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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第12章 その男【服部半蔵】

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出陣前

<観音寺城攻め出陣前>



 軍議での宣言通り、一向衆討伐に出陣した信長隊の二日後、いよいよ俺達【木下隊】の出陣する日がやって来た!すでに稲葉山城近くの広場には木下隊1500人の兵が集結している。。

 桶狭間の戦い以来、久方(ひさかた)ぶりに着けた甲冑はやはりグッと重い…よくこんな姿で野山を駆け巡る兵達の体力は本当に凄いとつい感心してしまう。


(昔の人は偉かった…令和の時代に居る頃は、その言葉すら自体、まるで他人事のようにしか思えなかったな…)


「いよいよですね、巽殿」


「竹中様…そうですね…なんか妙な緊張感と不安を感じています…」


「心配ございません、すでにこの戦いは我らの勝利で終わります、そろそろ私が(かえで)さん達に向わせた使者が彼女達と合流しているはず…後は観音寺城の出方(でかた)次第…」


 先に(かえで)さんと<かなめ>を【石寺の町】に潜入させたまでは知っているが、それから竹中様は彼女達に何をさせていたのか全く分からない…ただ、これほど自信満々な竹中様を見ていると、いつしか俺の不安も何処かに飛んでしまっていた。


「よっ!久しぶりだな色男!あれから(かえで)とは上手くいっているのか?」


「えっ、あっ!ま、前田様!」


「おう、相変わらず甲冑姿が似合っていねぇな♪で、もう(かえで)を【女】にしてやったのか?」


 派手な深紅の甲冑に、朱色の槍を両肩に乗せ、威勢よく俺の前に現れたのは【前田犬千代】(のち)に加賀百万石の大大名になる【前田利家】である!。

 余談ではあるが、彼の甥っ子さんは俺の育った400年後の時代では、コミックや小説でもかなり有名になった天下御免の傾奇者(かぶきもの)、あの【前田慶次郎(まえだけいじろう)利益(とします)】であり、話は色々と脚色されているとはいえ、俺も大ファンな武将の一人である。


「いっ!!そ、そんな事…で、出来るわけないじゃないですかーー!」


(今はアノ【変態娘(かなめ)】が日夜(かえで)さんに付き(まと)っているし…)


「なんだぁ~、ほんっとにお前は情けねぇなぁ~、そんなの(かえで)の手を引いて自分の寝所に連れ込めばいいだけだろ?」


「殺されますよ!」


 つい前田様の言葉で俺自身もイケナイ妄想をしてしまったが、どのパターンを想像しても【投げられる】【蹴られる】【殴られる】【最悪は斬られる】しか脳裏に浮かばなかった。

 それに、俺はフェミニストだ!女性の気持ちを優先するのが俺の主義である。


(とはいえ、この時代だと俺から寝所に誘わなければ何も進展しないのでは?それに相手は(かえで)さんだ…おねちゃんのように大胆な行動は出来ないはずだし…て、出陣前に何を考えているんだ!)


「あはは!ま、相手が高い山ほど攻略の甲斐があるってもんだ!精々頑張れ!」


「…は、はぁ……」


「何はともあれ、今回は貧乏くじだな!出来れば殿(との)の部隊で思う存分この朱槍を振り回し、一向衆を蹴散らし武功を立てたかったが…たまには藤吉郎と観音寺城を物見遊山(ものみゆさん)するのも悪くねぇわな♪」


「…前田様はあの軍議で、上の方々(かたがた)から言われた言葉に悔しくはならないのですか?」


 どの時代でも【パワハラ】【モラハラ】【セクハラ】があるようだ。

 まだ俺の時代ではそれを罰する制定があるだけマシだが、この時代はそれが当たり前みたいな風習になっている、そんな時代でどう彼らはハラスメントを乗り越えているのか、俺は少し興味が出て来た。


「は?そんなの言いたい奴には言わせておけばいいだけの事、そいつの為にウジウジ考えている時間は余りに勿体無いと思わねぇか?そんなくだらねぇ事に時間を(つい)やすなら、酒飲んで寝てる方がまだマシってもんよ♪」


「そんなものですか…」


「あぁ!いいか?天はいつも上から見てくれている、自分の行いをな!もし巽の旦那が天だとして、そんな卑劣な(やから)を見ていてどう思う?いずれその者に報いをくれてやりたくならねぇか?」


「そう、ですね…」


「正に【前田犬千代】殿(どの)の言う通りでございます、人を馬鹿にした者はいずれ自分が馬鹿にされる事を知りません、何とも哀れではございませんか、その様な(やから)と本気で向き合う必要などありません、今の自分が成すべき事は、未来の自分の姿を決め日々精進する事…もし、まだ自分の未来の姿が浮かばぬ場合は、天に恥じない行いを常にしておけばいいのです…そうすれば、いずれ天からの授かり物がやって来ます♪あ、申し遅れました…拙者、木下藤吉郎様より軍師のお役を賜りました竹中重治と申します」


「ほう!旦那があの有名な<今孔明>竹中半兵衛さんかい!俺の名前を知ってくれているとは、何とも光栄だな♪ま、今回は気楽によろしく頼むぜ!」


 人それぞれ性格や物事の判断基準は違うだろうが、彼らの心には【因果応報】の言葉が常に大きな柱となり存在していることだ【今の自分の行いが未来の自分の姿となる】当たり前の言葉だが、俺は恥ずかしながらそんな事すら考えてもいなかった。


「えぇ♪気楽に観音寺城を落としましょう♪」


「な!た…竹中の旦那、あんた今何を言った?俺らの役目は、この寄せ集めの部隊で【六角義賢(ろっかくよしかた)】の目を(あざむ)くことだろ?」


「それはあくまで軍議上での話…信長様の真意は我らの手で観音寺城を落とさせる事…しかし、あの軍議の中でそれを皆に伝えるとどういう雰囲気になるか……前田殿(どの)も想像が付くでしょう?」


 まるでキツネにつままれた様な顔で前田様は竹中様を眺めている…それもそのはずだ、城攻めが成功した場合の恩賞はとてつもなくでかい!当然誰もがそのビッグチャンスを手にしようと躍起(やっき)なのだから、あの場で藤吉郎様と前田様が城攻めに指名されれば、間違いなく一悶着(ひともんちゃく)が起こる。


「おなごの嫉妬なら可愛いが、むさくるしい男の嫉妬は見るに堪えんな……にしても…たった1500人の兵で何が出来る?」


「御心配なく、すでに手筈は整っております…ま、この際ですので、信長様の本隊も少々我らの勝利に利用させていただく予定です♪」


「は?まだ俺達は出陣もしていないのに勝利だと!」



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