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いってらっしゃいませ!

俺は未来から猫型ロボットがやってこないかと夢見ていた。奇跡を体現する道具を使ってみたかった。

だが、いざ机の引き出しから出てきたものはどうだ。猫型ではなく、猫耳型美少女ロボット。道具もネコえもんのものとは違うが、現代では到底創れそうにもない。彼女のここに来た目的は何なのだろうか。


「一つ質問良いかな。えーと、ミーシャ…K…」

「ミーシャでいいですよ!」

「それじゃあミーシャ、君はここに何のために居候しようと思ったんだ?」

「ふむふむ…聡太さんはつまり目的が知りたいということでしょうか?」

「あぁ」


何故だか知らないがこちらの名前は既に把握しているようだし、俺の未来を変えるためにここに来たとかそういうのだろうか。


「あはは……結構痛い質問ですねぇ…」


ミーシャは急に遠い目で虚空を見据えながら自嘲気味に笑った。俺は疑問を浮かべながらも先を促すと、


「…基本、私達ミーシャ型のロボットは将来社会に貢献する予定の人間の子供時代に飛んで、その子を正しく育てるという仕事を与えられているのですが………私がポンコツのせいで何人も失敗しちゃって…ついに会社をくびにされちゃいました。

……それから私は人間だけではなくロボットにも馬鹿にされ、あそこの時代には居場所がなくなってしまいました」

「……………………」


どうしよ…予想以上に重い話だったんですけど。

だがミーシャはそこまで話した後、急激に目を輝かせてこちらに顔をずいっと寄せてくる。


「でもでも!そんな私でも出来そうなお仕事が見つかったんです!仕事内容はとある過去の時代にいってそこの現地調査結果を私達の時代、つまり聡太さんたちでいう未来に送り続けるというものです!皆面倒くさがってやりたがらないのですが、私にとっては天職のような話でした!」

「……なるほど…それで居候ってわけか………普通なら信じられないけど…」


その言葉にへにょりと猫耳があからさまにしおれ、ミーシャも寂しく笑みを浮かべる。


「…そう…ですよね…あはは………こんな言葉信じるわけ…ないですよね…」

「あぁ、普通なら…な。だがお願いを聞いてくれるなら俺は君の話を全て信じる。」

「お願い?………はっ!まさか私にあんなことやこんなことをしたいと!?」

「違うわ!」


まぁ、別のあんな夢や色々なお願いを叶えてもらう予定ではあるが。


「君の存在は道具は俺にとって、非日常の入口。つまり夢にまでみたものなんだ。俺がみた色んな夢を叶えてくれるなら、この退屈な日常を楽しいものへと変えてくれるなら…俺は君を信じる」

「非日常……分かりました!聡太さんの願い、叶えられるだけ叶えてあげます!」

「…ありがとう。取引成立だ」


ピョコンッ!と勢いよく猫耳が立ち上がり、ミーシャの顔もぱぁっと花が咲き乱れる勢いで晴れていく。


「じゃ…じゃあ!ここに居候してもいいってことですか!?」

「俺は問題ないよ。ただ…両親が……」

「そちらは問題ありません。うまく道具をつか……うまく説得してみせます!」

「凄まじく不安しか残んないんだけど!?」

「大丈夫です!世の中…最後に頼るのは…おこれですよ」

「金のジェスチャーやめろ!キャラ崩壊しかけてんぞ!」


ミーシャは「冗談です」と優しく微笑み、丁寧に頭をこちらに下げる。


「受け入れてくださり、ありがとうございます。この御恩、きっと返していけるように頑張ります!」


その小さく健気な猫耳頭を俺はそっと撫でで頷いた。


「こちらこそよろしく。ミーシャ」

「はいっ!………ところで聡太さん…」

「ん?どうした?」

「学校は何時に始まりですか?」

「………………はっ!しまったあああ!!」


時計は無慈悲にも10分まえを指している。このままでは確実に遅刻だ。

急いで玄関まで走ろうとした直後、あの猫耳の存在を思い出す。


「ミーシャ!早速だが大ピンチだ!なんとか10分以内に学校にいける道具とかないか!?」

「あります!ちょっと40秒で支度します!」


そういってミーシャはワンピースを前にぴっぱり、なかに手を入れてもぞもぞと動かす。


「えーとコレじゃないコレでもないコレ!…じゃない!あわわわっ!」


ワンピースの内側からは次々と色々なものが放り出されていく。どうやらポケットはワンピースの内側にあるようだ。そしてなかなか出てこない!


