同時進行
37話です。
バリバリ。
「カンナ!作戦通りにもう一人は俺がやる」
マギアはもう一人の管理人に向かっていった。
対して、カンナは正面にいる未だ正体不明の管理人と相対する。
カンナの思考は戦いながらも、管理人のヒューマについての考察を繰り返していた。
頭にあるのは先ほどの針爆弾の攻撃を受けた管理人の動きである。
カンナの弾丸すらスローモーションに見える目には、奴の一挙手一投足まで観測されていた。
あいつは針の波状攻撃を避ける気すらなかった。
それは当たらないということが分かっていたということ。
ヒューマは“透明化”ではなく、実体をなくす? “透過”?……
いやでも……それなら発動した時に全てをすり抜けるはず……。
「避けるねぇ」
思考は止まらずとも、攻撃の手も緩まない。
当てる気のない攻撃ではないが、銃ではカンナには当たらない。
でも……地面にすり抜け落ちないということは、その線はない。
だから付け狙う隙はあるはず……。
無敵のヒューマなんて存在しない。
人の範疇から出ない、それがヒューマだから。
出た時には何かしらの不具合があるはず。
充電(私のヒューマ)も電気量や貯蔵量には限界があるし、それを超えたら怪我をした。
限界はある……そうであれ。
「何かを考えているだろ? 賢い作戦かい? でも無駄だよ全部」
その挑発を聞いたカンナは嘲笑を交えて返す。
「考えながらでも戦える程度だからでしょ?」
「……言うね」
その頃、マギアはもう一人の管理人を大剣で倒せる射程範囲内に捉えていた。
「もらった」
その数秒前。
マギアへの攻撃を何度も外しているもう一人の管理人の方へ、管理人は一瞬だけ視線を向けていた。
「余所を見ている暇があるの?」
カンナは的確に顔を蹴るが、すり抜ける。
「うるさいなあ……」
その時、管理人は走り出した。
カンナに向かって一直線に。
ぶつかると思った瞬間、身体の中を通り抜けられるという奇妙な感覚が走る。
そして、そのままカンナを無視してマギアの方へ向かう。
カンナはそれを止めるように、後ろから蹴りを叩き込む。
「私を無視するなっ!」
背中への一撃は空を切る。
「危なっ」
今までと違い、“避けた”。
カンナはその行動に違和感を覚える。
何故、今の攻撃を“避けた”?
反応が……間に合っていない?
管理人は攻撃を避ける必要がないという仮説が崩れる。
先ほどと違う点は何だ?
あっちを見ていた……マギアの方を……もう一人の管理人を……。
すり抜け……。
何故か同時に攻撃してこないもう一人……。
上からの力……。
補助……ワープ……銃の生成……。
離れている時は、すり抜けだけ……。
「……二人で一つ……」
まとまりきらない思考が、そのまま口から零れた。
それは意図して出した言葉ではなかった。
出るはずのない仮説だった。
その言葉を聞いた瞬間、管理人の表情が“止まる”。
別の意味で、空気が凍る。
顔に出たな……。
今のは、確実に当たりの顔だった。
マジかよの顔だった。
“二人”は当たっている……。
笑うな……こんな幸運はない。
「出任せ言ってみるもんだね」
カンナの言葉には、抑えきれない喜びが滲んでいた。
その感情は管理人にも伝わり、怒りへと変わる。
「こいつ……」
あっちに意識を割いた瞬間、こっちは甘くなる……。
それを同時に処理している。
すり抜けも瞬時には発動できないはず。
もし瞬時にできるなら、攻撃を避ける必要がない。
超高速の攻撃なら――当たる。
「マギア! 押さえといてそいつ!」
マギアはその声を聞き、“その時”が来たことを理解する。
「了解だ!」
そして、もう一人の管理人を押さえ込む。
「よし……決まり! 使うよ……奥の手!」
限界突破――使用“80%”。
『鳴神』――!
タイトル通りに戦闘を同時進行で書いてみました。




