第38話 見学席のコーチと、届き始めたボール
朝の教室に残っていた熱は、時間が経っても完全には消えなかった。
一時間目。
二時間目。
授業はいつも通り進んでいく。
先生の声。
黒板に書かれる文字。
ノートを取る音。
教科書をめくる音。
普段なら眠気と戦うだけの午前中なのに、今日の二年十一組は少しだけ落ち着かなかった。
理由は分かっている。
昨日の体育館のこと。
そして、今日の体育の授業。
球技大会前の練習時間。
その二つが、教室の空気の下にずっと沈んでいた。
なつきはノートに文字を書きながらも、何度か窓際の席を見てしまった。
春樹はいつも通り座っている。
授業も普通に受けている。
だけど、時々足の位置を変える仕草があった。
痛いのだろうか。
昨日よりは、と言っていた。
でも、それは「完全に大丈夫」ではない。
大丈夫と言われても、気になるものは気になる。
なつきはシャーペンを握り直した。
朝、自分の言葉で聞けた。
無理しないでね、と言えた。
春樹は、気をつける、と少し笑ってくれた。
それだけで嬉しかった。
でも、嬉しいだけでは終われない。
体育。
球技大会練習。
春樹はきっと、何かしようとする。
なつきにはそんな予感があった。
隣の茜が、視線だけでなつきを見た。
「また見てる」
小さな声。
先生に聞こえないくらい。
なつきは慌ててノートへ目を戻す。
「見てない」
「見てた」
「ちょっとだけ」
「ちょっとが多い」
茜の声は淡々としている。
けれど、少しだけ優しい。
なつきは小さく息を吐いた。
「足、気になって」
「分かるわ」
「茜ちゃんも?」
「昨日のあれを見たら、気になるでしょう」
茜は教科書を見たまま言う。
「ただ、授業中は前を見なさい」
「はい」
少し前の席で、亜衣がちらりと振り返った。
口だけで言う。
見すぎ。
なつきは小さく首を振った。
見てない。
亜衣は笑った。
見てる。
そんなやり取りをしている間にも、時間は進んでいく。
午前の授業が終わり、昼休みが過ぎる。
そして、午後。
体育の時間が来た。
体育館へ向かう廊下は、いつもより騒がしかった。
球技大会が近づいているからか、他のクラスの生徒たちもどこか浮き立っている。
体育館シューズを入れた袋を持つ男子。
ジャージ姿で髪を結び直す女子。
水筒を片手に走る生徒。
廊下の窓から入る光が、足元に長く伸びている。
「今日、実戦形式やるかな」
亜衣が言う。
「まだ基礎練習中心じゃない?」
茜が答える。
「なつき、シュート入るようになった?」
「一回だけ」
「一回入れば大きいよ」
「でも、毎回入るわけじゃないし」
「そりゃそうでしょ」
亜衣は笑った。
「毎回入ったら、もうエースだよ」
「エースは無理」
「じゃあ、控えめエース」
「それも無理」
「じゃあ、成長枠」
「それなら……」
なつきは少しだけ笑った。
成長枠。
確かに、それなら受け入れられる。
最初からうまくなくてもいい。
昨日より少しだけ良くなればいい。
ドリブルが少し続く。
パスが少し真っ直ぐになる。
シュートがリングに届く。
そして、たまに入る。
それだけで、今のなつきには十分だった。
体育館に入ると、すでにボールの音が響いていた。
他のクラスも練習に来ている。
体育教師が笛を首から下げ、ホワイトボードにコート割りを書いている。
男子バスケ。
女子バスケ。
フットサル組は外。
テニス組も外のコートへ向かう。
体育館の中は、バスケの練習場所になっていた。
二年十一組の男子バスケ組は、体育館の左側。
女子バスケ組は右側。
なつきたちは女子側に集まった。
春樹、三浦、田辺、紅秋たちは男子側へ向かう。
