第98話 声が重なる場所で、胸は少し揺れる
体育祭まで、あと二週間と少し。
校内の空気は、日に日に色を濃くしていた。
朝の廊下には、いつもより少し早く登校してくる生徒が増えた。
昼休みには、教室のあちこちで競技表や応援のメモが広げられる。
放課後になると、校庭から紅組と白組の声が交互に聞こえてくるようになった。
夏休み明けのぼんやりした空気は、もうほとんど残っていない。
二学期は完全に動き出している。
なつきも、その流れの中にいた。
鞄の横では、今日も黒猫のキーホルダーが揺れている。
春樹が夏祭りで取ってくれた黒猫。
最初は、ただ大切な思い出だった。
でも今では、それはなつきにとって学校で息をするための小さなお守りのようになっていた。
黒猫が揺れると、春樹の声を思い出す。
――見つける。
――今日も見つけた。
――黒猫も、動くと揺れてた。
その言葉を思い出すたび、胸が熱くなる。
同時に、少しだけ恥ずかしくもなる。
春樹は、本当に見ている。
なつきが思っているよりずっと。
「なつき」
亜衣が隣の席から声をかけた。
「今日の放課後、応援通し練習だって」
「通し?」
「最初から最後まで一回やるやつ」
「もう?」
「まだ仮だけどね。圭くんが朝から燃えてる」
亜衣が前方を指さす。
そこでは、圭が田辺と島中相手に何かを熱弁していた。
「だから、最初は手拍子。そこで空気作る。で、真ん中で声を上げて、最後に全員で前向いて締める!」
田辺が腕を組む。
「昨日も聞いた」
「大事だから何度も言う」
島中が欠伸をしながら言う。
「三浦、朝から体育祭しか頭にないだろ」
「ある!」
「他に?」
「昼飯」
「少なっ」
田辺が笑う。
圭は胸を張った。
「体育祭と昼飯があれば生きられる」
紅秋が自分の席から静かに言った。
「授業も受けろ」
「紅秋、遠くから刺してきた!」
教室に笑いが起きる。
なつきも笑った。
紅組は本当に賑やかだ。
最初は、春樹と別組になったことが寂しくて、紅組の熱量に置いていかれるような気がしていた。
でも今は、その熱が少しずつ自分の中にも入ってきている。
応援合戦の手拍子。
掛け声。
隊形移動。
圭の勢い。
亜衣のツッコミ。
田辺の低い声。
島中の意外な真面目さ。
その全部が、なつきにとって「紅組」になり始めていた。
「なつき」
亜衣がにやりと笑う。
「今日、春樹くんに聞こえるくらい声出せる?」
「いきなりそこ?」
「大事」
「紅組のために出すんだよ」
「もちろん。でも春樹くんにも聞こえたら嬉しいでしょ?」
なつきは言い返せなかった。
嬉しい。
それは本当だった。
「……少し」
「素直」
亜衣は満足そうに頷いた。
◇
昼休み。
紅組の机の輪には、いつもより多くの紙が広がっていた。
応援合戦の簡単な流れ。
手拍子のタイミング。
掛け声の候補。
隊形移動の図。
誰がどの位置に立つか。
圭が持ってきたメモは、字は少し雑だったが熱意だけは伝わってきた。
「これ、圭くんが書いたの?」
なつきが聞くと、圭は堂々と頷いた。
「昨日の夜、考えた!」
亜衣が紙を覗き込む。
「熱量は伝わる」
「内容は?」
「読めるところと読めないところがある」
「字か!」
田辺が笑う。
「ここ、何て書いてあるんだ?」
「『最後に全員で決めポーズ』」
島中が眉を上げる。
「決めポーズ?」
「ほしいだろ」
「体育祭の応援合戦で?」
「ほしいだろ!」
亜衣が考える。
「でも最後の形は必要かも。ポーズっていうより、全員で拳を上げるとか」
田辺が頷く。
