第134話 会議室では、隣に座るだけでも目立つ
大会議室の扉が、背後でゆっくりと閉じた。
廊下に残っていた足音や話し声が薄くなり、その代わりに、室内へ集まった生徒達のざわめきが一気になつきの耳へ入ってくる。
思っていたよりも、広い。
特別棟一階の大会議室は、普段の教室を三つほど横へ並べたような造りになっていた。
前方には長い教卓。
その後ろには、白いスクリーン。
黒板にはすでに大きな文字で、
『第一回 秋季交流週間実行委員会』
と書かれている。
机は二人掛け。
前後の間隔を広めに取り、何列も並べられていた。
すでに半分以上の席が埋まっている。
一年生らしい、まだ制服を着慣れていない生徒。
三年生らしい、落ち着いた雰囲気の生徒。
普通科。
特進科。
スポーツ特待。
商業科。
普段の学校生活では同じ教室に集まることのない生徒達が、資料を抱え、腕章をつけ、近くの者と小声で話していた。
「多い……」
なつきの口から、無意識に声が漏れた。
二人ずつ選ばれている。
一学年だけでも、クラスの数は少なくない。
そこへ全学年。
さらに、企画補助として呼ばれている委員会代表や生徒会役員もいるらしい。
百人まではいない。
けれど、なつきにとっては十分すぎるほど多かった。
授業中。
自分のクラス四十人ほどの視線が集まるだけでも緊張する。
今は、それ以上。
知らない顔ばかり。
誰が何を考えているのか分からない。
なつきは胸の前へ抱えた資料へ、少しだけ力を込めた。
「横田さん」
すぐ隣から春樹の声がした。
大きくはない。
それでも。
このざわめきの中でも、はっきり分かった。
「うん」
「席」
春樹が、まだ空いている机を探すように室内を見る。
なつきも顔を上げた。
前方は、すでに多くの席が埋まっている。
中央付近も、生徒達が固まって座っている。
後ろには少し空きがある。
けれど、黒板やスクリーンが遠くなりそうだった。
「どこがいい?」
春樹が尋ねた。
なつきは少し迷う。
「前すぎないところ」
「うん」
「でも、黒板見えるところ」
「うん」
「端の方が落ち着くかも」
「分かった」
春樹は、室内中央より少し後ろ。
窓際に近い二人掛けの机を見つけた。
左右にはまだ少し空席がある。
前方も十分見える。
「ここ?」
「うん」
なつきが頷く。
春樹は先に通路側へ立ち。
なつきが窓側へ入れるように、椅子を少し引いた。
「ありがとう」
「うん」
なつきは窓側の席へ座る。
春樹がその隣へ座った。
たった、それだけ。
同じクラスの男女実行委員なのだから、隣へ座るのは自然なことだった。
けれど。
なつきは椅子へ腰を下ろした瞬間、心臓が少しだけ速くなるのを感じた。
教室とは違う。
図書室とも違う。
知らない生徒達が大勢いる場所。
新しい役目の最初の日。
その隣へ、春樹がいる。
「隣」
春樹が小さく言った。
なつきは春樹を見る。
「うん」
「座れた」
「うん」
「よかった?」
なつきは一度、周囲を見る。
それから、ほんの少し笑った。
「すごく」
「そっか」
春樹も資料を机へ置く。
その手が、なつきの資料のすぐ隣へ並んだ。
二年十一組。
同じクラス。
実行委員。
同じ机。
並んだ二冊の資料を見ただけで。
なつきの中の不安が、ほんの少しだけ小さくなった。
◇
「なつき」
反対側から声がした。
美優だった。
蓮と一緒に、二人の机の横へ立っている。
美優の腕には、特進科の色分けがされた実行委員用の腕章。
蓮も同じものをつけている。
「隣、座ったんだ」
美優の視線が、なつきと春樹の間を一度通る。
声は普通だった。
けれど。
なつきには、少しだけ胸の内が分かった。
「うん」
「同じクラスだもんね」
「うん」
「嫉妬した」
美優は、早かった。
席へ座ってまだ一分も経っていない。
なつきは少しだけ目を丸くし。
それから頷いた。
「うん」
「私も春樹の隣がよかった」
春樹が美優を見る。
「美優は蓮と同じクラス」
「分かってる」
「なら蓮の隣」
「そういう問題じゃない」
蓮が苦笑する。
「僕の扱い、少し雑じゃない?」
「蓮は隣にいても緊張しないから」
「それは安心されていると受け取っていい?」
「うん」
「ならいいかな」
美優は、なつきの後ろの机を見る。
そこは二人分、空いている。
「私達、後ろに座る」
「うん」
なつきは少しだけ安心した。
「近いね」
「うん。近くにいる」
美優は、まだ完全には笑っていない。
それでも。