なつきは一瞬だけ春樹の足元を見た。
少しだけ、歩き方が硬い。
それを見た瞬間、胸がぎゅっとなる。
すると、体育教師が声を張った。
「大國!」
春樹が顔を上げる。
「はい」
「お前は今日見学」
体育館が少しざわついた。
三浦がすぐに言う。
「先生ナイス判断!」
「三浦、静かに」
「はい!」
春樹は少しだけ眉を寄せた。
「軽いので」
「見学」
先生は即答した。
「でも」
「見学」
「……はい」
春樹は諦めたように返事をした。
体育館のあちこちから笑いが起きる。
亜衣が女子側から小さく言う。
「先生、強い」
茜も頷く。
「正しい判断ね」
なつきはほっとした。
ほっとしたのに、春樹が少し残念そうにしているのを見て、また少し心配になった。
春樹は本当に無理をしそうだ。
美優と蓮が朝言っていたことを思い出す。
春樹は、できる範囲で、と言った。
それは、無理する人の言い方だと自分で言った。
やっぱり間違っていなかった。
先生が続ける。
「大國はボールを持って走らない。シュートも駄目。立って指示するくらいならいい」
三浦が両手を打った。
「コーチじゃん!」
「三浦」
紅秋がすぐに止める。
「何?」
「調子に乗らない」
「でも春樹コーチ、ありじゃね?」
田辺も頷いた。
「大國、見るの上手そうだしな」
春樹は少し困ったように言う。
「コーチではない」
「じゃあ見学兼アドバイザー」
三浦が言う。
「長い」
「見学席の司令塔」
「大げさ」
紅秋が淡々とまとめる。
「大國くんは無理しない範囲で見てくれればいい」
「うん」
春樹はそれ以上反論しなかった。
男子側の練習が始まる。
春樹はコートの端に立ち、ボールには触らない。
それでも、三浦たちの動きに時々目を向けていた。
「三浦、先に走りすぎ」
「はい!」
「田辺、ゴール下もう少し右」
「おう」
「紅秋、そこ空く」
「分かった」
短い言葉。
でも、男子たちはそれで動く。
なつきは少し驚いた。
春樹は本当に、見ている。
自分が動かなくても、誰がどこにいるか、どこが空いているか、分かっている。
図書室で本の場所を把握している時と似ている。
簿記の問題で、どこを読むべきか分かっている時とも似ている。
場所が変わっても、春樹はやっぱり春樹だった。
「なつき」
亜衣がボールを持って近づく。
「はい」
「また見てた」
「……はい」
「素直」
「今回は言い訳できない」
「よろしい」
亜衣はボールをなつきへ渡した。
「こっちも練習」
「うん」
女子側の練習が始まる。
まずはパス。
次にドリブル。
そしてシュート。
なつきは昨日の感覚を思い出しながら動いた。
膝を曲げる。
体全体で上へ。
ボールを見る。
相手を見る。
焦らない。
最初のシュートは外れた。
リングの手前。
でも、届いている。
次はリングに当たった。
三回目は大きく外れた。
亜衣が拍手する。
「惜しいのあった!」
「今の?」
「二回目」
「一回目は?」
「まあまあ」
「三回目は?」
「見なかったことにする」
「見てたでしょ」
「見てた」
茜が隣で言う。
「フォームは悪くないけれど、最後に力が入っているわね」
「分かる?」
「見ていると分かる」
「直せるかな」
「練習すれば」
その時、後ろから春樹の声がした。
「肘」
なつきの心臓が跳ねる。
振り返ると、春樹が男子側のコート端からこちらを見ていた。
走ってきたわけではない。
コートの境目あたりに立っているだけ。
でも、ちゃんと見ていた。
「肘?」
なつきが聞く。
「少し外に開いてる」
春樹は自分の腕で軽く形を示す。
「まっすぐ上げた方が、ボールもまっすぐ行く」
「こう?」
