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戦国時代の電気屋さん  作者: 朝風清涼
第12章 その男【服部半蔵】

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総大将は誰がやる?

 かつて【斎藤龍興(さいとうたつおき)】の隙を付いて稲葉山城を僅かの手勢で乗っ取った事のある竹中様だ、俺が信長様からの(めい)を打ち明けた途端に何かの策が思い付いたのか、それともすでに信長様の考えを読んでおり、織田家上洛の為には目の上のたんこぶとも言える【観音寺城攻略法】を完成させていたのかも知れない。


(いや…あの自信は、もう竹中様の頭には観音寺城が落城する光景が浮かんでいる!)


「え、半兵衛ちゃん、あの観音寺城を無傷で手に入れるとな?そんな事が可能なの?」


「えぇ、拙者の策なら、巽殿(たつみどの)のお優しい心に根付いた引っかかりも解消するでしょう♪」


 俺は今、三国志の英雄である【劉備玄徳(りゅうびげんとく)】の気持ちになっている「きっと孔明なら何とかしてくれる!」そんな安心感と勇気が【今孔明】である竹中様から与えられた気がした。

 となれば、俺は竹中様の策に合わせ懸命に働くだけである。


「あの…半兵衛様?…<かなめ>と姉様(あねさま)は何をすればよろしいのですか?」


「えぇ、それはこの(あと)お伝えいたします、必ずお二人の働きが重要となりますので…あ、ただ先に言っておきますが、殺生をするお役ではありませんからご安心を…」


「不思議じゃの…半兵衛ちゃんが強気になると、もうわしらは(いくさ)に勝ったような気分になる♪」


 俺と同じことを藤吉郎様も感じていたようだ、俺自身は歴史やゲームで彼の功績を知っている影響もあるが、藤吉郎様においてはリアで彼の功績を目の当たりにしていたのだから信頼度も大きい。


「いいえ、油断は大敵…今はまだ構想の段階です…完全に勝利を確信するまで気を緩めず励みましょう…そこで一番大事なのが…」


 パッッ!と竹中様は手にしていた(おうぎ)を開き、その(おうぎ)の【扇面(せんめん)】で顔半分を隠しながら、静かに自分の視線を俺たち一人一人に向けると、それはそれは重要な要件を口にした。


此度(こたび)の出征…誰を総大将といたしますか?」


「えっ!!そ、それは……やはり、この計略を考えた半兵衛ちゃんがいいのでは?」


「いえ、拙者はあくまで軍師として働く所存…」


「と、となると、やはり殿(との)から直々にお呼びが掛かった巽殿(たつみどの)でよいのでは?」


 まぁゲーム内では何万人もの兵士を指揮をした経験がある俺だが、まだ信長様から与えられる兵数は分からないとしても、恐らくは千単位になるはずである、それもコンピューターが作り出した兵士ではなく、感情のある本物の人間なのだ、クラスをまとめる学級委員長すら経験のない俺には到底荷が重すぎる!。


(それに、これは藤吉郎様にとって最高の立志チャンスじゃないか…)


「お言葉ですが藤吉郎様、僕は一介の商売人…人を指揮する(うつわ)ではございません…我らの総大将はただ一人、木下藤吉郎様以外あり得ません!」


「わ、わしじゃと!で、でも…ついこないだまで…わしは単なる足軽(あしがる)じゃったのに…そんな大役(たいやく)…わしには無理じゃ…この面子(めんつ)以外…だ、誰もわしには従ってくれるはずがない…」


「藤吉郎殿(どの)、鯉は膨大な量の水が落ちる滝を登り【(りゅう)】となりまする…滝口(たきぐち)から容赦なく落ちる水とは、己が【(りゅう)】となる為に神が与えた試練なのです…【(りゅう)】になりなさい、藤吉郎殿(どの)…その為にこの竹中が居りまする…己を信じ、滝だけを見て登るのです!」


「は、半兵衛ちゃん……」


 俺がこれまで生きてきた中で、本気で人から師事を請いたいと願ったのは唯一【竹中半兵衛】様が初めてだ、出来る事なら俺が学生の頃に出会っていたかった…もしそれが叶っていたのなら、俺の人生も大きく変わっていたはずだ。


「僕も、藤吉郎様となら、どこまでもお供いたします!」


「巽殿……わ、わしが…総大将……」


 藤吉郎様の目が変わり、彼は静かに畳から立ち上がると、天に向け顔を上げ大きく叫んだ!。


八百万(やおよろず)の神々よ!ここに我ら一同、心を一つにし、観音寺城を落とす事を誓う!我らの働きをご加護と共に御照覧(ごしょうらん)あれ!」


 何も打ち合わせはしていない、誰がやろうと言い出してもいない…だが、藤吉郎様の力強い言葉に俺達は姿勢を正し、彼に向けて深々と頭を下げたのだった。

 この瞬間、俺はいよいよ藤吉郎様の【太閤立志】が始まったのだと胸を熱くさせた。


「では、皆々様…これより拙者が温存していた観音寺城を落とす為に必要な手段をお伝えいたします…まずは巽殿、御足労ですが、後ほど拙者が書き留めた部材を調達してきてもらえますか?」


「は、はぁ…」


「そして、(かえで)さんと<かなめ>さんには、近日中にお二人で観音寺城の麓にある石寺の町に潜入してもらいます、その際に3通の(ふみ)を渡しますので、その順番通りの指示に従い行動してください、決して順番を間違えないように…」


「は、はいですの…」


 さすが<今孔明>の竹中様だ、三国志オタなら誰もが知っている【(しょく)】の劉備玄徳が【()】の国へ向かった際、すでに彼の危機を読んでいた孔明が、お供の【趙雲(ちょううん)子龍(しりゅう)】に危機回避の策を(しる)した3通の手紙を渡すというあの名場面が今再現されているのだ。


「あの、竹中殿(どの)…私は(あるじ)の警護役…(あるじ)から離れるわけには…」


(かえで)さんも御存じのはずですよ、巽殿が何処に部材を調達に向かうのか…なら心配はありませんよね?」


「あ、そ、そうでした…(あるじ)の故郷なら安全ですね…」


「…あの、姉様(あねさま)?どうして【淳一】の故郷が安全なのですの?この(いくさ)ばかりの()(もと)に安全な国などありませんですが…」


「それはいずれ<かなめ>さんも分かる日が来ると思いますよ♪」


「?…意味が分かりませんですわ…」


 そして次は藤吉郎様の番である!。

 今か今かと待ち構える藤吉郎様は、ずっと竹中様のお呼びが掛かるまで、右手に握り拳を作りながらガッツポーズで天井を見詰めていた…まぁ<かなめ>の前だから格好を付けていたいのだろう…。


「そして…最後に藤吉郎殿(どの)ですが…」


「うむ!何なりとわしに申せ!」


 やっと自分の番が来た♪と、意気揚々になった藤吉郎様は、またしてもどうでもいいイケメンの顔を作り竹中様に向けて微笑んだ…。


「はぁ…では、藤吉郎殿(どの)は出陣前までに乗馬の練習をしておいてください…馬にも乗れぬ総大将は兵の士気に関わりますので…」


「え?」



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