「それならありだな」
島中も腕を組む。
「変にふざけるより、シンプルな方がいい」
圭は少し悔しそうにする。
「俺の決めポーズ案が……」
「完全に消えてないよ」
なつきが言う。
「最後に拳を上げるのも、決める形ではあるし」
圭の顔がぱっと明るくなる。
「なつき、優しい!」
「優しいというか……」
亜衣が笑う。
「なつきは圭くんの暴走を柔らかく着地させる係」
「また係が増えた」
「紅組、役割多いね」
なつきは笑いながらも、少し嬉しかった。
自分が紅組の中で役割を持っている。
応援の声。
手拍子案。
圭の暴走を柔らかくすること。
どれも小さいけれど、ちゃんとそこにいる証拠のように思えた。
田辺が紙を見ながら言った。
「横田は最後、前列?」
「えっ、私?」
「応援メンバーだし、声が柔らかいなら前の方がいいんじゃねぇの」
島中がすぐに言う。
「いや、横田を前に出したら緊張で固まるだろ」
「島中」
亜衣がじっと見る。
「言い方」
「悪い。でも実際、無理させるのは違うだろ」
島中は少しだけ目を逸らしながら言った。
なつきは驚いた。
島中が、無理をさせるのは違うと言った。
以前なら、春樹を意識してなつきをからかうことが多かった。
でも今は、紅組の仲間として見てくれているように感じた。
「ありがとう」
なつきが言うと、島中は少し気まずそうにした。
「別に。練習で固まられたら困るだけ」
「素直じゃない」
亜衣が言う。
「うるせぇ」
田辺が笑う。
「じゃあ横田は前列の端とかどうだ? 亜衣と一緒ならいけるだろ」
「端なら……できるかも」
なつきは少し考えて頷いた。
「亜衣ちゃんが隣なら」
「任せて」
亜衣は胸を張る。
「なつきの隣担当です」
圭が手を上げる。
「じゃあ俺は真ん中!」
「圭くんは真ん中以外だと逆に目立つ」
「どういう意味!?」
紅組の輪に笑いが広がる。
なつきはその笑いの中で、少しずつ緊張がほどけていくのを感じた。
◇
白組の方へ視線を向けると、春樹達も昼休みの打ち合わせをしていた。
白組は、紅組とはまったく違う空気だった。
机の上にはきれいに並べられたプリント。
祐衣が記録係らしく、メモを丁寧に取っている。
茜が全体の流れを確認し、紅秋が必要な道具や並びをチェックしている。
美優は応援合戦の前列について話していて、蓮がリレーの走順を見ている。
春樹はその中央から少し外れた位置に座っていた。
けれど、輪の外ではない。
美優が自然に春樹へ話しかける。
「春樹、借り人のスタート位置ってこっちだよね?」
「うん」
「リレーのあとに借り人だと、疲れない?」
「大丈夫」
「本当に?」
「うん」
蓮が笑う。
「春樹は大丈夫って言う時、本当に大丈夫な時と、何も考えてない時があるよね」
「そう?」
美優がすぐに言う。
「あるある」
祐衣が少し驚いたように笑う。
「そうなんですか?」
「うん。昔から」
また、昔から。
美優の口から自然に出る言葉。
なつきの胸が少しだけ揺れた。
けれど今日は、すぐに目を逸らさなかった。
春樹のことを昔から知っている美優。
今、記録係として春樹の近くにいる祐衣。
春樹の親友の蓮。
落ち着いて支える紅秋と茜。
白組には白組の強さがある。
その中に春樹がいる。
それは寂しい。
でも、自分にも紅組がある。
なつきはもう一度、紅組のメモへ視線を戻した。
亜衣が小声で言う。
「見てたね」
「うん」
「今日は戻るの早かった」
「紅組の話、途中だから」
亜衣は少し目を丸くして、それから嬉しそうに笑った。
「いいね」
「何が?」