なつきはボールを構える。
「もう少し内側」
「内側」
「うん」
春樹は近づきすぎない距離で、言葉だけをくれる。
その距離が、今のなつきにはありがたかった。
近すぎたら、きっと何もできなくなる。
でも、遠くからの言葉なら受け取れる。
「力は?」
「最後だけ」
「最後だけ」
「最初から力入れると、ずれる」
「はい」
なつきは息を吸った。
膝を曲げる。
肘を意識する。
まっすぐ。
最後だけ。
シュートを打つ。
ボールはリングに当たり、少し跳ねて外れた。
でも。
「今のいい」
春樹が言った。
なつきの胸が、一瞬で跳ねた。
昨日と同じ言葉。
でも今日も効く。
むしろ、今日も言ってもらえたことが嬉しい。
「入ってないよ」
なつきは小さく言った。
「形がいい」
「……ありがとう」
声が少しだけ小さくなる。
亜衣が横からにやにやしている。
「なつき、顔」
「言わないで」
「赤い」
「言わないで」
茜が静かに言う。
「春樹くん、女子側まで見ている余裕があるのね」
春樹が少しだけ首を傾げる。
「見学だから」
「確かに」
茜は納得したように頷いた。
三浦が男子側から叫ぶ。
「春樹コーチ! 女子ばっか見てないでこっちも!」
「見てる」
「本当に?」
「三浦、今のパス雑」
「見てた!」
体育館に笑いが起きる。
なつきも笑った。
その空気が心地よかった。
春樹が見学になったことで、男子側の練習は少し不安かと思った。
でも違った。
春樹はコートの外から、ちゃんと支えている。
男子にも、女子にも。
無理をしないでいてくれる。
でも、そこにいるだけで安心する。
体育館の空気が、少しずつ明るくなっていった。
練習は続く。
なつきは何度もシュートを打った。
外れる。
当たる。
また外れる。
たまに、入る。
入った時、亜衣が大きく拍手してくれた。
「入った!」
「今の入った!」
「見てたよ!」
なつきは思わず笑った。
茜も小さく拍手する。
「良かったわね」
「うん」
春樹も少し離れた場所から頷いた。
「今の、足使えてた」
また胸が鳴る。
春樹の言葉は短い。
でも、どこを見てくれていたのか分かる。
だから嬉しい。
ただ「すごい」ではなく、足を使えていた、と言ってくれる。
そこが春樹らしい。
「なつき、だいぶ良くなってきたじゃん」
亜衣が言う。
「本当?」
「うん。最初はボールに避けられてたけど」
「それ昨日も言ってた」
「今日はちょっと友達になってる」
「友達」
「親友まではまだ」
茜が言う。
「まずは友人関係からね」
「ボールと?」
「ボールと」
なつきは笑ってしまった。
体育館の隅では、男子バスケ組もミニゲーム形式の練習を始めていた。
春樹は出ない。
その代わり、三浦、田辺、紅秋を中心に動いている。
田辺はゴール下で強い。
リバウンドを取ると、周りから声が上がる。
三浦は速い。
ボールを持って走ると、少し危なっかしいが勢いがある。
紅秋は冷静だった。
派手に動かないが、パスを出す位置がいい。
春樹はそれを見ながら、時々短く言う。
「田辺、今の残って」
「おう」
「三浦、突っ込みすぎ」
「はい!」
「紅秋、そこでいい」
「分かった」
三浦が何度も振り返る。
「春樹コーチ、厳しい!」
「普通」
「出た、普通!」
田辺が笑っている。
昨日の件があったからか、田辺は少し春樹側に寄っているように見えた。
少なくとも、島中の側にはいない。
そのことに、なつきは少し安心した。
島中は、外のフットサル練習のはずだった。
でも、体育館の入口付近に一度姿を見せた。
なつきはそれに気づいた。
島中は中へ入ってこなかった。
ただ、入口の影から体育館の様子を見ていた。