「あ、ありました!この『どこでも入浴剤』をお風呂にかけて湯船に飛び込むと自分の行きたい場所に転移することができます!」

「よし!って……入浴剤?」

「安心してください!これを入れたあとにお風呂にダイブしても制服は濡れません!」

「そ、そうか…よし!使わせてくれ!」

「はいっ!ではお風呂場にいきましょう!案内よろしくお願いします!」


俺は急いで玄関から靴と荷物を拾ってお風呂場に向かい、素早く風呂に『どこでも入浴剤』を注ぐ。その瞬間、湯が白い光を放ち始めた。制服のまま風呂に突っ込むのは抵抗があるが、濡れないという言葉を信じて飛び込むしかない!


「じゃあ!ひとまず今日は俺の部屋にいてくれ!一応鍵かけといたけど留守は気をつけてな!」

「分かりました!いってらっしゃい!聡太さん!」

「行ってきます!」


身を乗り出して飛び込んだ直後、俺はある違和感を抱き、すぐに原因を理解した。


(…そうか……誰かに見送られて家を出るの……今日が初めてなんだ…)


心地よい光の中で、そんなことを思うと、少女の可愛らしい笑顔が脳裏に浮かんでいた。





「行っちゃいました……」


ミーシャは少し寂しそうに湯船をしばらく見つめていたが、やがて湯栓を抜き、白い湯を流していく。この『どこでも入浴剤』をかけた湯は、浴槽から離れると自動的にただの湯に戻るので他の物を転移させてしまう心配はほぼ必要ない。欠点を挙げるとすれば…


「……あ!この道具の欠点教えるの忘れちゃいましたあああああああああ!!」


入浴剤のパッケージ裏には黄色い表記でこう書いてあった。


『ただし、転移した人間の下着のみ濡れます』





気が付けば俺は、校舎の陰にいた。ちょうど倉庫が全方向を遮ってくれているおかげで誰からもばれずに転移出来たと思う。制服も濡れておらず、持っていた荷物も問題はない。ただ…


「パンツだけ滅茶苦茶濡れてんですけど!?」


ズボンすら侵食しており、このままではまるで漏らしたようにしか見えない。


「くっ…とりあえず、パンツだけ脱ぐか」


自己最高記録のダッシュで校舎に入り、最寄りのトイレの個室でパンツを脱ぐ。ズボンを直接はくのはなんとも落ち着かないものである。

キーンコーンと、登校時間終了のチャイムが鳴り響く。とりあえずパンツはバッグの横ポケットにしまい、俺は教室へと駆けた。



「あー……なんか疲れたわー…」


教室にたどり着き、なんとか朝礼を切り抜けるとそのまま机に突っ伏す。なるほど、存外に非日常も疲れるものだ。まぁ今日は起こったことが多すぎて整理しきれていないだけかもしれない。


「よう聡太!今日は珍しくギリギリ登校じゃねぇか!」


……………疲れてるのに面倒な奴に話しかけられてしまった……とはいえ無視するとさらに面倒なので顔をわずかだけそちらに向ける。が、あいからず筋骨隆々の色黒グロい体を至近距離に近づけてくるため椅子を少しずらして返す。


「お、おはよう…岡田…お前こそ朝からいるなんて珍しいな」

「ふっ…昨日夢で、早く学校行ったらキスしてくれるとお前が夢のなかで約束したからな…つい…な?」

「気持ち悪いわ!心の底から気持ち悪いわ!あとなんで仕方ないよねっ、みたいに言ってんだ!」

「ま、まさか…約束を破るのか…俺の穴は破ってくれないのか!?」

「現実で約束してねぇし!ゲイワードで俺の耳を汚すな!」

「よく振り返ってみろ聡太………約束…してね?」

「してねぇよ!死んでもねぇわ!キモイ妄想はお前の夢の中だけにしてくれ!」

「いや、夢では…もう何回もしてるぜ…」

「おええええええええええええっ!!」


俺が轟沈したのを確認した岡田徹おかだ・とおるは何故か満足げな顔で最後にこちらにウインクというゲロを投げつけてきたあと席に戻っていった。岡田……お前のゲイ魂、少しは死神にでも献上してこい。

