きくなっていく
つゆり:やっと、やっと付いた。って何なのよ。久しぶりにあったと思ったらお墓に入ってるとか。お前が、お前が約束通り俺を、俺の妹を迎えに来ないから来ちゃったじゃん。ごめんな、何にも知らなくて。何にも気づけなくて。だから遅くなっちゃった。新、やっとまた会えたね
:バリバリバリ
新:(N)つゆりを追いかけてきた人々が見たのは、俺の墓の前で雷に打たれていたウエディングドレス姿の彼女だった