春樹がコートの外にいること。
三浦たちが春樹の指示を聞いていること。
女子側でも、なつきが春樹にアドバイスをもらっていること。
それらを見ている。
顔は遠くてはっきりしない。
でも、良い表情ではないことだけは分かった。
胸が少し重くなる。
昨日、謝らなかった。
今日も謝らなかった。
それなのに、まだこちらを見ている。
なつきは視線を外した。
今は練習に集中したかった。
島中を見るより、ボールを見たい。
春樹が教えてくれたフォームを、少しでも覚えたい。
そう思った。
「なつき」
茜が声をかける。
「うん」
「今はこっち」
「うん」
なつきは頷いた。
島中の視線は気になる。
でも、それに全部持っていかれたくない。
春樹も無理しないようにしている。
亜衣も茜もいる。
自分は自分の練習をする。
体育の授業が終わる頃には、なつきはかなり汗をかいていた。
息も上がっている。
でも、不思議と気持ちは軽かった。
最初より、シュートが届く。
パスも少し安定した。
ドリブルも、少しだけ前を見られるようになった。
完璧ではない。
まだまだ下手だ。
でも、確かに昨日より良い。
先生が笛を吹く。
「今日はここまで。片付けして、着替えろ」
「はい!」
体育館に声が響く。
ボールを片付ける。
モップをかける。
水筒を取る。
生徒たちが一斉に動き出す。
なつきがボールを戻そうとした時、春樹が近くに来た。
歩き方は、やっぱり少しだけ硬い。
「大國くん」
「うん」
「大丈夫?」
「大丈夫」
即答。
でも、なつきはもう少しだけ言う勇気が出ていた。
「それ、みんな信用してないと思う」
春樹は少しだけ目を瞬かせた。
それから、少しだけ笑った。
「そうみたい」
その笑顔に、なつきの胸が一気に温かくなる。
短い会話。
でも、朝より少し自然に言えた気がした。
「今日、ありがとう」
「何が?」
「シュート。肘とか」
「少し見えただけ」
「でも、助かった」
「ならよかった」
春樹はそう言った。
ならよかった。
その言い方が、やっぱり好きだと思う。
何かを大げさにしない。
でも、ちゃんと受け取ってくれる。
その時、三浦が遠くから叫んだ。
「春樹ー! 片付けは無理すんなよー!」
「してない」
「してそう!」
「してない」
亜衣が笑う。
「三浦くん、保護者みたい」
「板倉くんと三浦くんで監視係だね」
なつきが言うと、春樹は少し困った顔をした。
「増えた」
「いいことだよ」
「そう?」
「うん」
なつきは小さく笑った。
体育の授業が終わり、教室へ戻る。
ジャージから制服へ着替えた後も、体の中にはまだ少し熱が残っていた。
授業後の教室は少しだらけた空気になる。
机に突っ伏す男子。
汗を拭く女子。
水筒を飲む生徒。
三浦は自分の席でぐったりしていた。
「体育、疲れた」
「一番動いてたもんね」
亜衣が言う。
「春樹が出ない分、俺が二倍動いた」
紅秋が即座に否定する。
「二倍ではない」
「体感二倍」
「それなら分かる」
「分かるんだ」
田辺も椅子に座りながら言う。
「大國が外から見てると、変なサボりできねぇな」
「分かる」
三浦が頷く。
「春樹、静かに見てるから逆に怖い」
春樹は自分の席で水筒を飲みながら言った。
「怖くない」
「怖い」
「怖いな」
田辺まで頷く。
春樹は少しだけ不満そうだった。
なつきはその様子を見て笑った。
昨日の重い空気が、少しずつ教室の中で別の形になっている。
まだ島中のことは残っている。
謝っていない。
それは消えていない。
でも、クラスの全員が春樹を心配し、春樹の周りに少しずつ集まっている。
その空気は、昨日よりずっと温かかった。
