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第六話 〜じゃろ

儀庭の朝は、白い石畳の上を薄い雲の影がすべるように流れていた。

東屋の前では、瑠映が一枚の紙を見つめながら、

色壺を抱えた腕を少し揺らして首をかしげていた。


この紙は、心華家(侯爵家)の学び場で六人が受けた問題用紙である。


瑠映:「昨日の師からの問題なんじゃけど、答え合わせしたら満点のはずが0点じゃったんよ~……」


芳華は前髪をそっと摘みながら、紙を覗き込んだ。


芳華:「え~……なんでそうなるん?」


瑠映:「確認したんよ、するとね、全部一個ずつずれとったんよ~……書く場所間違えたんよ~……」


黒耀は白い石畳の端で巻物を胸の高さに広げ、

自分の影が乱れないように位置を整えてから口を開いた。


黒耀:「詩巻の章を一個ずらすのは許されません!」


夜凛は舞衣の袖を右から払い、

紙の上にそっと風を送ろうとする。


夜凛:「舞で答え欄を動かしちゃげるけぇ! ほら、風で——」


瑠映:「動かしなさんな~! 紙がどっか飛んでいくんよ~!」


琴雪は深読み書を胸の高さで開き、

息を整えてから静かに言った。


琴雪:「これは“答の迷走”じゃ。事が乱れ、心が揺れ、世が迷う——」


紅牙は他者の影を踏まないように一歩進み、

短く場を締めた。


紅牙:「……違う。白紙にせぇ。」


瑠映:「白紙にしたら0点のままなんよ~!」


東屋の屋根の上を雲がゆるりと流れ、

白い石畳の庭に柔らかい影が広がっていった。


庭っ娘たちは、紙束を囲みながら、

今日も儀庭でゆるふわな騒ぎを続けていた。


【昭華の豆知識】


●『答迷走(こたえめいそう)


昭華王朝において、記述された解答そのものは正当であるにもかかわらず、得点に至らない状態を指す言葉。当時の礼法ではあらゆる物事における「整合性(整い)」が重んじられていたため、解答欄の位置が一つ違うだけでも、それは「知の乱れ」として厳格に扱われていた。


●"知は心の鏡"


深読み家の思想においては、知識の整然さはそのまま「心の整然さ」と結びついているとされていた。今回の瑠映の引き起こした「解答欄のズレ」も、文化的な観点から見れば、彼女の精神に一時的な揺らぎが生じていた証拠として解釈される。


儀庭の朝は、今日もゆるりと始まり、ゆるりと騒がしくなる。

それこそが昭華王朝の、愛おしい日常であった。

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