分からない
24話です。
これであなたも管理栄養士。
声もでかいということは何かもでかいというわけです。
想像力を使ってください。
ここはどこだ……。
記憶が曖昧だ。
冷たい壁と床は打ち付けのコンクリだ。
出口をふさぐ鉄格子に、外から鍵がかかる扉……。
そして、正面にいる女性。
なるほど、ここは俗に言う『監獄』か、それに分類する施設だろう。
窓はないな。
しかし時計はある。
現在の時刻は17:30か。
これは食事を通すための穴だろう。
コツコツ……
誰か来る!
そこに現れたのは、見覚えのある格好をした男だった。
『対特』の制服を着た男が、施錠された扉を開ける。
「起きたか!029番!出てこい!」
私はヒューマを使おうとした。
しかし……
「ヒューマを使おうとしたろ?使えないぞ」
何故だ?
ゾワゾワを感じられない。
「フン……着いてこい!検査を受けてもらう!」
私は『対特』の男についていく形で廊下を歩いた。
そしていくつかの部屋を通り、重厚そうな扉のある部屋に着いた。
「心配するな……検査は女性が行う」
検査は30分もせずに終了した。
よくある血液検査と、身長体重測定などの基礎検査で終わった。
19:00の食事の時間までは、じっとしていろと言われた。
どうしようか……。
「あの……」
ん?
目の前でずっと黙っていた女性が声をかけてきた。
「どうしました?」
「あなたもヒューマで捕まったの?」
「そうです……あなたもですか?」
「ええ……犯罪は何もしてないんです……グスッ……通報を受けて……三日もここに……」
「それはお辛いですね……ここはヒューマを拘束する場所であっています?」
「グスッ……はぁい……」
今にも泣き出しそうだな……。
早いうちに情報を聞こう。
「あの……男の人は見てないですか?190cmぐらいの大男は」
駄目だ……顔を埋めて泣いてしまった。
仕方ない……一人で考えるか……。
ここはヒューマを拘束する施設であっているだろう……。
そして、なぜか今の私はヒューマを使うことができない。
情報が少なすぎるな……。
今は何もできないか……。
今の時間は18:54。
そろそろ食事が来るらしい。
時計があって助かった。
無ければ気が狂いそうになるだろう。
19:00
コツコツという足音が聞こえる。
等間隔で立ち止まり、カチャッと何かを置く音。
そして毎度のこと、こう言う。
「029番食べろよ」
そう言ってコツコツとどこかへ歩いていった。
止まった回数は、私を含めて7回だ。
私の番号が029番で、正面の女性が023番なので連番ではない。
少なくとも、この施設に六人は私の間にいるのだろう。
その中には恐らくマギアもいるはずだ。
20:00
風呂の時間らしく部屋を出された。
入浴時間は一時間。
このような場所にしては長いのか?
この区画の女性全員が風呂に入れられていた。
正面の女性。
それと、もう後二人の女性。
こっちの二人に話を聞いた方がいいな。
「すみません……私……新人で、どうすればいいか分からなくて……」
「あなたね!新しく来た新人は!」
「あ、はいそうです」
「何が分からないの!」
声もデカいな……。
「実は……」
21:00
ギリギリまで大浴場で情報集めに粘った甲斐があった。
一つは全体マップだ。
これのお陰で、私の区画の他に五つ、同じような場所があるのが分かった。
中央の管理棟から連結しているような形で合理的だ。
早めに上がったため、マップは頭に入れることができた。
二つ目は、何かでヒューマを抑制された気がするという疑問の確証だ。
時間経過でヒューマが使えるような気がするという疑問を話したら、あの二人は同意してくれた。
恐らくは薬か何かの部類だろう。
空気中に散布されているのならば詰みだが、あれならまだ考えようがある。
おまけによく聞こえなかったが、
「新入りのデカブツは飯の量が多くてホニャララが大変」
という看守の愚痴まで聞こえた。
ここから導き出されるのは……
ヒューマ能力は薬で抑制されているか、
そのものが消されたか……。
恐らく前者が濃厚だろう。
そうではなくては困る。
「貴様ら消灯時間だ!電気を落とすぞ!」
消灯時間が来たか……。
今は寝よう。
7:00
「起きろ!起床時間だ!」
なんだ……ここは……。
もう少し寝てもいいだろ……。
「7:30に朝食を提供する!それまでに目を覚ましておくように!」
うるさいな……寝ようかな……。
駄目だ!
起きていないと……。
少しでも脱出の手口を……。
眠気が凄い……。
いつもはマギアやおじいちゃんが起こしてくれるからな……。
改めて感謝を伝えなくては。
7:30
「029番食べろよ」
「はい」
「返事よし!」
私は提供された食事の一部を捨てた。
少しは食べることにした。
お腹が空いていれば力が出ない。
今日の私は、提供される食事の量に着目した。
023番は私よりも身長のある人間だ。
そして、彼女の方が多く食事が提供されていた。
他の人間に確認を取ったが、食事量は通常よりも多いらしい。
さらにこの説を強くさせたのは体重測定と身長測定だ。
それは何かを合理的に摂取させるためだろう。
そして時はきた。
12:00 昼食の時間
「何をっ……何故ヒューマ能力が使える……」
「使わせないよ警報機は」
「答えて!ここは何処!何をする場所!」
「何故使える……教えてからだ……」
「……私は食事を一部隠した……確認を怠ったね」
11:40
ゾワゾワを感じる……。
これは使える!
ヒューマ能力が!!
カンナの推察は当たっていた。
ここで提供されている食事には、血液中に含まれるヒューマ因子を減少させる薬剤が混入されていた。
それは個人の身長と体重から算出された適量のみを混入させたものだった。
食事を抜かず食べきれば、次の食事時間までは効果が切れることはない。
しかしカンナは食事を一部捨てたことにより、薬の効果時間を短くしていたのだ。
現在
「ほら!言ったよ!話して!」
「…………」
黙ったままだったので、気絶させて牢屋に閉じ込めた。
鍵を奪い、中央管理室に向かう。
そこに行けば、マギアの情報やここが何かがはっきりするだろう。
「待って……私も連れて行って……」
正面の女性、023番だ。
「行きたいの?」
「……うん」
リスクが大きい……。
それにこの人はヒューマ能力を扱いこなせるのか……。
「お願い……」
「仕方ないな……」
023番を牢屋から出すと、他の人に声をかけ始めた。
待て……待て……
あなたはいいが……
私の許可は?
失敗だった……。
着いてくるのは023番と、風呂で喋った声のデカい女性と、ひょろい男性。
他は出ないらしい。
正直言うと最悪だ……。
ここは切り替えよう。
「今から脱出のために中央管理室に行きます!付いてきてください!」
「了解!」
だから……声がデカい……。
中央管理室までに障害はなかった。
問題なくたどり着ける!
いけるぞ、これは。
ここを曲がれば中央管理室だ。
【ゾワッ】
産毛が逆立つ。
気配を感じなかった。
足音すらしなかった。
副官の角谷だ。
こちらを見て、驚いたような顔をしている。
「分からない……何故、管理から出ようとする」
「あんた達の管理なんてごめんだ!」
「そうだ!」
待って。
声のデカい女性しかいない気がする。
これを書く時に参考にしたのは網走監獄などのシステムです。




