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未来からやってきました!

五月二日。午前5時15分。

そろそろ起きなければ時間に遅れてしまう。

そうは思いつつも、なかなか起き出すことができないのが布団の真の恐ろしさといえよう。あぁ、寝ながら勉強できる道具とかないかなぁ…

………ぐだぐだ言ってもしょうがないかぁ…


「っし!今日もそれなりに頑張るかぁ!」


窓のカーテンを勢いよく開け、日光をめいっぱい浴びて背伸びをする。これが意外と気持ちがいい。

自室の二階を降り、リビングで母親が予め用意したのであろう食事をいただく。両親はどちらも朝番組のアナウンサーで、俺が寝るころにはもう出社している。多忙なはずなのに、毎日の作り置きはこちらとしてもとてもありがたい。


「ごちそうさまでした」


手早く食器を洗い、学校の準備を玄関に置いて階段を勢いよく駆けあがる。予定より2分早い。好ペースだ。

何故こんなに俺が急いでいるのかだって?日課の剣これ午前演習のために決まってんだろ。

机に置いてあるPCの電源を入れログイン。設定どおり、何もしなくても剣これに画面は切り替わっていく。


「ふふふっ………今日は誰を秘書剣にしようか……あ…れ?」


【現在、サーバーにイレギュラーな負荷がかかっているため、緊急メンテナンス中です。終了予定時刻は15時を予定しております】


………………おぃいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!


「なんだよイレギュラーって!15時とかがっつり午前演習終わってるじゃねぇか!俺の朝の睡眠時間返してくれぇええええええ!!」


しばらく悶絶した後、おとなしくPCを切ってベッドに制服のまま横たわる。…もう疲れた…学校休もうかな……行ってもつまんねぇし……


「はぁ……なんか面白いことねぇかなぁ…」


例えば…そうだな…机の引き出しから未来のロボットがやってくるとか…

――――ガタッ

それか…自分の意志だけで空を自由に飛びまわったりとか…

――――ガタッ…ガタガタッ!

または……超人的な力を手に入れてヒーローになるってのも悪くない…

――――ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッッ!!


「あああああっ!うるせぇえええ!さっきからなんなんだ!…………ん?」


ただならぬ音量の不快な音にたまらず身を起こしてみるが、どうやら音源は机の引き出しからのようで凄まじく振動している。まさか……ネズミでも紛れてしまったのだろうか。…開けるの嫌だなぁ

とりあえずいつでも逃げられるように扉は開けておき、換気用に窓を開けた後は押入れにあった殺虫剤をを装備する。幸いなのが、あの引き出しには大したものが入っていないということだけだ。

今こうしているうちにも振動は大きくなり、今にも引き出しが壊れそうになっている。こうなったら………先制攻撃しかない!


「ええいっ!効くか知らんが、覚悟!!」


引き出しを素早く開け、殺虫剤を噴射しまくる。確か噴射し続けていいのは数十秒だった気もするが今回ばかりは許せアース!


「にぎゃああああああああああああああああああああああっ!?!」


おぉ!相手の苦しむ幻聴が聞こえる!このまま押し切れるかもしれない!

俺は雄たけびをあげながら、さらに引き金を強く引く。


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

「ちょちょおおおおお!?にゃめて!にゃめてくださああああああああああああい!!」

「敵に情けは不要!今こそ暁の水平線に勝利をおおおおおお!」


幻聴の声良く聞けば滅茶苦茶可愛い声だった気もするが、普段のゲームやりすぎだろう!いつものことだ!!

そこからさらに数十秒後、机の引き出しはもうカタンとも音を立てなかった。


「……か、かった……ふぅ…」


そう思えた瞬間、急に体から力が抜ける。とはいえ、こちらの殺虫剤の残量も残りわずか…きわどい戦争だった…

だが戦いの勝者はまだやることがある。事後処理というやつである。あの引き出しに何がいようと、きちんと処理だけはしなくてはならない。

たとえ……どんなものが…


「転がっていようとも!!!」


……………?


「ふぇえええ……全身真っ白ですよぉ………」


…………………………………は?


「うぅぅ………しかもベトベトするし変なにおいもしますぅ…………」


…………………………………………………うぅん?


「うぅぅ……来てそうそう酷い目にあい……あ…」


バンッ!!

目線が交差した瞬間俺は思いっきり引き出しを閉ざした。

いやいやいやいやいやいやいや!ちょっと待って!なんかいるんだけど!?

再度引き出しが暴れだしたのでとりあえず鍵を閉めてPCを机から降ろして深呼吸をする。いまは情報の整理が必要だ。

一分ほど深呼吸を繰り返すと、どうにか思考が動き始めてきた。

まず状況は……引き出しの中に広々とした闇が広がっており、そのなかに幼い少女が一人浮かんでいて、こちらを涙目で見つめてきていた。全身は殺虫剤を浴びたせいか真っ白かったが、なにより驚きなのはあれだけくらっておいて涙目だけで済んでいるということである。身の心配より先に真っ白になったことや、ベトベトになったことに悲しんでいる時点でただの人間ではない。

つまり…………さっぱり分からない。

あえていうならば……自分は今、とてつもない非日常に足を踏み入れようとしている!