ふと窓から大きな音が響いてくるのを感じ、顔を向き直すと、金ピカ王もドン引きの無駄に装飾がおおいヘリが学校の方向に近づいてきていた。あー………あいつかぁ…

案の定そのヘリは校庭に爆音を響かせながら丁寧に少年を下ろす。もはや騒音問題としてデモが起きてもおかしくない。が、その問題の解決は簡単だ。学校付近に住んでいる者全員に文句が言えないほど金を渡せばいい。

そんな庶民じゃ絶対に不可能な解決方法を実行可能なやつこそ、


「やぁ!おはよう皆!今日もすがすがしい朝だね!」


今教室に入ってきた超巨大財閥の長男、光山裕人こうやま・ゆうとである。ちなみに言うと、俺にとって『友達だけど面倒な奴その2』でもある。その1はもちろんゲイ岡田な。


「おっ!今日も貧乏そうな庶民面だね沖原君」

「うっせぇ、光山財閥長男のお前と比べたら誰だって金なし貧乏だ」

「何を言う沖原君、今日は自重して20万しか持ってきてないよ」

「お前ぶっ飛ばすぞマジで!」

「僕を倒してもコインは落ちないよ?札かカードが落ちるかもしれないけどね」

「うぜぇええええええ!!」

「まぁ落ち着けよ沖原君、お詫び奢るから。どの飲料メーカーがほしいの?」

「メーカー!?ジュースじゃなくて会社のほう!?」


どんな規模で話してんだよ!


「あ、もしかして………新しく飲料メーカー創りたい派?」

「そんなもしかしては万に一つもねぇよ!!」


カプチーノとカフェラテどっち派?くらいのノリで会社を創れちゃうコイツ凄まじく恐いわ……金銭感覚とかもうそういう次元じゃないな。


「ま、奢る話はまた今度にしよう。授業始まるし僕もそろそろ席につくよ」

「あぁ…分かった。せいぜいしょぼいもん奢ってもらうよ」

「しょぼいもの……ゴデヴァのチョコ?」

「ぶん殴るぞお前!」


光山もひとしきりボケたせいか、楽しそうな表情で席に戻っていく。それに合わせたように授業開始のチャイムが鳴り、俺は前の空席をちらりと見る。


「今日も休み…か…」


教師がガラリと扉を開けて教室に入ってくる。学校にいる間はしばらくいつもの日常が続くだろう。

復習はなるべくしたくないから授業はいつも通り本気でやるかぁ。

そう思って授業を取り組んでいくうちにあっという間に時間は過ぎていった。

学校の日常が急激に変化したのは、昼休みからだった。




時刻は既に11時を指しており、とりあえず現在の状況を電子日記に纏めたミーシャは目標を完全に見失っていた。

むむむ…いざ居候をするとなれば具体的にどうすればいいんでしょう……お部屋の片づけでしょうか?いえ、まだ聡太さんのお父様,お母様に会ってすらいないのに物に触れのは失礼にあたるかもしれませんし……何か手伝えることは無いのでしょうか…

そう考えながらリビングに来た私は、テーブルの上にある書置きと包み物を発見しました。


『聡ちゃんへ 今日は久しぶりにお弁当作ってみました! 学校頑張ってね 母より』


「こ、これは!?…聡太さんの忘れ物ですか!?あわわわっ!どうしましょう!」


きっと聡太さんのお母様は、忙しいのに時間を費やして一生懸命愛情をこめて作ったに違いありません!それを食べてもらえなかったとなるときっとお母様は悲しんでしまうかもしれません!

私はワンピースの裏側に付いている収納布から『どこでも入浴剤』を取り出……取り出…違うこれ…あ、あった!お風呂に水を溜めます!…くっ…『瞬間転移リストバンド』があればこんなことしなくて済むのですが…無いものねだりは仕方ありません!今はただ水を私の体をすっぽり入れるようになるまで溜めるのみです!


「待っていてください!聡太さん!私が絶対に届けて見せます!」



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