後ろの席へ座る前に、なつきへ言った。
「二人だけにしないから」
なつきは、その言葉の中にあるいくつかの意味を感じた。
実行委員の仕事を、二人だけに抱えさせない。
春樹となつきだけの世界に、美優も関わる。
自分だけ置いていかれないように。
全部。
「うん」
なつきは答えた。
「美優さんも、一緒」
美優の表情が少しだけやわらかくなる。
「分かってるならいい」
蓮が後ろの席へ座りながら言う。
「会議中は、ちゃんと会議へ集中しようね」
「分かってる」
美優が返す。
「蓮こそ、私が春樹ばっかり見てたら止めて」
「止めても聞く?」
「内容による」
「その時点で不安だね」
なつきは思わず笑った。
春樹も、ほんの少しだけ口元を緩めている。
美優がそれを見る。
「春樹、今笑った」
「うん」
「何で?」
「美優と蓮」
「昔からこんな感じだけど」
「うん」
「今さら?」
「なつきが笑ったからかも」
春樹が、あまりにも自然に言った。
なつきの笑いが止まる。
美優も止まる。
蓮が、ゆっくり春樹を見る。
「春樹」
「何?」
「今のは、かなり自然だったね」
「何が?」
「なつきが笑ったから、自分も笑ったって」
「うん」
「春樹」
美優が低い声で呼ぶ。
「何?」
「嫉妬した」
「うん」
「でも、何て怒ればいいか分からない」
春樹は少しだけ首を傾げた。
「怒る?」
「怒らない。嫉妬したって言っただけ」
「そっか」
「そこは少し困って」
「どうして?」
「もういい」
美優は後ろの席へ座り、資料で顔を半分隠した。
蓮が小さく笑う。
「会議前から忙しいね」
◇
会議室へ入ってくる生徒は、まだ増えていた。
扉が開くたび。
腕章をつけた生徒達が周囲を見回し、同じクラスの相手を見つけて席へ向かう。
「こっち!」
「前空いてる!」
「名前書くの?」
「クラスごとにまとまった方がいい?」
知らない生徒達の声。
机を引く音。
椅子へ座る音。
資料を開く音。
なつきは、少しずつ会議室の空気へ慣れようとした。
前方。
生徒会役員らしい三年生達が、教卓の周りで資料を整理している。
担当教師達も何人かいる。
中央の机には、クラスごとに提出する用紙。
黒板の横には、大きな模造紙が立てかけられていた。
「本格的」
なつきが小さく言う。
「うん」
春樹も前を見る。
「緊張してる?」
「うん」
「黒猫」
「鞄の横」
今日は会議用の資料を机へ置くため、鞄は椅子の横へ置いている。
黒猫も、なつきの手がすぐに届かない位置にある。
「触れない」
「うん」
「持つ?」
春樹が聞いた。
「黒猫を?」
「机に置く?」
なつきは少し迷う。
高校生の会議。
机の上へ黒猫のキーホルダーを置く。
少し恥ずかしい気もする。
「子供っぽくない?」
「横田さんの」
「うん」
「必要ならいい」
春樹の言葉。
なつきは、椅子の横へ手を伸ばした。
鞄から黒猫を外すことはせず、鞄ごと少し前へ動かす。
指先が届く位置。
「これなら」
「うん」
「ありがとう」
「何もしてない」
「置いていいって言ってくれた」
「うん」
なつきは黒猫の頭へ、ほんの少しだけ触れた。
それだけで。
指先の震えが少し落ち着く。
春樹が見ている。
「握ってない」
「うん」
「考えてる?」
「うん。少し安心した」
「そっか」
その時。
前方から大きな声が響いた。
「間もなく開始します。着席してください!」
生徒会役員らしい男子生徒。
よく通る声。
室内のざわめきが、少しずつ小さくなる。
なつきは姿勢を正した。
春樹も資料を開く。
後ろの美優と蓮も、会話を止めた。
◇
時計の針が、午後四時十分を指す。
前方へ、一人の女子生徒が立った。
三年生。
生徒会長だろうか。
長い髪を後ろでまとめ。
姿勢が良く。
大勢の前に立っても、まったく緊張していないように見える。
「本日は、第一回秋季交流週間実行委員会へ参加していただき、ありがとうございます」
明瞭な声。
後方まで届く。
「生徒会副会長の、普通科三年、石川です。本日は進行を担当します」
会議室全体から、小さな拍手が起きる。
なつきも慌てて拍手をする。
「初回ですので、まず全体概要を説明し、その後、学年ごとの協議、最後に各クラスの提案確認を行います」
なつきは資料へ目を落とす。
春樹も同じページを開いている。
「長い?」
なつきが小声で聞く。
「一時間半」
「そんなに?」
「予定では」
なつきは思わず、資料の終了予定時刻を見る。
午後五時四十分。
家へ着く時間。
