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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第12章 その男【服部半蔵】

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波乱の軍議

<稲葉山城・評定の間にて>



 (かえで)さんと<かなめ>が近江に出立してから三日後、いよいよ信長様が京上洛の準備に向けて動き始めた、その最初が浅井家と共に一向衆との決戦であり、その戦いのタイミングに合わせ俺達【木下軍団】が観音寺城を落城させる計画である。


(だが、果たしてこの一癖も二癖もある織田家の重臣達が、素直に藤吉郎様の城攻めを認めるかどうか…)


 そんな不安を感じながらも、すでに家臣たちが集まっているこの評定の間には信長様も一の段に座り、軍議開始の号令を掛けようとしていた。


「皆の者、朝早くから大儀である、(おもて)を上げよ!」


 緊張の空気に包まれながら俺達家臣一同は顔を上げ、視線を信長様に向けた…当然ながらまだまだ身分の低い俺や藤吉郎様は中段の位置で見詰めるしかなかった。


「今日、皆を集めたのは他でもない!これより我らは、あの【足利義昭(あしかがよしあき)(こう)】を近い内に迎え入れ、無法地帯となっておる京の秩序回復し、その元凶となった三好衆に破滅の鉄槌を下す!されど、まず上洛における邪魔な一向衆と【六角家】を先に潰しておく必要がある!」


「わははは、それは何とも壮大でござるな!もはや、この織田家と浅井家の連合軍に歯向かえる者などおりませぬ、どうか先陣はこの【柴田勝家】に命じてくだされ!」


「いやいや、柴田殿はこれまでも十分(こう)を稼いでおられる、此度(こたび)の出征はこの【丹羽長秀(にわながひで)】にお任せください!」


 美濃が信長様の手で平定され、それ以降なかなか武功のチャンスに恵まれなかった武将達がここぞとばかりに自分をアピールし始めた。

 その熱気たるや、まるでアイドルの愛用品オークションに群がるファンのようだ。


(まずいぞ…この空気の中、信長様が観音寺城を攻める任を藤吉郎様に与えなどしたら…周りからの妬みは尋常ではない…)


「うむ、皆の意気込み天晴(あっぱれ)である!が、一向衆はわし自ら成敗せねば気が収まらぬ!勝家、長秀!両名はわしの副将となり兵を2000ずつ与える!(あと)はそれぞれ配下の部隊長を選別せよ!」


「ははっ!」<勝家・長秀>


 ここまではいい、これからが問題だ…一向衆との決戦は柴田・丹羽様が副将で決まった、となれば他の武将達の意識は(おの)ずと誰が【六角】攻めの総大将に任命されるかの一点となっていた。

 騎馬に(またが)り颯爽と軍勢を率いて行軍する…武将たるもの誰もが一度は夢見る姿だ…当然ながら柴田・丹羽に続く重臣達は自分の名を呼ばれる事に期待しているのは間違いない。


(くそ、この中で信長様が他の重臣よりも格下である藤吉郎様の名を呼べば、一気にこの場はざわめき始める…それはきっと信長様も理解しているはずだ…果たして……)


「次に【六角家】攻めの総大将であるが……猿!…貴様がその総大将となり、当家の威厳を【六角義賢(ろっかくよしかた)】に見せ付けよ!」


 ザワザワザワ………


(くっ、やはりそうなったか!)


 予想通り信長様の一声(ひとこえ)にこの場の空気が一転した…ため息をつく者、舌打ちをして藤吉郎様を睨む者、顔を左右に振る者…その光景だけで、誰もがこの決定を良しと受け入れる者は居なかった!むしろ、全ての嫉妬と憎悪が藤吉郎様に向けれているように俺は感じた。


(嫌な空気だ…)


 俺はそっと右隣に座っている竹中様に視線を向けたが、彼はこの場の空気に飲まれる事無く、小さく笑みを浮かべながら瞼を閉じている。


「あの…竹中様は何も感じないのですか?」


「え?…ふっ♪、中々殿(との)は役者だと思いまして…つい笑みが出てしまいました…すみません…でも、間もなくこの事態は収拾されますよ、まぁ見ておきまょう♪」


「…はぁ……」


 すでに竹中様はこれからの流れを読んでいるようだ…となれば、どう信長様がこの事態を収拾するか、お手並み拝見する気持ちまで出て来た。


「恐れながら殿(との)!」


「なんじゃ権六!」


「拙者にはこの大役、藤吉郎では荷が重いと思われまする…ここは池田・佐々の両名が適任かと…」


「黙れ権六!まだわしの話は終わっておらぬわ!控えよ!」


「ははっ、申し訳ございません!」


 信長様があの【鬼柴田】を一喝したとたん、一瞬でこの場に静けさが戻った。

 これが(のち)の【覇王】となる織田信長の威厳であると、俺は全身で感じていた。


「よいか猿!貴様には1500の兵と【犬千代(いぬちよ)】【巽淳一】を副将に付ける、部隊編成の人材収集も貴様らが全て行うのじゃ!」


「ははっ!」


「だが肝心なのはそれからじゃ、よいか!貴様は我が本隊の出立後から二日目に出陣せよ!それも慌てずゆっくりと、女子供でも分かるよう観音寺城へ向け進軍いたせ!」


「……はぁ……御意にございます…」


 誰もが信長様の(めい)に違和感を感じていた…何故二日後なのだろうか?どうしてゆっくり進軍しなければならないのか?と…しかし、その面子の中で二人だけ信長様の思惑を想定内とし聞いていた者が居た、そう明智光秀と竹中半兵衛様である!そんな中、ついに明智光秀が口を開いた。


「なるほど、殿(との)のお考えは【六角義賢(ろっかくよしかた)】の意識を木下隊に向けさせ、一向衆に加担させないようにするのが目的でございますな、言わば木下隊は単なる(おとり)役にするのですね♪それなら木下藤吉郎殿(どの)に打ってつけのお役です♪(おとり)なら猫の子でも虎の子に見せる事が出来ますし…」


(チッ、なんかムカツク言葉だな!)


「わははは!光秀殿(どの)もいい事を言われる♪それに総大将が【(さる)】で副将が【(いぬ)】か!精々喧嘩だけは兵の前でするなよ、恥の上塗りになるでな♪おっと、出征中は【(さる)】でもなく【(いぬ)】でもなく、【猫の子】であったか、これは失敬♪」


(くっ!佐々成正(ささなりまさ)!…)


 クスクスと周りから失笑する声が耳に入って来る!何も顔には出さないが、当の本人達はいたたまれない気持ちになっているはず…俺だってこんなにムカついているのだから!。


「巽殿、本物の【虎】とは如何(いか)なるものかを、ハッキリと彼らに見せ付けてやりましょう♪」


「竹中様♪」


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