『6日間で世界は変わる』
21話です。
遅れて申し訳ない。
「お前らがいない6日間でな……世界は静かにひっくり返った」
権蔵さんは、いつものように腕を組みながら言った。
だが、その目は笑っていない。
「まず、“穴”が公表された」
私とマギアは顔を見合わせる。
「公表……?」
その時だった。
工房の奥に置かれたテレビから、落ち着いたアナウンサーの声が流れる。
《一昨日、政府は未確認空間現象、通称“穴”の存在を正式に発表しました》
画面には、見慣れた街にぽっかりと開いた非日常が映し出されている。
《また、もう一つのヒューマ世界の存在も確認されており、現在、情報の精査を進めています》
映像が切り替わる。
そこには官房長官が映っていた。
落ち着いた声でゆっくり語りかけるように。
「未知を恐れる必要はありません。必要なのは、正しい理解と、適切な“管理”です」
――管理。
その言葉が、やけに重い。
権蔵さんがリモコンを静かに置いた。
「発表の翌日からだ。社会の空気が変わった」
――店の外のざわめき。
「お前、ヒューマじゃないだろうな?」 「自衛のためだ、仕方ない」 「ヒューマが犯罪を起こしたってニュースでやってたぞ」
ヒューマ疑惑。
通報。
監視。
買い占め。
疑い。
「たった数日で、目に見えない壁ができた」
テレビの映像が変わる。
《そして、本日、“ヒューマ管理法案”が緊急可決されました》
「ヒューマ能力の登録義務化、無登録能力行使の禁止、特定区域への立ち入り制限――」
官房長官は続ける。
「これは差別ではありません。社会の秩序を守るための措置です」
秩序。
皆の安寧と安心を得るためには必要なもの。
なんて正しい言葉だ。
間違っていない。
なのに、息が詰まる。
私は自分の腕を見る。
雷撃痕。
服で隠せる。
でも、消えない。
マギアの足も、焼けたままだ。
6日間。
たった6日。
“穴”に落ちて、知らない世界を知って、炎帝を倒して、帰ってきた、だけなのに。
世界は、もう別物だった。
「……ま、そういうわけだ」
権蔵さんの声が、少しだけいつもの調子に戻る。
「お前らがいない間に、世界は決まっちまった」
決まった。
私たち抜きで。
沈黙が落ちる。
マギアが拳を握る。
私は、立っていることしかできない。
テレビの音だけが、静かに流れる。
《新時代に向けて、我々は前に進みます》
前に。
進む。
権蔵さんが、ふっと息を吐いた。
「とにかく……」
目が、ほんの少し柔らぐ。
「おかえり」
その一言で、胸の奥がようやく緩んだ。
6日間で世界は変わった。
でも。
私たちは、まだここにいる。
この世界に存在している。
自分が納得する形にたどり着くまで時間がかかってしまいました。
文章量も少なめですが、情報は詰め込めたつもりです。