夕方の暗さ。
今日の宿題。
いろいろなことが一気に頭へ浮かぶ。
「長い……」
後ろから美優の小さな声も聞こえた。
蓮が返す。
「実行委員だからね」
「初回から本気」
「初回だから説明が多いんじゃない?」
前方。
副会長が続ける。
「なお、予定より早く終わる場合もあります」
会議室の空気が少し明るくなる。
「ただし、話し合いが進まない場合は延長します」
一気に沈む。
どこかの席から。
「最初に希望持たせないで……」
という声が聞こえた。
会議室に小さな笑いが広がる。
副会長も、少しだけ笑った。
「できる限り円滑に進めますので、皆さんもご協力ください」
なつきは、思った。
この人も。
ただ真面目に説明するだけではない。
少し笑わせ。
空気をやわらかくする。
人前で話すとは。
大きな声を出すだけではない。
相手の反応を見て。
息をつく場所を作る。
なつきはノートの端へ、小さく書いた。
『長い説明の途中で、空気をやわらかくする』
春樹がそれを見る。
「何?」
なつきが聞く。
「今の?」
「うん。話し方」
「参考?」
「うん」
「実行委員っぽい」
春樹の言葉に。
なつきの胸が少しだけ温かくなる。
「私、もう実行委員だから」
「うん」
「まだ慣れないけど」
「少しずつ」
「うん」
◇
全体概要の説明が始まった。
秋季交流週間は、月曜日から金曜日までの五日間。
通常授業を行いながら。
昼休み。
放課後。
一部の授業時間を使い。
学年や学科を越えた活動を行う。
全校統一企画。
学年企画。
クラス合同企画。
委員会企画。
商業科の販売企画。
図書委員会の文化展示。
内容は多岐にわたる。
「全部覚えられるかな」
なつきが小声で言う。
「メモする」
春樹が答える。
「二人で分ける?」
「うん」
「私は、クラスで必要なこと書く」
「俺は日程」
「うん」
自然に役割を分ける。
春樹は日付と提出期限。
なつきは、クラスへ伝えるべき内容と、必要な準備。
二人のペンが、同じ机の上で動く。
なつきは途中。
説明の速度へ追いつけなくなりそうになった。
次の項目へ進む。
まだ前の文章を書き終えていない。
焦る。
「待って」
春樹が小声で言う。
「何?」
「そこ、俺書いた」
春樹のノート。
同じ内容が、簡潔にまとめられている。
「あとで見せる」
「うん」
「全部書かなくていい」
「うん」
呼吸が戻る。
なつきは、次の説明へ耳を向ける。
以前なら。
追いつけないと思っただけで、頭の中が真っ白になった。
今は。
春樹がいる。
書けなかった部分は、あとで見せてもらえる。
自分も、春樹が聞き逃したことを拾えるかもしれない。
頼る。
返す。
一緒に。
「大丈夫?」
春樹が聞く。
「うん」
「黒猫?」
「今は触らなくても大丈夫」
「そっか」
なつきは少しだけ笑った。
◇
説明が三十分ほど続いた頃。
会議室の空気には、少しずつ疲れが見え始めていた。
一年生の一部は、資料のどこを読めばいいのか分からない顔をしている。
三年生でも、椅子へ座り直す者がいる。
スポーツ特待らしい男子生徒は、眠気と戦うように何度も瞬きをしていた。
その隣の女子が、肘で小さくつつく。
「寝ないで」
「寝てない」
「目閉じてた」
「考えてた」
「春樹くんと同じ言い訳」
なつきは、思わず小さく笑った。
「何?」
春樹が聞く。
「前の人」
「寝てた?」
「考えてたって」
「寝てたかも」
「春樹くんは、本当に考えてるもんね」
「うん」
「見分けにくいけど」
「横田さんは分かる?」
「少し」
「どうやって?」
なつきは春樹の顔を見る。
「本当に考えてる時は」
「うん」
「少し眉が動く」
春樹が、自分の眉へ触れた。
「動く?」
「ほんの少し」
「見てる」
「うん」
答えたあと。
なつきは、自分がずいぶん自然に言ったことへ気づく。
春樹の顔を見ている。
細かな表情まで。
それを。
本人へ、そのまま伝えた。
頬が少し熱くなる。
春樹は。
少し黙ったあと。
「俺も」
「何が?」
「横田さん、考えてる時」
「うん」
「黒猫なくても分かる」
胸が鳴る。
「どうして?」
「唇、少し動く」
「私?」
「声出てないけど」
「何か言ってる?」
「たぶん、頭の中で」
なつきは慌てて口元へ手を当てた。
「恥ずかしい」
「でも分かる」
「何を考えてるかも?」
「そこまでは分からない」
「よかった」
後ろから美優の声がした。
「会議中に二人で何の観察報告してるの」