「紅組のなつきになってきた」
なつきは照れながらも、否定しなかった。
「……少しは」
◇
放課後。
校庭に集合した紅組の応援メンバーは、昨日よりも少しまとまりが出ていた。
まだ本番の形ではない。
けれど、誰がどこに立つか、誰がカウントを取るか、どこで声を上げるかが少しずつ決まってきている。
なつきは前列の端。
隣に亜衣。
中央に圭。
後ろに田辺と島中が補助で入る。
他学科のメンバーも加わり、紅組の列が形を作る。
「なつき、ここ大丈夫?」
亜衣が聞く。
「うん。端なら」
「緊張したら私見て」
「うん」
圭が中央で手を叩く。
「じゃあ一回、最初から最後まで通すぞ!」
紅組の上級生が頷く。
「まだ仮でいいから、流れを止めずにいこう」
なつきは深呼吸した。
手のひらが少し汗ばむ。
前列。
端とはいえ、昨日より前に出ている。
白組からも見える位置。
春樹からも、見えるかもしれない。
そう思うと、心臓が強く鳴った。
でも、逃げなかった。
圭がカウントを取る。
「一、二、三、四!」
手拍子。
パン、パン、パン、パン。
なつきも合わせる。
最初は少し緊張で腕が固かった。
でも、隣の亜衣が同じリズムで叩いているのを感じると、少しずつ体が動いた。
「紅!」
「勝つぞ!」
「紅!」
「燃えろ!」
声を出す。
前より大きく。
前列だから、声が前へ出る感覚がある。
少し怖い。
でも、紅組のみんなの声が後ろから押してくれる。
田辺の低い声。
島中の少し照れた声。
圭の明るい声。
亜衣のはっきりした声。
それらが重なり、なつきの声もその中へ混ざっていく。
隊形移動。
一歩右。
手拍子。
前を向く。
最後に全員で拳を上げる。
「紅組!」
「勝つぞ!」
声が校庭に響いた。
終わった瞬間、少しだけ沈黙があった。
それから、紅組の中で拍手が起きた。
「おお、今のいい!」
圭が叫ぶ。
「声量」
亜衣がすぐ言う。
「でも今のはいいだろ!」
「よかったけど声量」
田辺が笑いながら頷く。
「最後、揃ってたな」
島中も少し満足そうに言う。
「前より形になってきた」
なつきは胸に手を当てた。
息が少し上がっている。
喉も熱い。
でも、達成感があった。
「できた……」
小さく呟くと、亜衣がすぐ隣で笑った。
「できたね」
「うん」
「なつき、声出てたよ」
「本当?」
「本当」
圭も駆け寄ってきた。
「なつき、前列いける!」
「まだ緊張する」
「でもいける!」
田辺も頷いた。
「ちゃんと聞こえた」
島中が軽く言う。
「前列の端、合ってるんじゃねぇの」
なつきは少し照れながら頷いた。
「ありがとう」
紅組の中で褒められることに、少しずつ慣れてきた。
それでも、まだ胸はくすぐったい。
でも、そのくすぐったさは嫌ではなかった。
◇
白組側も通し練習をしていた。
白組は、紅組とは違う静かな強さがあった。
最初は低く揃えた手拍子。
途中で声が広がり、後半で一気に大きくなる。
美優の声はよく通った。
祐衣は後方でメモを取りながら、時々位置のずれを指摘している。
茜が声の入りを確認し、紅秋が列の間隔を見ている。
蓮はリレー練習の合間に白組の様子を見ている。
春樹は、借り人競争の説明を受けた後、白組の後方で練習を見ていた。
紅組の通しが終わった時、春樹はなつきを見ていた。
なつきはそれに気づいた。
目が合う。
春樹が小さく頷く。
なつきは胸が熱くなった。
見てくれていた。
前列の端で、声を出した自分を。
それだけで、さっきの達成感がさらに大きくなる。
休憩時間になると、春樹がなつきの方へ歩いてきた。