放課後。
球技大会の自主練習をする生徒たちが、また体育館へ向かう流れになった。
女子バスケ組も少し残る。
なつき、茜、亜衣。
男子バスケ組からは三浦、田辺、紅秋。
春樹は見学のままなら、体育館にいるだけでもいいという話になった。
「無理はしない」
紅秋が念を押す。
「うん」
「走らない」
「うん」
「シュートもしない」
「うん」
三浦が横で腕を組む。
「信用できねぇ」
「ひどい」
春樹が小さく言う。
なつきは笑っていた。
その時、教室の後ろの扉が開いた。
なつきは反射的に振り返る。
そこにいたのは、美優と蓮だった。
美優が教室の入口から顔を出す。
「来たよ」
春樹は少しだけ目を瞬かせた。
「本当に来た」
蓮が笑う。
「だから言ったろ?」
美優が少しだけむっとする。
「何その言い方」
「美優は来るって言ったら来るだろ」
「それはそうだけど」
三浦が目を輝かせる。
「本当に来た!」
「三浦くん、声大きい」
美優が笑う。
三浦は少し照れたように頭をかいた。
「いや、なんかイベント感あって」
「イベントじゃない」
春樹が言う。
「春樹の見張りイベント」
蓮がさらっと言う。
「違う」
「近いでしょ」
美優が頷く。
「近いね」
「美優まで」
春樹は少しだけ諦めたように息を吐いた。
なつきは、そのやり取りを見ていた。
胸に少しだけちくりとしたものが走る。
でも、朝ほど強くはない。
なぜなら、今の自分には今日の体育の時間があるから。
春樹がシュートを見てくれたこと。
肘を教えてくれたこと。
今のいい、と言ってくれたこと。
自分に向けて、少し笑ってくれたこと。
それは、美優や蓮が知らない今日の時間だ。
なつきだけが持っている小さな距離だ。
亜衣が隣で小声で言う。
「なつき」
「うん?」
「顔、大丈夫」
「え?」
「朝より大丈夫そう」
なつきは少しだけ笑った。
「うん」
茜も静かに頷く。
「少し強くなったわね」
「そうかな」
「そうよ」
なつきは美優と蓮を見る。
美優は春樹に何か言っている。
蓮は三浦と話している。
春樹は少し困った顔をしながらも、ちゃんとそこにいる。
羨ましい。
それはまだある。
でも、それだけじゃない。
自分も、ちゃんと前に進んでいる。
そう思えた。
「体育館行くんだろ?」
蓮が言う。
「うん」
春樹が答える。
「走るなよ」
「走らない」
「シュートは?」
「しない」
「本当か?」
「しない」
美優がじっと春樹を見る。
「信じていい?」
「うん」
「怪しい」
「ひどい」
そのやり取りに、教室がまた少し笑う。
三浦が勢いよく立ち上がった。
「よし! 春樹見張り隊と女子バスケ練習隊、体育館行くぞ!」
「勝手に隊を増やさない」
紅秋が言う。
「でも分かりやすいだろ」
「分かりやすいけど」
亜衣が笑った。
「じゃあ行こ、なつき」
「うん」
なつきは鞄からタオルと水筒を取り出した。
体育館へ向かうために立ち上がる。
その時、春樹と目が合った。
「横田さん」
「はい」
「今日のフォーム」
「うん」
「忘れないうちに、もう少しやるといい」
胸が跳ねる。
放課後。
また。
練習できる。
「うん。やる」
なつきは頷いた。
「お願いします」
春樹は短く頷く。
「うん」
それだけで十分だった。
夕方の教室に、球技大会へ向かう足音が重なっていく。
昨日の痛み。
朝の不安。
美優と蓮への羨ましさ。
島中へのもやもや。
その全部を抱えたままでも、なつきは体育館へ向かえる。
なぜなら、少しずつ届き始めているから。
リングにも。
ボールにも。
そして、春樹との距離にも。
今日もまた、少しだけ前に進める気がした。