なつきと春樹が同時に振り返る。
美優は資料を持ったまま。
少しだけ不満そうな顔。
「ちゃんと聞いてる?」
「聞いてる」
春樹が答える。
「ノートも取ってる」
「それは見れば分かる」
「じゃあ大丈夫」
「そういう問題じゃなくて」
蓮が小声で言う。
「美優も、さっきから二人を観察してるよね」
「私は監視」
「何が違うの?」
「違う」
「説明できる?」
「できない」
前方。
副会長が一度、こちらへ視線を向けた。
四人は同時に前を向く。
なつきは、笑いそうになるのを堪えた。
◇
「それでは」
副会長が言った。
「ここから学年ごとに分かれて、合同展示の組み合わせについて協議します」
会議室の空気が変わる。
全体説明。
聞いているだけの時間から。
自分達が話す時間へ。
なつきの胸が、また少し速くなる。
「二年生は、こちら側の机を使ってください」
生徒会役員が、部屋の右側を示す。
「クラス番号順に四人から六人程度のグループを作り、各クラスの提案を共有してください」
机を移動する音。
椅子を引く音。
生徒達が立ち上がる。
「二年十一組は」
春樹が資料を見る。
「十組、十二組と同じ」
「三クラス?」
「うん」
美優が言う。
「私達、二年三組だから別」
「そっか」
なつきの声に、少しだけ寂しさが混ざる。
美優はそれを聞き。
少し嬉しそうにした。
「寂しい?」
「少し」
「私も」
「終わったら話そう」
「うん」
蓮が美優を促す。
「行こう。三組は向こう」
美優は席を立つ。
春樹の方を一度見て。
なつきを見る。
「ちゃんと話してね」
「うん」
「緊張しても」
「うん」
「春樹だけに任せない」
「分かってる」
「春樹も、なつきに任せすぎない」
「うん」
春樹も頷く。
「二人で」
なつきが言う。
美優は。
少しだけ嫉妬したように口元を結び。
それでも頷いた。
「二人で頑張って」
◇
二年十組。
二年十一組。
二年十二組。
三クラスの男女実行委員、合計六人が、一つの大きな机を囲んだ。
なつきと春樹。
十組の男子は、明るい雰囲気の普通科生徒。
女子は、眼鏡をかけた落ち着いた生徒。
十二組はスポーツ特待のクラスらしく。
男子は身体が大きく、女子は短い髪で、はきはきとした話し方だった。
「まず、自己紹介から」
十組の女子が言う。
その言葉だけで。
なつきの背中に緊張が走る。
自己紹介。
名前。
クラス。
簡単な挨拶。
それだけ。
でも。
知らない人の前。
視線が集まる。
「十組からでいい?」
「うん」
十組の男子が笑う。
「普通科二年十組、佐藤です。こういうの初めてです。よろしく」
「同じく十組、菊池です。書記委員もしています。よろしくお願いします」
次。
十二組。
「スポーツ特待二年十二組、藤田です。サッカー部です。よろしく」
「十二組、長谷川です。女子バスケ部です。力仕事はできます」
「実行委員、力仕事あるかな」
佐藤が笑う。
「絶対ある」
長谷川が答える。
「行事は最後、机運びになるから」
「それは分かる」
少し笑いが起きる。
そして。
視線が。
なつきと春樹へ向いた。
春樹が、なつきを見る。
先に話す?
そう聞いている顔。
なつきは。
小さく頷いた。
自分から。
やる。
「商業科二年十一組」
声を出す。
思ったより少し小さい。
でも。
全員が静かに聞いている。
「横田なつきです」
一度、息を吸う。
「実行委員は初めてで、まだ分からないことが多いですけど」
言葉が少し止まる。
春樹が隣にいる。
見なくても分かる。
「みんなの意見を、ちゃんと聞けるように頑張ります」
言えた。
「よろしくお願いします」
頭を下げる。
「よろしく」
「こちらこそ」
「丁寧」
長谷川が笑う。
次。
春樹。
「二年十一組、大國春樹です」
短い。
少し沈黙。
なつきは、春樹が言葉を探していると分かる。
「実行委員は」
春樹が続ける。
「俺も初めてです」
「うん」
なつきが、思わず小さく頷く。
春樹の視線が一度、なつきへ向く。
「横田さんと」
ほかの四人が少しだけ反応した。
「クラスの意見を、正確に持ってきます」
「よろしくお願いします」
春樹も頭を下げる。
佐藤が笑った。
「横田さんと、って入るんだ」
なつきの頬が熱くなる。
「同じクラスだから」
春樹が答える。
「うん。分かるけど」
菊池が、少しだけ笑う。
「仲良さそうですね」
「それは」
なつきが言葉に詰まる。
長谷川が続ける。
「昼休みの恋愛優先道路の二人?」
なつきの身体が、固まった。