なつきは水筒を持ったまま、少しだけ固まる。
「横田さん」
「うん?」
「前列だった」
「あ、うん。端だけど」
「声、出てた」
「聞こえた?」
「うん」
春樹はいつものように短く言った。
でも、今日はそこにもう一言が続いた。
「よかった」
なつきの胸が、ふわっと温かくなった。
「ありがとう」
「うん」
「春樹くん、白組の練習見てたんじゃないの?」
「紅組も見えた」
見えた。
その言葉が、また胸に残る。
「そっか」
なつきは黒猫に触れた。
「黒猫も見えた?」
勇気を出して、少しだけ冗談のように聞いた。
春樹は普通に頷いた。
「うん。前にいたから見つけやすかった」
顔が熱くなる。
自分で聞いたのに、返ってくると恥ずかしい。
「……そっか」
「うん」
少し沈黙。
風が吹いて、黒猫が揺れる。
春樹の視線がそこへ落ちる。
なつきは、その視線さえ嬉しかった。
◇
その後、借り人競争の練習が短く行われた。
なつきは紅組の応援練習を終えていたので、亜衣と一緒に少し離れた場所から見学した。
圭も「見たい!」と言ってついてきた。
田辺と島中もリレー練習の合間に見ている。
「春樹くんの借り人、今日も試すかな」
亜衣が言う。
「分からない」
なつきは少し緊張していた。
先生が説明する。
「今日はお題を確認して、実際に数人だけ試走します。本番のお題とは別です」
春樹も参加者の列にいる。
美優が少し離れた白組側から見ている。
祐衣は記録係として近くにいる。
茜もバインダーを持っていた。
先生が一人目を指名する。
白組の別の生徒。
その次に、春樹。
なつきの心臓が跳ねる。
「来た」
亜衣が小声で言う。
春樹がスタートする。
カードを引く。
開く。
少しだけ周囲を見る。
なつきは息を止めた。
春樹の視線が、一瞬こちらに向いた。
また。
胸が大きく鳴る。
けれど、春樹はすぐに白組側へ向かい、美優の前で止まった。
なつきの胸がきゅっとした。
美優が少し驚く。
「私?」
「うん」
春樹がカードを見せる。
「同じ白組の人」
美優は笑った。
「なるほど。じゃあ行こ」
二人が並んで軽く走り、ゴールする。
周囲から拍手。
美優は笑顔で春樹に何か言っている。
春樹は短く頷く。
何もおかしくない。
お題は「同じ白組の人」。
美優は白組。
自然だ。
競技だ。
分かっている。
でも、胸は少し痛んだ。
亜衣が隣で、そっと声をかける。
「なつき」
「うん」
「大丈夫?」
なつきは少しだけ黙った。
そして、小さく頷いた。
「大丈夫。お題、同じ白組だったし」
「うん」
「競技だもんね」
「うん」
「でも、ちょっとだけ……胸が痛かった」
正直に言うと、亜衣は静かに頷いた。
「それは仕方ないよ」
「うん」
「でも、ちゃんと見てたね」
「うん」
なつきは黒猫に触れた。
逃げなかった。
胸は痛かったけれど、目を逸らさなかった。
それだけでも、少しは前に進めた気がした。
圭が少し空気を読んだのか、いつもより抑えた声で言った。
「本番、お題何出るか分かんないからな」
田辺も言う。
「今のは練習だしな」
島中は少しだけ黙ってから言った。
「横田、紅組の応援も忘れんなよ」
言い方は少し不器用だった。
でも、なつきを紅組へ引き戻そうとしてくれているのが分かった。
なつきは小さく笑った。
「うん。忘れない」
◇
借り人練習が終わった後、春樹がなつきの方へ来た。
美優は蓮と話していて、祐衣は記録を整理している。
なつきは少しだけ緊張した。
さっき美優を借りた春樹。
