おかえり
22話です。
別れ際、権蔵さんが呼びかけた。
「おい!マギア!俺の前でその大剣を持っていくつもりか?」
「む、そうだな!こんなふうになってしまったが大丈夫だろうか?」
権蔵さんは、外装が溶けた大剣を受け取り、さっと見回す。
「……直してやるが……俺にはこれ以上強くはできねえ……」
こういう話になると、私は蚊帳の外だ。
「直すだけだ。これからはお前が強くなれ」
「そうだな!これからは俺自身を鍛えていかねば!ありがとう!権蔵さん!行こうか」
「じゃあね」
「おう、じゃあな」
それにしても、誰も歩いていない。
もともとこの辺りは人が少ない方だが、今日は異常だ。
権蔵さんの言った通り、みんな家で身を守っているのかもしれない。
「カンナ……気をつけろ、誰か来ている……」
「えっ……」
目の前から誰かが歩いてくる。
あれは――
「柳さん?」
「柳さんではないか!」
「……ん、お前らか……久しぶりだな」
「柳さんは何をしているの?」
「この辺りの警備だ……最近、何かと物騒だからな……この前は権蔵さんも襲われていたしな……」
「それは本当か!?」
そんな素振りは少しも見せていなかったので、驚いた。
柳さんはマギアの身体を見上げるように、じっと眺める。
「柳さん?」
「マギアといったな?……少しはやれるようになったようだな」
その顔には、うっすらと笑みが浮かんでいた。
「私は見回りを続ける……お前らは早く帰れ……お前の爺ちゃんが心配していた……じゃあな」
返事を待たず、柳さんは歩いていった。
私たちも、家へ向かう。
家の前で立ち止まる。
急に街から消えて6日間、連絡も無し。
ヒューマの一件で治安も悪化している。
怒られる気しかしない。
一番、緊張する瞬間だ。
私は恐る恐る扉に手をかける。
音を立てないように、そっと開ける。
「た……ただいま……」
声が家の中に吸い込まれる。
いないのだろうか――
その時だった。
家の奥から、ドタドタと足音が響く。
「お前ら!!どこに行っていた!!」
おじいちゃんが廊下から飛び出す。
まるで跳躍する獣のように空中へ。
私の横をすり抜け、マギアへ一直線。
右腕を大きく振り抜き――
バチン。
肉が打ちつけられる音が玄関に響いた。
完璧なラリアット。
「ガハッ!」
素人目でもわかる、クリーンヒット。
二人は玄関に倒れ込む。
「大丈夫?!二人とも!」
マギアは首を押さえて悶絶している。
私が見た中で、マギアが一番ダメージを受けているように見えた。
それを尻目に、おじいちゃんは立ち上がる。
そして、私を見る。
「鉋!」
「っ!はい!」
「わしは心配した!鉋が死んだと思った!二度も家族を見送っているんだぞ!」
「お前が、わしの唯一の家族であることを忘れたのか!」
「ご……ごめん……ごめんなさい……!」
私の目から涙が零れた。
私は怒られたから泣いたわけではない。
安心したのだ。
おじいちゃんが、ちゃんと怒ってくれたから。
「マギア!」
「はい!」
「さっきの一撃で許したわけではない!!」
「おっしゃる通りです!」
おじいちゃんはマギアを睨みつける。
「この子に何かあれば、わしはお前を殺していた!」
「しかし……二人で無事にこの家に帰ってきたならば……お前にも」
空気が返事を待つかのような沈黙が生まれた後に。
「おかえりと言ってやる!」
「ただいまです!」
「よろしい!中に入れ!二人とも!疲れているだろ!」
私は濡れた目をこすりながら家に入る。
マギアと並んで。
「ただいま」
「鉋!風呂に入れ!マギアはその後だ!その間に飯の用意をしてやる!今夜はごちそうだぞ!」
この空気。
この家。
この二人。
これが、私の“日常”だ。
非日常に飲まれたこの6日間。
そう、やっと実感できた。
これが私の“世界”だ。
21話からためがなくなったので毎日投稿が絶対できるようにはなれなくなりました。
多分、1日1話か2日1話で投稿できると思います。