「知ってるんですか!?」
声が思ったより大きく出た。
六人だけではなく。
近くの別グループまで、一瞬こちらを見る。
「ごめん」
長谷川が笑いを堪える。
「廊下中に聞こえてたから」
藤田も頷く。
「俺、二階にいたけど聞いた」
「二階まで……」
なつきは机へ顔を伏せたくなった。
佐藤が言う。
「本当に付き合ってないんですか?」
「付き合ってない」
春樹は即答した。
「じゃあ、これから?」
「分からない」
「大國くん、真面目に答えるんだ」
菊池が口元へ手を当てる。
なつきは黒猫へ触れようとして。
今は鞄が、元の席に置いたままだと気づく。
触れない。
その代わり。
資料の端を握る。
春樹が、その手を見る。
「緊張?」
「恥ずかしい」
「そっか」
「春樹くんは平気なの?」
「付き合ってないから」
「そうだけど」
「でも」
春樹は少し考える。
「見つけるのは本当」
六人の机が。
一瞬静かになる。
次の瞬間。
長谷川が片手で顔を覆った。
「それ、付き合ってない人の言葉じゃない」
藤田も笑う。
「恋愛優先道路、正しかった」
「正しくない!」
なつきが返す。
今度は。
声がしっかり出た。
六人全員が笑う。
緊張していたはずの自己紹介。
最初の話し合い。
気づけば。
少しだけ空気がやわらかくなっていた。
◇
「じゃあ、クラスの提案を出そう」
菊池が進行する。
十組。
校内の歴史展示。
学年混合の写真企画。
十二組。
協力型競技。
部活動体験。
二年十一組。
なつきはノートを開く。
「私達のクラスは、三つ出ました」
「三つ?」
佐藤が聞く。
「多い」
春樹が横から言う。
「圭が七個出した」
「誰?」
「三浦くん」
「恋愛優先道路の人?」
なつきは、ゆっくり頷いた。
「はい……」
机に笑いが起きる。
「それなら納得」
「どんな案?」
「巨大人生ゲーム」
春樹が言う。
全員が少し黙る。
「規模が大きい」
藤田が言った。
「体育館でやるらしい」
「準備何日かかるの」
「却下された」
「でしょうね」
なつきも笑う。
「会議へ持ってきたのは」
ノートを見る。
「地元のお店や産業を紹介して、商業科の販売企画とつなげる案」
「うん」
「学科ごとの授業を、簡単に体験する企画」
「面白そう」
「それと、推薦図書や映画、音楽を一緒に紹介する文化展示」
菊池がメモを取る。
「授業体験は、交流になるね」
長谷川も頷く。
「特進の勉強法とか見てみたい」
佐藤が笑う。
「普通科は何を教えるんだろ」
「学校生活の普通さ?」
「弱い」
なつきは。
みんなの言葉を一つずつ聞きながら。
ノートへ書いた。
否定するのではなく。
冗談も。
真面目な意見も。
「商業科の簿記体験は?」
菊池が聞く。
「簡単な仕訳とか」
「できます」
なつきは答えた。
言ったあと。
少し驚く。
できます。
自分で。
すぐに言った。
以前のなつきなら。
簿記を人へ教えるなんて、できないと思っただろう。
「私も、簡単なところなら説明できます」
言葉を足す。
春樹が、なつきを見る。
ほんの少し、表情がやわらかい。
「大國くんも?」
佐藤が聞く。
「うん」
「うんだけ?」
昼休みの圭達と同じ反応。
春樹は少し考える。
「計算と説明はできる」
「頼もしい」
「でも、人が多いと少し苦手」
春樹が正直に言う。
なつきも続ける。
「私もです」
長谷川が笑う。
「二人で一人分?」
春樹となつきが、ほぼ同時に答える。
「二人分」
「二人分です」
声が重なった。
一瞬。
机の全員が静かになり。
それから、笑った。
「そこは強いんだ」
「息合ってる」
「恋愛優先」
「言わないでください!」
なつきの声が、またしっかり出た。
自分でも。
少しおかしくなって。
笑った。
◇
話し合いは。
思っていたより進んだ。
なつきは。
最初の数分こそ緊張していた。
けれど。
相手の意見を聞く。
分からないことは聞き返す。
自分達の案を説明する。
それを繰り返すうち。
会議室の大勢の生徒は、少しずつ視界から遠のいていった。
今。
目の前にいる五人。
話す相手。
全員を一度に意識しなくていい。
春樹も。
必要な時に補ってくれる。
「提出期限」
「来週水曜」
「展示場所」
「中央棟と特別棟」
「販売企画との重複は?」
「商業科担当と相談」
短い言葉。
でも。
なつきが説明しやすいように、必要な部分を足してくれる。
一度。
佐藤の提案が長くなり。
なつきは、どこが重要なのか分からなくなった。