でも、春樹はいつも通りだった。
「横田さん」
「うん?」
「紅組の通し、よかった」
その言葉に、なつきは少し驚く。
借り人の話ではなく、紅組の話。
「ありがとう」
「前列、合ってる」
「本当?」
「うん」
胸が温かくなる。
春樹は、ちゃんと見てくれていた。
美優を借りたことも、白組の練習もあった。
それでも、なつきの紅組での姿を見てくれていた。
「春樹くん」
「何?」
「借り人、美優さんだったね」
言うつもりはなかった。
でも、口から出た。
声は少しだけ小さかった。
春樹は普通に頷く。
「うん。同じ白組の人だったから」
「うん。分かってる」
なつきは黒猫に触れた。
「分かってるけど、ちょっとだけびっくりした」
春樹は少しだけなつきを見た。
「そう?」
「うん」
「ごめん?」
春樹が少し迷うように言った。
なつきは慌てて首を横に振る。
「違うの。謝ってほしいわけじゃなくて」
少し息を吸う。
「私が勝手に、ちょっと緊張しただけ」
「うん」
「でも、競技だって分かってるから」
春樹は黙って聞いていた。
その沈黙に、急かす感じはなかった。
なつきは続ける。
「だから、本番も頑張ってね」
春樹は小さく頷いた。
「うん」
少し間を置いて。
「横田さんも、紅組」
「うん」
「頑張って」
なつきは笑った。
「うん。頑張る」
胸の痛みは完全には消えていない。
でも、春樹とこうして話せたことで、その痛みは少しだけやわらかくなった。
◇
練習が終わり、帰り支度をする頃には、校庭の空気は涼しくなっていた。
紅組のメンバーは、今日の通し練習について話しながら帰る準備をしている。
「最後の拳、もうちょい揃えたいな」
田辺が言う。
「明日やればいける」
圭が答える。
「圭くんは前に出すぎない」
亜衣が釘を刺す。
「はい」
島中がなつきを見る。
「横田、前列いけそうだな」
「まだ緊張するけど」
「緊張してても動けてたからいいんじゃねぇの」
「ありがとう」
なつきは素直に言った。
島中はまた少し目を逸らした。
「別に」
紅組の中で、自分の居場所が少しずつ確かになっている。
それが嬉しかった。
その一方で、白組の春樹を見て揺れる気持ちもある。
どちらも本当。
なつきは、その両方を抱えたまま歩いていくしかない。
校門へ向かう途中、亜衣が隣に並んだ。
「なつき、今日は頑張ったね」
「うん」
「声も出たし、美優ちゃんの時も逃げなかった」
「……見てた?」
「見てた」
「そっか」
なつきは少しだけ空を見上げた。
夕方の空は、薄い赤に染まっている。
紅組みたいだと思った。
「胸は痛かったけど」
なつきは小さく言う。
「でも、ちゃんと見られた」
「うん」
「それに、春樹くんと話せた」
「うん」
「だから、大丈夫」
亜衣は優しく笑った。
「強くなってるね、なつき」
「そうかな」
「うん。前ならたぶん、帰り道ずっと沈んでた」
「かも」
「でも今は、紅組のこともちゃんと考えてる」
なつきは黒猫に触れた。
「紅組、楽しいから」
「いいね」
春樹は白組。
美優も、祐衣も白組。
そこに胸が揺れることは、これからもきっとある。
借り人競争の本番では、もっと揺れるかもしれない。
でも、なつきには紅組がある。
亜衣がいる。
圭がいる。
田辺がいる。
島中がいる。
自分の声がある。
なつきは鞄の黒猫をそっと揺らした。
声が重なる場所で、胸は少し揺れる。
でも、その揺れごと前へ進む。
体育祭まで、あと少し。
赤い輪の中で、なつきは少しずつ、自分の立ち方を覚え始めていた。




