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Huma Gear  作者: 近藤世界
『官房長官編』ーー終幕ーー

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31/39

躑躅森先生の話

31話です。

1週間も更新がなくてすみませんでした。



教訓は書いたものはしっかりと保存を押しましょう!

本当にそのとおりです。

「マギア君、車酔いは収まったかい?」

躑躅森はソファに座っているマギアに確認を取る。

「はい!落ち着きました!大丈夫です!」

「それは良かった……では君たちの本題に入ろうか」


躑躅森はソファに腰を据えて、話をするためにこちらを見ている。


「それでは……何から聞きたい」

「あなたから見て“ヒューマ”とは」

躑躅森は投げかけられた疑問に答えるために、少し頭を捻っていた。


「……そうだね……我々の見解ではヒューマは不思議な力ではなく、生物由来の機能だと思っている」

「機能?あれがですか?」

思わず聞き返してしまう。


「そうだね、幻想的ファンタジーのような力だけど、詳しくメスを入れてみれば分かることもあった」

「私たちの仮説では要因は“ヒューマ因子”だ」


因子?名前的に細胞や身体機能の一種なのか?


「これはヒューマを扱える者の血中に含まれる因子の一つでね、今までも発見されていたが役割のない細胞の一つと言われていたんだ」


「それをヒューマと紐付けるのは些か(いささ)早計では?」

「そうだね、私たちも裏付けるものが欲しかったね。その内の一つは君だ、マギア君」

「俺?」

マギアが名指しされるとは思っていなかったのか、素っ頓狂な返事をする。


「君達は施設で心体検査を受けただろう」

私もマギアも頷く。

「ああ、体重や身長に血液を取られ……あ!」

確かに、私も血液を取られていた。


「君の血中には因子が存在していなかった。カンナ君やマギア君の世界のヒューマ使いは確かに保持していた」

躑躅森は自分の考えを続ける。

自らの仮説を決定づけるように。


「これだけでは確証には至らないだろう。そこで二つ目だ」

「カンナ君が捕獲された時に吸ったガスや、施設での食事には血中の因子を少なくする薬が盛られていた」

確かに、あの時はヒューマが一切使えなかった。

「これの開発には時間はかからなかったし、お陰でヒューマ犯罪の安易な鎮圧が行えた」

「だから、俺にはあのガスが効かなかったのか」

「そうだね、君には睡眠ガスを投入するしかなかったね」

「とにかく、この二つの事象からヒューマを扱える者には血中にこの因子があると結論づけた」


今の二つの説明は、私の中にある考えを明らかにあちらに傾けるには十分すぎた。

となると、ヒューマはどのようにして発生しているのだろうか。


「ヒューマの発生方法は何でしょうか」

「いいね、今の話の次に話すのにぴったりだ」

「ヒューマの発生方法は対象部位に因子が流れることで発動できると推測するね……」


躑躅森は立ち上がり、部屋の奥からホワイトボードと全身の血管図が描かれた紙を持ってきた。


「例えば、角谷のヒューマは手から打ち出した物に、何かに当たるまで等速直線運動を付与するほどの力を持つヒューマだ」

指差し棒で血管図をなぞり、手があるところで止まる。


「彼の場合は血中の因子が手を通った際に能力が起こる」

指差し棒は指先に移動した。


「対象部位の行動と因子の力が結びつき、能力を発動できる状態になれるんだ」

そして勢いよく飛んでいくように動いた。


「君たちにも思うところがあるだろう?」


思い返してみると、私のヒューマは全身にビリビリとゾワゾワが走る感覚があった。

ビリビリが電気で、ゾワゾワが因子の反応なのだろう。


「ああ、炎帝も呼吸にヒューマが呼応しているように見えたぞ」


「見たところ覚えがあるようだね」


躑躅森が一息ついて、伸びをする。


「どうだろうか?私が知っているヒューマについての話はこれぐらいだね」

「他に聞きたいことはあるだろうか?」

私は思うところが一つだけあり、彼なら答えられるだろうと手を挙げた。


「何だい?」

「何故、急に私たちもヒューマを使えるようになったのでしょうか」

「なるほど……何故、マギア君達の世界が繋がったタイミングでヒューマが使えるようになったかの質問だね」

躑躅森は質問を受けてから少しの間、熟考していた。

そして口を開く。


「……私が思うにこれは……能力が“潜在状態”にあったと思うね」

「“潜在状態”?」

「そう、前提としてマギア君達と私達の人類はゲノム配列が99.9%一致している同種の生物だ」


「違いはヒューマを使っていた世界に存在していたか、いなかったかぐらいだろう」


「生物の使わない能力は潜在状態になる、分かりわすく例え話をしようか」


躑躅森はスマホを開き、画面を見せてくる。


「これはサバクトビバッタというのだが、知っているかい」

「名前だけは」


「これらの種類は単体では孤独にひっそりと臆病な『孤独相』になるが、群体になると羽根が長くなり、体色も黒くなり、性格も獰猛な『群生相』になる」


「彼らの遺伝子の中には両方の可能性が眠っている。環境によってそれが変わる特異な生物なんだよ」


今の話とヒューマが関係あるのだろうか……。

怪訝な顔になる。


「今の我々にも似ている――ヒューマを扱える人間が現れたことで、我々もヒューマを扱う必要性が生まれた」


「これをエピジェネティクスという、いわゆる環境によるスイッチだ」

「これを人間に当てはめると、マギア君達は顕在状態でヒューマを扱える可能性を常に保持していた」

躑躅森はマギアのことを指して喋る。


「対して、我々は潜在状態だったが、顕在状態の生物に当てられ顕在状態に身体がならざるをえなかったんだろう」

躑躅森は私たちを指差す。


「進化の過程をすっ飛ばし、生物学的・科学的に説明するにはこれが一番近いと思うね」


「どうだろうか?納得できたかい?」


「ええ……とても……」


話ができすぎている……これが仮説であることを忘れるほどに。

生物の歴史を身体で体験したかのような時間だった。


「それでは……私の本題に入ろうか」

「本題?!」

「今の話が本題ではなかったのか?」

「君たちに声をかけたのはある目的があってのことだ」

本性を出したかのように見えた躑躅森に対して、マギアは背中の大剣に手をかける。


「それはヒューマを扱えて、二つの世界を知っている者である必要がある」

話が変わり、マギアの手が大剣の持ち手でピタリと止まる。

「角谷に託そうかと思ったが、彼は二つの世界の力を合わせた君たちに負けた……」

躑躅森は力強く私たちを見つめる。

「もしかすると、私たちとマギア君の……二つの世界が壊れるかもしれない……話を聞いてくれるかい?」

1週間以内には出したい。

サバクトビバッタの話は有名だから出しましたが、分かりやすかったでしょうか?

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