春樹が紙へ小さく書く。
『写真企画+地域交流』
なつきはそれを見て。
「つまり」
と口にする。
「学校や地域の写真を集めて、学年混合で展示する案ですか?」
「そう。それ」
佐藤が頷く。
「説明長くてごめん」
「大丈夫です」
分かった。
聞けた。
言葉にできた。
なつきはノートへまとめる。
春樹が小さく言う。
「できてる」
なつきも小さく返す。
「春樹くんも」
◇
学年協議の終わり。
各グループから、一つ提案を提出することになった。
六人で話し合い。
授業体験と地域紹介を組み合わせた企画を出すことに決まった。
『学科・地域交流体験ブース』
商業科。
普通科。
スポーツ特待。
それぞれの学びや活動を簡単に体験し。
地元の産業や学校の特徴も紹介する。
「名前、少し固い」
長谷川が言う。
「でも会議へ出すだけなら」
菊池が答える。
「採用されたら、後で考える」
佐藤が笑う。
「恋愛優先体験ブース」
「却下」
なつきより先に、春樹が言った。
机の全員が笑う。
「大國くん、そこは早い」
「圭みたいになる」
「有名な人なんだね」
「今日だけで」
なつきは、圭の顔を思い浮かべ。
少しだけ疲れたように笑った。
「本人、たぶん喜びます」
◇
全体共有。
学年ごとの代表案が読み上げられる。
なつき達のグループの案も。
生徒会役員が前方で読み上げた。
「学科・地域交流体験ブース」
なつきの胸が少し高鳴る。
自分達が話したこと。
クラスから持ってきた意見。
それが。
大きな会議室の前で、名前を持った。
採用はまだ分からない。
でも。
自分のクラスの声を。
ここまで運べた。
「横田さん」
春樹が小さく呼ぶ。
「うん」
「通った」
「まだ候補」
「でも、出せた」
「うん」
なつきは。
鞄へ触れられない代わりに。
机の下で、ほんの少し拳を握った。
「嬉しい」
「分かる」
「顔?」
「うん」
「黒猫なくても?」
「うん」
後ろの席へ戻ってきた美優が。
その会話を聞く。
「また二人だけで分かってる」
なつきが振り返る。
「美優さんのグループは?」
「合同学習相談会」
「勉強?」
「特進だけが教えるんじゃなくて、商業科やスポーツ特待からも教えてもらう」
「似てる」
「うん。授業体験と近い」
蓮も言う。
「統合されるかもしれないね」
「じゃあ、一緒になる?」
なつきの顔が明るくなる。
「美優さん達と」
「うん」
美優も少し嬉しそうになる。
「そうなったら、私も春樹の近くで仕事できる」
なつきの胸が、少しだけ揺れる。
すぐに言う。
「今、嫉妬した」
「うん。私も言いながら、なつきが嫉妬すると思った」
「でも、一緒は嬉しい」
「両方?」
「うん」
美優が小さく笑った。
「もう慣れてきた」
◇
会議の終了予定時刻。
午後五時四十分。
時計は。
午後五時三十二分。
副会長が前へ立つ。
「本日の議題は以上です」
会議室全体から。
小さな安堵の空気が漏れる。
「予定より八分早い!」
どこかの生徒が、小さく喜んだ。
副会長が笑う。
「皆さんの協力のおかげです」
拍手が起きる。
なつきも。
春樹も拍手する。
「最後に、次回までの課題を確認します」
安堵が少しだけ消える。
「各クラスで、今日提出した案について再度意見を集めてください」
「まだある」
美優の声。
「また説明する」
なつきが言う。
「うん」
「できる?」
春樹が聞く。
なつきは少し考え。
今日。
クラスへ声をかけた。
この会議で、知らない生徒へ自己紹介した。
意見を説明した。
小さな声を聞いた。
全部。
できた。
「うん」
なつきは答える。
「春樹くんと一緒なら」
言ったあと。
少し考え直す。
「一人でも、少しはできると思う」
春樹が、なつきを見る。
「うん」
「でも、一緒がいい」
「俺も」
副会長の説明が終わる。
「以上で、第一回実行委員会を終了します。お疲れさまでした」
「ありがとうございました」
全員で挨拶する。
椅子を引く音。
資料を片づける音。
長い会議が終わった。
◇
なつきは席を立った瞬間。
思っていた以上に身体へ力が入っていたことへ気づいた。
肩が少し重い。
喉も乾いている。
「疲れた」
美優が後ろから言う。
「うん」
なつきも頷く。
「でも」
「何?」
「思ってたより、話せた」
「見てた」
「美優さん、別のグループだったのに?」
「時々」
「会議へ集中して」
「してた。時々見ただけ」
蓮が言う。
「かなり見てたよ」
「蓮」