カチャリと鍵をあけ、そっと中を覗く。そこで、


「えぐっ……うぅぅ…おねがいしますぅぅ…なんでもしますからぁ……えぐっ…開けてくださぁいぃ…」


幼女がそれはもう盛大に痛々しく号泣していた。

……………なんだろう、こっちは全然悪く無いはずなのに、凄まじい罪悪感に襲われた。


「お、おーい!だ、大丈夫かぁ!」


自分で殺虫剤をかけておいてこの言葉しか浮かばなかった自分を恥じながらも、大きな声で呼びかけると、少女はぐしゃぐしゃになったその顔のまま…


「ふぇええええええええんっ!!」


こちらに飛び込んできた!思わずのけ反って尻もちをついてしまうが、その衝撃より少女が胸に抱き着いてきた衝撃のほうが色んな意味で大きかった。あとちょっと殺虫剤のにおいがきついです。


「うわあああああああんっ!!入れてくだざりありがどうございまずぅうううううううっ!!」


そして少女の涙は俺の胸のなかで完全に決壊した。どうしていいのか決めかねていると、ふと少女の頭にひょこひょこ動くものがついていることに気づく。そしてよく見ると……尻尾も生えている。

え、ナニコレ…コスプレ?

好奇心に逆らえず、その頭を撫でてしまっていた。

我に返り、しまったと思ったが、なぜかその少女の顔は和らいでおり、むしろ嬉しそうな表情さえ浮かべていた。


「気持ちいいです、続きをお願いしてもいいですか?」

「……あ、あぁ」


まるで猫みたいだな、と思いながら頭を撫でる。ただひたすらに撫でる。………話を切り出すタイミングか分かんねぇ!コミュ障がこんな時に発動するだと!?

だがこちらの意図が通じたのか、少女ははっとした顔で立ち上がった。


「では私の自己紹介をしま……あ、ちょっと待ってください。殺虫剤落としますので」

「いや落とすっていってもそんなすぐには………何やってんの?」


少女は自分の服を前に引っ張り、内側をごそごそと弄っている。綺麗な肌が垣間見え、絵面的にかなり際どい!


「あ、あのー…恥ずかしいのでなるべく視線は逸らしてほしいのですが…」

「っ!…ごめんなさいすみません!」


光の速さで反対側を向き、目を手で隠す。これで完ぺ……

‐――――ゴソゴソ…


「あれ、ちょっと奥のほうにあるのかな…んしょ…あ、肩ひもが…」


――――ゴソゴソ…ゴソゴソ


音だけっていうのも心臓に悪すぎる!


「あ、ありました!もうこっち向いても大丈夫ですよ!」


振り返ると、少女が得意げな顔でピンク色の使い切りカメラを手に携えていた。随分懐かしいものだな。でもこれはいま必要な物だろうか?殺虫剤を落とす件はどこにいったんだ?

そんな疑問を浮かべる俺に少女はカメラを渡してきて若干の距離をとる。


「聡太さん、それで私を撮ってください!」

「……別にいいけど…これで何が……ん?」


今この少女、俺の名前呼ばなかったか?


「全体が映るようにお願いします!」

「……あ、あぁ了解」


まぁ……気のせいだろ。まだ自己紹介もしてないし、俺赤の他人に認知されるほど有名人でも何でもないし。とりあえず今は少女を写真に撮るか……

カチッ

使い切りカメラ特有の軽い音が響き、撮れたことを伝えようと顔をカメラから離し、少女に向け……なっ!?


「えへへ…ありがとうございます。これで綺麗になりました!」


少女は屈託のない笑みを浮かべならこちらに歩いてくる。だがこの少女は本当に先ほどの少女なのだろうか。一瞬のうちに髪と服は青く色を変えており、首に付いている赤い輪もそれに付属している黄色の鈴にも殺虫剤は付いていない。どういうことだってばよ!


「あ、どうして私が一瞬で殺虫剤落とせたか気になります?それは聡太さんが今手に持っている私の秘密道具の一つ、『キレイキレイカメラ』のおかげなのですよ!」

「秘密……道具?」

「はい!簡単に説明すると、被写体が外部から浴びている汚れを瞬時に消し去ることが出来るのです!」

「…秘密…道具……秘密………道具…」

「あ、あれ…もしかして…聞いてないです?」


ちょっと待て…秘密道具って…あの秘密道具?空飛べたり嘘が本当になるものだったり相手の言語を翻訳出来たり色々できるその……夢を叶えることが出来る……あのネコえもんみたいな秘密道具なのか!?

高速で思考を加速させている俺を突いている少女は……まさか!?


「き、きみは…一体何者なんだ!?」


予想よりはるかに大きな声で聞いてしまったが、少女は待っていましたと言わんばかりに目を輝かせて猫耳をピョコピョコと激しく動かした。

少女は小さい咳払いし、「改めまして」と前置きして高らかにその場にいい放つ!


「はじめまして!私はミーニャK‐12901号です!未来からやってきたロボットです!とつぜんですが、居候をしに来ました!」

「………お、おぉおおおおおおおおおおっ!運命廻ってきたあああああああああああ!………………ん?…いそう……ろう?」

「はいっ!居候です!まだ不束者ですが、よろしくお願いいたします!」


…………………あ、あれ…おかしいな……俺が夢見てきたものとちょっと違う…





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