「本当のこと」
春樹がなつきの資料を一部持つ。
「何?」
「多い」
「大丈夫だよ」
「半分持つ」
「ありがとう」
なつきは、素直に渡した。
少し前なら。
迷惑をかけたくないと思い、断っていたかもしれない。
今は。
春樹が持ちたいと言ってくれた。
受け取っていい。
「横田さん」
「うん?」
「できてた」
なつきの胸が、静かに温かくなる。
「春樹くんも」
「うん」
「自己紹介、短かったけど」
「名前は言った」
「うん」
「横田さんと、って言った」
「言ってた」
思い出すと。
また頬が少し熱くなる。
「みんな反応してた」
「どうして?」
「春樹くん、最初から私の名前入れるから」
「一緒だから」
「嬉しかったけど」
「うん」
美優が後ろから言う。
「私も反応した」
「嫉妬?」
「うん」
「早い」
「今日ずっとしてる」
蓮がため息交じりに笑う。
「会議終わっても忙しいね」
◇
大会議室を出る。
廊下の窓から見える空は。
すっかり夕方の色へ変わっていた。
昼間よりも濃い橙色。
校舎の影は長く伸び。
部活動の声も、遠くから聞こえる。
なつきは。
会議室の扉が閉じる音を聞き。
小さく息を吐いた。
終わった。
最初の会議。
怖かった。
緊張した。
知らない人達。
大勢の視線。
でも。
逃げなかった。
「横田さん」
春樹が呼ぶ。
「何?」
「黒猫」
なつきは鞄を受け取り。
黒猫へ触れる。
今度は。
小さく揺らした。
「嬉しい」
「うん」
「すごく疲れたけど」
「うん」
「でも、やってよかった」
「俺も」
「春樹くん、隣にいてくれた」
「うん」
「私も、春樹くんの隣にいられた?」
春樹は少し考える。
「うん」
「助けられた?」
「うん」
「どこ?」
「自己紹介」
「うん」
「横田さんが先に言ったから、言いやすかった」
なつきは少し驚く。
「私が?」
「うん」
「私、緊張してたよ」
「でも言った」
「うん」
「だから俺も」
胸が温かくなる。
助けてもらうだけではない。
自分の一歩が。
春樹の一歩にもなった。
「そっか」
なつきは黒猫を揺らす。
「嬉しい」
「分かる」
◇
特別棟から中央棟へ戻る途中。
階段の踊り場。
下から、聞き慣れた声が響いた。
「お疲れさまでーす!」
圭。
その後ろに。
島中。
田辺。
紅秋。
亜衣。
茜。
全員がいる。
「何で?」
なつきが目を丸くする。
圭が言う。
「実行委員のお迎え」
「待ってたの?」
「途中から」
紅秋が訂正する。
「図書室と自習室で時間を潰したあと、集合した」
「言い方」
圭が不満そうに言う。
亜衣が笑う。
「初会議どうだった?」
「長かった」
美優が即答する。
「疲れた」
蓮も頷く。
「でも、予定より早く終わった」
田辺が聞く。
「案、出せた?」
「うん」
なつきはノートを見せる。
「学科と地域の体験ブース」
「俺の巨大人生ゲームは?」
圭が聞く。
「出してない」
「何で!」
教室全員一致。
そう言おうとした時。
春樹が先に答えた。
「現実的じゃない」
「春樹、冷たい」
「会議室の人にも話した」
「俺の案?」
「うん」
「反応は?」
「規模が大きい」
なつきが答える。
「可能性ある?」
「ないと思う」
「横田まで」
島中と田辺が笑う。
「恋愛優先道路は話題になった?」
島中が聞いた。
なつきの動きが止まる。
長谷川。
藤田。
佐藤。
菊池。
全員知っていた。
「なった」
「本当に?」
「別のクラスの人、全員知ってた」
圭の顔が、明るくなる。
「俺、有名?」
「喜ばないで!」
なつきが声を上げる。
階段に笑い声が響く。
紅秋は、静かに圭を見る。
「明日から少し大人しくしろ」
「会議の空気を和ませた」
「お前は会議室にいなかった」
「遠隔支援」
「迷惑だ」
美優も、少しだけ笑う。
「でも、なつき自己紹介で話しやすくなったんじゃない?」
「それは……」
恋愛優先道路の話で。
笑いが起き。
緊張がほどけた。
完全には否定できない。
「少しだけ」
なつきが答える。
圭が胸を張る。
「ほら!」
「だからって次もやらないで」
「次は何道路?」
「次はない!」
茜が穏やかに言う。
「圭くん。なつきが本気で嫌がっている時は、やめなさい」
圭は。
少しだけ表情を改めた。
「うん」
「今日は?」
なつきが聞く。
圭は少し考える。
「嫌だった?」
「すごく恥ずかしかった」
「ごめん」
「でも」
なつきは続ける。
「人混みで道を作ってくれたのは、助かった」
「じゃあ半分許された?」
「半分」
「残り半分は?」
「明日、大人しくする」
「分かった」
紅秋が言う。
「念書を取った方がいい」
「信用して」
「実績がある」
また笑いが起きた。
◇
昇降口へ向かう廊下。
大きな集団。
春樹。
なつき。
美優。
蓮。
圭。
紅秋。
亜衣。
茜。
島中。
田辺。
クラスも。
学科も違う。
それでも。
同じ方向へ歩いている。
「交流週間」
亜衣が言った。
「始まる前から、もう交流してるね」
「昼も言った」
島中が返す。
「このメンバーで展示できるんじゃない?」
田辺が言う。
「題名は?」
圭が聞く。
紅秋が先に言う。
「恋愛優先道路以外」
「まだ何も言ってない」
「顔で分かる」
「みんな俺の顔読みすぎ」
春樹が小さく言う。
「圭、分かりやすい」
「春樹に言われた」
なつきは笑った。
朝。
会議室へ入る前。
大勢の人を見て。
怖かった。
自分にできるだろうかと思った。
今。
隣には春樹。
後ろには美優や蓮。
周囲にはクラスの仲間達。
一人ではない。
◇
校門を出る頃。
空は、夕焼けから薄い紫色へ変わり始めていた。
いつもより遅い時間。
街を歩く人。
車のライト。
駅へ向かう生徒達。
なつきは。
少しだけ疲れた足で歩きながら。
今日一日を思い返した。
昼休み。
人混み。
春樹の声。
見つけた。
恋愛優先道路。
大勢の笑い。
クラスへの最初の説明。
小さな声を拾ったこと。
大会議室。
自己紹介。
知らない生徒との会話。
自分達の案。
できた。
全部。
完璧ではない。
緊張した。
言葉も詰まった。
春樹に助けてもらった。
でも。
なつきも、春樹を少し助けられた。
「春樹くん」
前を歩いていた春樹が振り返る。
「何?」
「今日」
「うん」
「私、実行委員できてた?」
春樹は。
すぐに頷いた。
「うん」
「何点くらい?」
「点数?」
「百点なら」
春樹は少し考える。
「点数つけない」
「どうして?」
「まだ途中」
「そっか」
「でも」
春樹は続ける。
「今日の横田さんは、今日できること全部してた」
なつきの胸が、ゆっくり温かくなる。
百点より。
その言葉の方が嬉しかった。
「春樹くんも」
「俺も?」
「今日できること、全部してた」
「うん」
「二人でできた」
「うん」
朝。
授業中に回された紙。
『二人でできた』
その言葉を。
今度は声で言う。
「次も」
なつきが言った。
「二人で?」
「うん」
「美優さん達も」
「うん」
「クラスのみんなも」
「うん」
「一緒に」
「うん」
少し後ろ。
美優が聞いている。
「最後にちゃんと私達入れた」
「最初から入ってるよ」
なつきが返す。
「ならいい」
圭が言う。
「俺も?」
「大人しくするなら」
「条件付き」
「巨大人生ゲームは出さないなら」
「夢が消える」
「現実を見ろ」
紅秋の言葉。
夕方の道に。
みんなの笑い声が広がった。
◇
会議室では。
隣に座るだけでも。
目立った。
自己紹介で相手の名前を出すだけで。
笑われた。
昼休みの出来事まで知られていた。
恥ずかしくて。
何度も顔が熱くなった。
それでも。
なつきは。
今日、春樹の隣へ座れてよかったと思った。
春樹も。
なつきの隣がいいと言った。
その隣は。
ただ甘いだけの場所ではない。
互いに足りないところを補い。
言葉を探し。
クラスの声を持ち。
責任を背負う場所。
春樹がいるから。
なつきは話せた。
なつきが先に話したから。
春樹も話せた。
守られるだけではない。
支えるだけでもない。
互いに。
少しずつ。
隣へ立つ。
なつきは、鞄の黒猫へ触れた。
今日。
会議中。
触れられない時間もあった。
それでも大丈夫だった。
春樹の声があったから。
隣にいると分かったから。
「なつき」
亜衣が呼ぶ。
「何?」
「黒猫、嬉しい揺れ方」
「うん」
「会議終わったから?」
「それも」
「他は?」
なつきは。
少し前を歩く春樹を見た。
春樹も。
なつきの視線に気づく。
振り返る。
目が合う。
「隣にいられたから」
なつきは答えた。
亜衣がやわらかく笑う。
春樹も。
何を話しているかは聞こえていないはずなのに。
少しだけ口元を緩めた。
第一回実行委員会。
最初の仕事。
怖さの中へ。
一歩。
そして。
君の隣へ。
また一歩。
二人は。
騒がしくて。
少し恥ずかしくて。
それでも温かい仲間達の声に囲まれながら。
夕暮れの帰り道を。
ゆっくりと歩いていった。




